ご相談者様DATA
【年齢】 40歳代前半
【職業】 会社員
【性別】 女性
【家族構成】 独身
相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)
転職することになり、次の会社に企業型があると聞いてどうすればいいのか悩んでましたが、HPでFPに相談できることを知り、女性FPさんなら相談しやすいと思い個別相談の申込みをしました。
ご相談内容
現在、個人型確定拠出年金(iDeCo)に加入されていらっしゃいますが、企業型の確定拠出年金がある会社に転職されることになり、どのような手続きが必要なのか、また、個人型と企業型の違いを知りたいということで、ご相談にいらっしゃいました。40代の独身女性ということもあり、今後の人生設計においてお金はしっかり準備したいとお考えです。
ご相談でお話しした内容
1 企業型と個人型の違いについて
加入できる人
個人型(iDeCo)
1.自営業者等(農業者年金の被保険者、国民年金の保険料を未納・免除されてる方を除く)
国民年金第1号被保険者
(例えば、自営業者や学生などです。)
2.厚生年金の被保険者(公務員、私学共済制度の加入者を含む。企業型年金加入者は、企業年金規約において個人型年金への加入が認められてる方に限る。)
第2号被保険者
(例えば、会社員や公務員などです。)
3.専業主婦(夫)等
第3号被保険者
(例えば、会社員の妻などです。)
企業型
実施企業に勤務する従業員(国民年金第2号被保険者)
(例えば、厚生年金加入の会社員)
掛金の拠出
個人型(iDeCo)
加入者が拠出
例えば、手取りのお給料の中から貯金をしていれば、それと同じです。自分の口座から毎月、引落しになります。
企業型
事業主が拠出
・会社が給与の上乗せとして掛金を出してくれる制度。
・会社によっては、マッチング拠出といって会社から出してもらっている掛金を超えない金額で、個人として上乗せで掛金を出せる制度。会社の口座から引落になります。
・もう一つ「選択制」という制度があります。これは会社が決めた金額内で掛金を出すかどうか従業員が決められる制度です。会社の口座から引落になります。
掛金の限度額
個人型(iDeCo)
個人型の場合被保険者区分等で毎月の拠出金額の上限が違います。
第1号被保険者 | 第2号被保険者 | 公務員 | 第3号被保険者 | |
68,000円 (国民年金基金の限度額と合算) | 23,000円 | 12,000円 (企業年金等がある会社) | 12,000円 | 23,000円 |
(月額)
企業型
企業年金がある場合 | 企業年金がない場合 |
27,500円 | 55,000円 |
(月額)
※企業型の場合、実際に枠はありますが、掛金は会社が決めるので自分の自由にはなりません。
掛金の納付方法
個人型(iDeCo)
口座振替ですが、第2号被保険者の場合は「事業主払込」と「個人払込」を選ぶことが出来ます。
「事業主払込」 を選択した場合は、掛金が給与天引きされ、会社の口座から引き落としになります。
企業型
会社が一括で会社の口座から引落しにします。
運営管理機関等の費用
1.加入時に国民年金基金連合会に2,777円(初回のみ)の手数料が必要です。
国民年金基金連合会とは確定拠出年金の取りまとめをする機関です。
これとは別に運営管理機関(銀行や証券会社等)でも別途手数料を請求する機関もあります。
2.国民年金基金連合会に103円と事務委託先金融機関に64円が口座管理手数料として毎月かかります。
ここは、加入者の個人口座を管理するところです。
3.運営管理機関(銀行や証券会社等)ごとに異なる費用の口座管理手数料が毎月かかります。
これは運営管理機関ごとに違い、167円から600円くらいのところがあります。
個人型(iDeCo)
毎月、加入者本人が負担
※毎月の掛金の中から、手数料が引かれます。
企業型
毎月、会社が負担(金額は会社ごとに異なります)。
運営管理機関等の選択
個人型(iDeCo)
加入者本人が決めます。
※運営管理機関は、銀行、証券会社、損害保険会社など66以上あります。
企業型
会社が決めた運営管理機関で運用します。
税制
個人型(iDeCo)
