ご相談者DATA
【年齢】 50歳代前半
【職業】 会社員
【性別】 女性
【家族構成】 独身・子供2人
相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)
以前から生命保険や損害保険の相談をしているFPの福田さんが確定拠出年金相談ネットのFPに登録したことを知って、相談しようと思いました。
ご相談内容
個人型確定拠出年金にご加入中です。雑誌などで老齢給付金の受け取り方いくつかあるとお知りになりました。下のお子さんがまだ中学生なので60歳の定年後も再就職して働こうと考えていらっしゃいます。どのような方法で受け取ることが出来るかご相談にいらっしゃいました。
ご相談でお話しした内容
給付金には3種類ある
確定拠出年金の給付金は「老齢給付金」「障害給付金」「死亡一時金」の3種類があります。
そして、「老齢給付金」には年金または一時金として受け取ることが出来ます。
今回のご相談は老齢給付金の受け取り方法ということなので、「障害給付金」「死亡一時金」については、別の機会にご説明いたします。
老齢給付金の受け取り方も3種類
- 全額一時金として受給
- 全額年金として受給
- 一時金・年金を併給して受給
60歳になると老齢給付金を受け取る権利がもらえます。
権利と言わせてもらったのは、絶対、60歳になったら受給しないといけないわけではないからです。加入者本人のライフプランで70歳まで確定拠出年金の資産を運用することが出来ます。ただし70歳になった時点で受け取り方法を選ばないと一時金での支給になります。
加入期間によっても受け取り年齢が異なりますので確認しましょう。
60歳で通算加入者等期間が10年に満たない場合
8年以上10年未満 | 61歳から受給可能 |
6年以上8年未満 | 62歳から受給可能 |
4年以上6年未満 | 63歳から受給可能 |
2年以上4年未満 | 64歳から受給可能 |
1月以上2年未満 | 65歳から受給可能 |
*加入期間は個人型・企業型確定拠出年金の加入者期間の合算(加入期間とは、掛金を拠出した期間を指します。従って運用指図者の期間は含まれません)
老齢給付金を一時金として受け取るメリット
確定拠出年金で積立てられた資産は一時金として受け取る場合、退職所得とみなされ、税制上で退職所得控除という優遇があります。
通常退職所得控除は、勤続年数を基に計算されるので、勤続年数がながければ長いほど得する仕組みです。しかし確定拠出年金の場合、加入期間が勤続年数として数えられるので、これはとても大きなメリットです。
退職所得控除の計算は、勤続20年までは1年につき40万円、20年を超える年数には1年につき70万円を掛けた合計の金額になります。
例えば大学を卒業して定年まで働いた場合38年間とします。
その時の控除額を計算すると
40万円×20年間+70万円×(38年間-20年間)=2060万円
つまり2060万円までは税金がかかりません。
では、確定拠出年金の加入期間を上の式の年数に当てはめて計算して下さい。
仮に、2500万円退職所得があった場合は(2500万円-2060万円)×1/2=220万円
この220万円に対して課税されます。
退職所得控除を計算する場合は、勤続年数と確定拠出年金の加入期間の長いほうが適用されます。
退職控除金額内に確定拠出年金の所得と退職金が収まれば同年に確定拠出年金と退職金を受け取っても税金はかかりません。かなりの優遇になると思います。
例えば、通常の給与として受け取ると、総合課税としてその他の所得と合算して税金の計算がされますが、退職金として受け取ると分離課税になるので、その年の他の所得と合算して計算することはありません。
退職金として受け取った場合の計算をしてみましょう。
確定拠出年金の加入期間が20年間、勤続年数が38年間の場合。
勤続年数の方が長いので退職所得控除を計算する時は、38年間で計算します。
すると先ほど計算した2060万円までが非課税になります。
仮に、退職所得1000万円+確定拠出年金の老齢給付金500万円=1500万円の場合、
同じ年に両方を受け取っても税金がかかりません。
ご相談者様の場合は、下のお子さんが中学生なので、今後大学に進学するとき、仮に教育ローンを借りる場合や、定年後に住宅ローンが残るような場合は、この退職所得控除を活用して一時金として受け取り、ローンの返済を済ますという方法も考えられます。
そのような借り入れがなく、希望通り65歳まで再雇用で働くことができた場合、65歳の時点で退職所得控除を活用して一時金で受け取る方法もあります。
60歳から拠出はできませんが、運用は可能です。運用益に対しても税金はかかりません。
