3.11から学ぶ早期生活再建の分かれ道

ご相談者DATA

【年齢】41歳
【職業】会社員
【性別】男性
【家族構成】奥さんと二人暮らし

相談しようと思ったきっかけ

コロナのことはもちろん心配ですが、ここのところ地震も増えてきたことから、万が一の災害に対して、自分は対策で来ているのだろうかと考え始めました。
ここで大災害が来てしまったら、自分の今後の生活は大丈夫なのかと、考えるほどに不安が大きくなってきたので相談を申し込みました。

ご相談内容

コロナで自宅待機(リモートワーク)になったことをきっかけに、将来に対して考える時間が増えたのはいいのですが、考えるほどに漠然とした不安が増してきました。
さらに追い打ちをかけるように、ここのところ地震が頻発していて、「ここで大災害が起きたらどうなってしまうのか」とさらに不安が増幅されてしまいました。
特に最近家を建てたばかりで、ローンの返済はこれから長く続きますし、近いうちに子供も欲しいと思っています。
日本に住む以上、大きな地震などの大災害はこれからも避けられないとも感じています。
何をどのように備えていけばいいのか、日ごろからお付き合いのある伊田さんに聞いてみたいと思い相談しました。

ご相談でお話した内容

緊急事態宣言が解除されたとはいえ、新型コロナウイルスによる影響はまだしばらく続きそうですね。

こんなことが自分が生きている間に起こるとは思ってもみなかったことではないでしょうか。

こういう混乱が起きた際にしか、「万一に備える対策」については、なかなか考える機会がないかもしれません。今回ご相談にいらっしゃったお客様も、「これまで経験したことのない不安感」から、暮らしの不安に対ししっかり備えたいとお見えになりました。

お客様からは、不可抗力な災害についてどう備えたら良いのかとご相談を受けましたが、漠然とした不安を抱えていらっしゃったので、大切なことは「困難な状況から生活再建をする」ことであり、そのために必要な適切な保険の備え方をお伝えしました。

コロナ禍とは原因がまったく違うことではありますが、日本全体への大きなダメージということで言えば、2011年の東日本大震災(3.11)を思い出さずにおれません。

あれから9年経ちますが、直接被害を受けられた方にとっては、いろんな意味でまだ再建の途上にあるかと思います。

私は損害保険の仕事をしており、これまで様々なお客様へ災害時の給付のお手伝いをしてきましたが、残念ながら大地震などの不測の事態が起きた際に、早期に生活再建できる人と、そうでない人がいらっしゃいます。いったい何が分かれ道になるのでしょうか。

あらためて、3.11のような巨大地震が起きてしまったら・・という観点で「生活再建」について考えてみたいと思います。

主に経済的な観点からのお話です。

地震

考えたくもないことですが、3.11のような巨大な地震が起きた場合、家計を守る手段として主に2つのことが考えられます。

◎地震保険(自助努力)

https://www.jishin-hoken.jp/

・公的な支援制度

http://www.bousai.go.jp/kyoiku/hokenkyousai/sienseido.html

ご覧いただくとわかりますが、「公的な支援制度」はあくまでも、「全壊」等の状況になってしまった方への「お見舞い金」的な要素が強いものです。

どちらかといえば、「最低限のセーフティネット」という意味合いが強く、必ずしも生活を立て直せるだけのお金が支払われる訳ではありませんので、注意が必要です。

(もちろん申請できる方はした方がいいです)

巨大地震に備えるには、やはり何といってもご自身で加入する「地震保険」の出番です。

これが何より大きい「経済的な備え」となります。

3.11の時もそうでしたが、地震保険に加入しているかどうか、これによって大きく明暗が分かれています。

これ以上に守ってくれるものを私は知りません、とあえて断言させてもらいます。

地震保険はまさに生活再建を目的としているため、「迅速に支払う」ことを目指しています

3.11では、私の住む埼玉でも多くの方が申請され、保険金を受け取られました。

保険金の支払いは、まず契約者の立ち合いのもと、目視によって「現場の状況」を査定します(およそ1時間程度)。そこで保険金の支払い対象となれば、経験上では約1週間程度で支払われます。

地震保険の場合は、通常の保険請求とは違い、見積もりをとったりする必要はなく、鑑定人が来て調査をし、その場で査定が出ます。
(★鑑定人が来るまでに時間がかかり、家財など、散らばったものを片付けなければならない場合には、写真をしっかり撮って残しておきましょう。)

生活再建のための制度ですから、迅速さを重視しており、原則としてその場で査定が出るような仕組みにしているのです。

そのため査定も、4段階の査定基準のみ、とシンプルにしています。
(※2016年12月末までにスタートした地震保険契約は3段階の査定です)

