村松 繁

長期投資に日本の株式が向かない3つの理由

確定拠出年金相談ねっと認定FP

アイマーク株式会社 代表の村松です。

 

今回は、日本の株式市場が長期投資に不向きな理由を挙げてみます。

念のためにお伝えしておきますが、私がお伝えしたいのはあくまで長期の投資対象としてふさわしいかであり、価格変動が激しい日本株式は短期で結果を出したい投資家にとっては大変おもしろい投資対象であることを否定するものではありません。

今回のコラムは『人生100年時代』の到来に備えて、長期投資をはじめようとする投資初心者にむけたメッセージだとご理解ください。

 

長期投資に日本の株式が向かない理由 1

 

政府・日銀の介入

私が以前書いたコラムにも引用させていただきましたが、ピーター・リンチという投資家は日本市場について以下のように感想を書いています。

『日本を初めて訪れた1986年に、この市場は操作されているという印象を抱いた。』

『ピーター・リンチの株の法則』より

世界の株式市場を政府との関係性という観点から見ると、ニューヨーク証券取引所のように政府が出資する会社が皆無の市場がある一方、日本やフランスの市場のように国営だったり、国が大株主であったりする企業が多く上場している市場が存在しています。国の成り立ちや資本主義に対する考え方の差もあるのでしょうが、日本の場合は悲しくなるくらいに政府・日銀の影響が強すぎます。企業の将来性を厳しく見極める投資家を集めるのではなく、政府の人気を集めるために株式市場を利用しているように思えてなりません。このような状態ですと例えばアベノミクスで日経平均株価が上昇を続けていたとしても、首相が交代したとたん株価が息切れ状態になるなんてことになりかねません。長期投資の場合、少なくとも10年、20年というスパンで株式市場の将来にお金をゆだねるわけですから、このような市場はできれば避けた方が良いと思うのです。

 

長期投資に日本の株式が向かない理由 2

 

株主優待

長期投資の場合、その市場に世界中からお金が集まる魅力があるかが非常に大切な判断基準になります。海外の投資家にとって日本の株式市場がねじ曲がって見える理由に、株主優待の制度があります。たとえば、業績から見て株価がもっと下がるはずの企業も株主優待が目的の株主たちが存在していることで、適正なレベルに株価が下落しないことがあるのです。適正なレベルまで下落したら投資しようと考える海外投資家にとってこれは由々しき事態です。企業にとってはそこが狙いなのかもしれませんが、株式の売買を適正に行うことが目的の市場にとってはこの制度は邪魔なのです。直近ではマクドナルドの株価が優待券目的の株主によって買い支えられたことで、世界的な企業売買のテーブルに乗れなくなったことがありました。海外の投資家にとっては実際に優待券をもらったとしても使い道が無く、ただの紙切れになってしまう恐れもあります。長期投資の観点から見ると、株主優待は不要な制度だと思います。さらに、長期投資では個別の株式を購入するよりも投資信託を使ってリスクを軽減する方法が有利かもしれません。そんな場合、株主優待制度は意味が無いどころか、表面的な運用利回りを下げてしまうことにもつながります。

 

長期投資に日本の株式が向かない理由 3

誰でも知っている会社がIPO

IPOとは新規株式上場を意味する言葉です。そもそも株式市場とは資金を調達する場であり、その企業の価値を投資家が判断し成長の可能性に賭ける場であるのです。しかし、日本では『誰でも知っている会社が上場するケース』が多数あります。こういうケースの場合、大株主の節税対策や従業員のモチベーションには役立つでしょうが、ブームが過ぎたあと雪崩のように株価が下落していった会社を何社も思い出します。証券会社も新規上場で公募価格から何割も上昇するIPO銘柄は優良顧客を囲い込むにはうってつけの商材です。本来なら上場したあと資金調達が容易になることで企業が成長を続ける姿に投資すべきなのに、上場が目的になっているように見えるのです。

 

まとめ

以上のように日本の株式市場が長期投資に向かない理由を確認してきましたが、iDeCoやNISAそして2018年から始まるつみたてNISAなどを通じて「長期投資家」が市場に存在感が増してくれば、上記の理由も改善されてくるかもしれません。しかし、長期投資家はそこまで待てないのです。今、世界中でどの市場が長期投資にふさわしいのかを私たち長期投資の専門家がもっと真剣に情報発信していく必要があると思います。アイマークはその先駆者としてこれからも走り続けていきます。