年金で受け取るメリット
年金で受け取る場合、雑所得として公的年金控除の適用になります。
公的年金等に係る雑所得の金額=a×b-c
控除額は所得によって違います。 (以下、国税局HPより引用)
年金を受け取る人の年齢 | A公的年金等の収入金額の合計 | B割合 | C控除額 |
65歳未満 | 公的年金等の収入金額の合計が700,000円までの場合は所得金額はゼロ | ||
700,001円から1,299,999円まで | 100% | 700,000円 | |
1,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 375,000円 | |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 785,000円 | |
7,700,000円以上 | 95% | 1,555,000円 | |
65歳以上 | 公的年金等の収入金額の合計額が1,200,000円までの場合は、所得金額はゼロ | ||
1,200,001円から3,299,999円まで | 100% | 1,200,000円 | |
3,300,000円から4,099,999円まで | 75% | 375,000円 | |
4,100,000円から7,699,999円まで | 85% | 785,000円 | |
7,700,000円以上 | 95% | 1,555,000円 |
*例えば、65歳以上の人で「公的年金等の収入金額の合計額」が350万円の場合には、公的年金等に係る雑所得の金額は次のようになります。
3,500,000円×75%-375,000円=2,250,000円
公的年金等の控除の計算は、確定拠出年金と公的年の合算で計算してください。
年金で受け取る場合は、5年以上20年以内の有期年金になります。
年金の額は請求時の資産額の20分の1以上2分の1以下で決めます。
公的年金額が少ない場合には、大きなメリットになります。特にご相談者様の場合は65歳からしか年金はないので60歳から65歳までの5年間の無年金の期間で確定拠出年金を利用するという手もあります。
※例えば、60歳から65歳までの生活資金として200,000円×12か月=2,400,000円
5年分割、年1回受給すると確定拠出年金の年金払いに係る雑所得の金額は次のようになります。
2,400,000万円×75%-375,000円=1,425,000円
この金額に所得税と地方税が課税されます。
退職後の生活費に使うのであれば、確定拠出年金口座に置いておいて、年金での受け取り方法もいいと思います。
その時に運用していく運用益に対して税金はかかりません。
年金で受け取る時の注意点
確定拠出年金口座から自分の銀行口座に振り込まれるときに送金手数料がかかります。
一般的な振込手数料432円。これを毎月の受け取りにすると、年間で5,184円になります。
受け取り回数は年1回、半年に1回、毎月とありますが、各運営管理機関の設定なので、確認してください。
せっかく利益を出して公的年金の上乗せに使うつもりが手数料で減ってしまうことになりかねません。
受け取り回数は多くせず、余計な振込手数料を少なくしましょう。
せっかくの老後資金ですから、無駄を抑えて計画的に引き出してください。
一時金と年金で併給して受け取る
運営管理機関の定めるところによりますが、年金の一部を一時金として、残りを年金として受け取る方法と年金として受け取り、5年経過後に一時金として受け取ることが出来る場合があります。
自身のライフプランに合わせてどのように組み合わせるか考えることが必要です。
受取時の注意点
1番は、やはり課税部分だと思います。
自分がどのくらい退職所得があるのか、公的年額いくらなのかきちんと計算したうえで、なるべく税金を少なくする方法を選んでください。実際の税制は今後変わることもあり得ますので確定拠出年金を受け取る際は、税理士に相談するべきであるということも覚えておいておくと良いでしょう。税制を上手に使って、お金の流れを調整することが大切です。
所得の状況で、税金・国民健康保険料・介護保険料なども負担が増えることになります。
老齢年金を受け取る権利が近づいたら、退職所得・公的年額を計算して、自分のライフプランと合わせて考えてください。
老後のライフプランはとても大切です。老後のライフプランに合うように税金や国民健康保険料を抑えていきたいですね。
確定拠出年金は本当に長期にわたって資産形成をしていき、受け取り方にも様々なバリエーションがあります。
今後は適時FP相談をお受けしながらサポートすることになりました。