業者さんの見積もりを待つような制度では、いつ見積もりが出るか分かりませんからね。

やはり大地震で被災された方にとっては、何よりも迅速にお金を届けることが大事、ということからこのような制度になっています。

3.11の際には、どの保険会社も人員を増強し、全国から応援が来て、スピーディーな支払いのため、全力を尽くしていました。

【どんな人が地震保険に加入した方がいいのか】

では、どんな方が地震保険に加入したほうがいいのでしょうか。

個人的には「すべての方」が加入すべき制度だと思っています。

なぜなら「地震保険」に加入していないと、地震による損壊だけでなく、

「地震による火災」も一切補償されないからです。

さらに言えば「延焼・拡大した火災」であっても対象外となります。

*地震による火災は地震保険でしか補償されません。

もう少し具体的にお話しますね。

例えば大きな地震が起きたとします。

大きな地震が起きると、よくその地域は停電となることも多いですよね。

その地域一体がしばらく停電となったんですが、やがて電気は開通。

「良かった!」と思うんですが、この時怖いのが「通電火災」です。

通電火災

その時、自分の住む住宅街で「通電火災」によって近所の家から出火し、だんだんと燃え広がって、自分の家にまで被害が及んでしまった。

こういう場合でも、火災保険からは一切支払われず、地震保険からしか支払われません。ということなんです。

ご相談者様は、家を新築されたばかりとのことで、ちょうど私のお客様の例がありましたのでご紹介しました。

数年前のお話です。家を新築されたことをきっかけに、地震保険のご相談をいただいたご夫婦は、住宅メーカーの営業マンからこう力説されていたそうです。

『うちのメーカーの家は地震でも絶対に大丈夫ですから、地震保険に入る必要はありません!』

とのこと。

ここでお話したのが、先ほどの「地震による火災」のことです。

たしかに倒壊に強い建物なのかも知れません。

しかしながら、地震の時に延焼・拡大した損害も、地震保険からしか支払われない、ということについては、まったく説明を聞かれていませんでした。

「それじゃあ、やっぱり入っていた方が良いってことね」

と納得されました。

こういったこともあり、私個人の気持ちとしては、地震保険はすべての人が加入したほうがいいと思っています。

更に今回は、3つのケースも付け加えてお話ししていきます。

  • ローン返済中の方
  • マイホーム(ローン返済完了)をお持ちの方
  • 収益物件(アパート)をお持ちの方

ローン返済中の方

3.11のような巨大地震が来てローン返済中の建物が、大きな被害を受けた場合、

「家を建て直す」ということになると、「ダブルのローン」を抱えてしまうことになります。

言うまでもなく、生活再建への道のりはとても厳しいものとなってしまいます。

ですから、ローン返済中の方は、必ず地震保険には加入すべきとアドバイスしています。

しかしながら地震保険は単独では加入できず、火災保険にセットして加入というのが条件となります。

また地震保険に加入できるのは「火災保険の30%~50%」なので、新築の方だと、ローン残額に足りないケースもあります。

その場合には、以下のような対策も有効です。

(1)火災保険の金額を上限までアップしておく

前述のとおり、地震保険の上限は、火災保険の金額の50%まで、と決められています。

(さらに、建物5,000万円、家財1,000万円という上限があります)

それならば、火災保険の金額をできるだけアップすることで、地震保険の金額もアップしておこう、という対策です。

建物の火災保険の補償額の決め方は、「同じ建物を建て直すとしたらいくら必要か」

という考え方が基礎になっています。

そのため新築の場合には土地代を除いた建築価格を、保険の補償額とすることが多いのですが、一方で「延床面積から建て直しの金額を計算する」という方法もあります。

延べ床面積で計算する方法だと、補償の金額にある程度の幅(上限・下限)が出てくるので、その上限でつけるという方法です。

火災保険の補償額をアップすることで、地震保険の金額をアップすることができます。

(2)上乗せ地震補償の保険に加入する

火災保険を上限までアップしても足りない場合には、「上乗せ地震補償」を発売している保険会社や、少額短期保険会社もありますので、検討してみてもいいと思います。

※上乗せ地震補償は、通常の地震保険とは違って各社補償に違いがありますが、ここでは割愛します。

(3)家財にも地震保険をつける

家財に対する補償も、とても大切なところです。

家財のお話をすると「大したものはないし、せいぜい200−300万」と言われる方も多いのですが、実際に火事が起これば、その査定金額は相当大きな金額になります。

これは通常の火事でのケースですが、洋服1枚1枚まですべてカウントし、しかもどんな古い服であっても「今購入したらいくらか」という計算となります。

実際に数年前、自宅が全焼してしまった方は、家族4人で「家財の保険」が1,000万円だったのですが、査定だと軽く2,000万円近くになりました。

ここまでお話をした時、ご相談者様が「こんなにあると思わなかった」と言われていたのが印象的です。

仮に、家財の火災保険を1,500万円でつけておけば、地震保険は750万円つけることができます。

この750万円を、建物の地震補償の足りない分として補填するというものです。

ちなみに、この「家財」の補償は、マンション住まいの方にも大切なことなのです。

と言いますのも、地震保険は建物、家財それぞれ別査定となっています。

建物は少ない査定だったとしても、家財は被害が大きいという査定になることもあり得ます。

実は、マンションの建物部分の地震保険の査定は「棟全体」で行われるため、どんなにご自身の建物部分の損害がひどくても、マンション全体の被害状況によって、査定が決まってしまうのです。

逆に「家財」に関しては、部屋ごとの査定になりますので、ご自身の家財の被害の程度に応じて、損害査定されます。

ローン返済中の方だけでなく、マンション居住の方にも「家財の補償額のアップ」は検討してほしいものです。

*繰り返しになりますが、地震保険の建物、家財の被害状況の査定には、通常の火事や台風とは違い、独特な査定基準となっています。
 (長くなるので割愛しますが、現在は4段階の査定基準となっています)

マイホーム(ローン返済完了)をお持ちの方

ローン返済が終わっていたとしても「建て直しや修繕」のお金をどうするのか。という問題があります。

ローン返済が終わっていれば、ある程度の蓄えがあるでしょうが、それでも「ご自身の蓄え」を大きく取り崩す、というのはとても不安でイヤなものです。

実際に老後の生活に支障をきたす可能性もあります。

保険というのはこういう大きな災害にこそ備えるべきでしょう。

★地震保険って高いの?

そうは言っても地震保険って高いよね。こんな声を聞くことがあります。

おそらくは、ここ数年の地震保険料が値上がりしていることもあり、そのような印象を持たれている方が多いのかと思います。

はたして、地震保険は本当に割高ということになるのでしょうか。

私が入っている保険で計算してみます。

埼玉県在住で、建物には2,600万円の火災保険。

地震保険は50%の1,300万円加入しています。(令和1年6月から5年間の契約)

地震保険料は、建築年割引(10%)が適用され、年間37,440円(5年の年払)となっています。

37,400円で1,300万円の補償です。

仮に今後同じ保険料だったとして計算すると、約340年分の保険料となります。

だとしたら・・・どう思われますか?かなりお得な制度だと思いませんか?

経済的に余裕のある方は別ですが、普通は巨大な災害が来てしまうと、毎月の収入すら危うくなってくる可能性があります。

その時に、自分が加入している保険から何かしら支払われるお金があるのか。

それともひたすら公的な援助を待つしかないのか。

どちらがいいかというのは、言うまでもないかと思います。

さらに、国からの後押しの制度として「地震保険料控除」という制度があります。

最大で年間50,000円の控除となります。

アパートオーナーの場合

最初のほうでお伝えしましたが、地震保険には加入限度額というものがあります。

建物5,000万円。家財1,000万円までです。

そうなると、賃貸アパート、賃貸マンションをお持ちのオーナーさんはどうなるのでしょうか。

仮に20部屋貸し出している3億円の物件だったとしても、地震保険は5,000万円までしかつけられないとしたら困ってしまいますね。

実は、こういう場合には、3億円の50%の1億5,000万円まで地震保険をつけることができます。

限度額の情報だけが独り歩きしてしまい、5,000万円までしか加入できないと思っているアパートオーナーさんも多いので、書かせてもらいました。

【補足:仕事で使っている建物の場合】

地震保険は、住まいの部分があるかどうかで加入できるかどうかが決まります。

例えば、よくある「1階が中華料理屋さんで、2階は店主の住まい」という「併用住宅」であれば、地震保険は加入できます。

一方、居住部分のない「店舗のみ」「工場のみ」という建物に関しては、残念ながら地震保険はつけることができません。

・専用住宅・併用住宅・・・○
・事業専用建物・・・×

保険会社によっては、独自で事業専用建物にも地震補償を提供している場合もありますが、住まい用の地震保険とは違い、保険料は割高となっています。
(それでも必要があればつけた方がいいと思います)

また、保険会社によっては「地震による休業補償」というものを発売しているところもありますので、検討してみてもいいのではないでしょうか。

また事業を営んでいる方は、地震そのものの補償でなくても、「不測の事態への資金づくり」が必要ということになるでしょう。

★最後に・・・

熱く語ってしまいましたが、地震保険(地震補償)は、地震の多い日本に住む私たちにとって必須といえるのではないでしょうか。

「加入していれば良かった・・・」と後悔する人がないよう、私自身これからも啓蒙活動を続けていこうと思っています。

最後に1点だけ、注意喚起させていただきたいことがあります。

これは損害保険業界で大きな問題となっているものです。

地震や、台風のあとと言わず、次から次へとタケノコのように湧き出てくるのが、

・保険請求代行業者 や
・通りすがりの工事業者

です。

★損保協会からの注意喚起

https://www.sonpo.or.jp/news/caution/syuri.html

このような見知らぬ業者から保険請求を勧められたら、必ず保険代理店や保険会社に相談してください。

私自身、年に何回もご相談を受けます。

ということは相当な数の業者があるのだろうと思います。

未然にトラブルを防げた方も多いのですが、ご相談いただいたのが遅くなり、巻き込まれてしまった方もあります。

ぜひ身近で信頼できる保険代理店に相談してみてください。

きっと力になってくれると思います。

この記事を書いた人
伊田 洋

あなたの家族がずっと笑顔でいられるように!人生をガッチリ、サポートします。お任せください!

相談事例をフリーワード検索で探す