拠出時 | 加入者が出した掛金は、全額所得控除 |
運用時 | 運用益に対して非課税 |
給付時 | 1. 年金として受給:公的年金等控除(非課税枠あり) 2. 一時金として受給:退職所得控除(非課税枠あり) |
企業型
拠出時 | 非課税(事業主が拠出した掛金は、全額損金算入) マッチング制や選択制で加入者が拠出した掛金は全額所得控除 |
運用時 | 運用益に対して非課税 |
給付時 | 3. 年金として受給:公的年金等控除(非課税枠あり) 4. 一時金として受給:退職所得控除(非課税枠あり) |
個人型の場合は、加入にかかる手数料をすべて個人が負担し、運営管理機関(銀行や証券会社等)を自分で選び、書類の提出など自分で調べて手続きをしなければなりません。
一方、企業型の場合は会社がすべて用意してくれているので、加入者のメリット大きいと思います。
2 移換の手続きについて
確定拠出年金の自分の口座にあるお金をを転職先の企業型確定拠出年金に移換することができます。
企業型には企業が従業員全員を加入者として会社が拠出する制度と、会社が拠出する金額まで従業員が自らの意志で拠出金を上乗せするマッチング制と、従業員が加入するかを自らが決めて拠出する選択制があります。
また、企業型を導入して会社が拠出しているけど、個人型に入っても大丈夫というルールを設けている場合があります。
転職先に企業型がある場合は、まず転職先にどのような制度かを確認してください。
現在、個人型に加入されていますので、転職先の会社が同時加入を認めていない(マッチング制や選択制含む)場合は、個人型確定拠出年金の加入資格がなくなります。
運営管理機関(銀行、証券会社等)に申し出て、加入者資格喪失の手続きをします。
転職先の企業型で、個人別管理資産の移換手続きをします。
これは、事業主又は企業型確定拠出年金の担当者に申し出て会社で手続きをしてもらいます。
企業型と個人型を並行して加入できる場合は、喪失手続きはせず、個人型の登録事業所変更の手続きをします。
運営管理機関(銀行、証券会社等)に申し出てください。
3.資産移換のタイミングなど
個人型から企業型に移換することになりますが、この移換時に運用商品をすべて売却しキャッシュにしなければなりません。このキャッシュになった状態で企業型の個人資産口座に移します。例えば投資信託を選んで運用をしている場合は、市場の状況によっては含み損の商品を移換のタイミングでこれら投資信託を売却してキャッシュにするため、損失を確定してしまうことになります。
売却の時期は指定できませんので、たまたま売却の時期に株価が低迷していることもあります。
ですから、転職を予定している場合は、なるべく良い状態の時に売却して定期預金などに資産を置いておくようすることで、残高が急激に減ることを防ぐことが出来ます。
- まとめ
個人型と企業型の一番の違いは費用負担です。
月々にすると500円前後ですが、これを20年、30年払込んでいくと大金になります。
例えば、月々500円を20年間支払うと500円×12ヶ月×20年=120,000円になります。
30年では180,000円です。これを個人型では加入者自身が負担しますが、企業型は会社が負担してくれるので、個人型よりお得です。
また掛金額が自由に定められるのも個人型のメリットです。ただ企業型で企業の拠出が多い、あるいはマッチング拠出や選択制で掛金が自由に設定できるなどの場合、個人型より多くの掛金を確定拠出年金で運用ができるなどは企業型の大きなメリットです。
運用商品に関しては、会社が提供する運営管理機関の持っている中からしか選べないので、もしかしたら自分の好きな運用商品がないかもしれないということがあります。
ただ、2017年に加入者資格が拡大されたこともあり、運営管理機関も商品の充実を図っています。
ご相談者様は、個人型に加入されていたので、マッチング制や選択制の企業型なら今まで負担していた手数料がなくなりますので、移換の手続きを乗り越えたら、お得な制度になります。
相談者様はとりあえず転職先の企業型に移換されますので、手続きが完了し落ち着いたところで次回は運用のご相談をお受けすることになりました。運用商品は会社によってことなりますので、次回は会社の確定拠出年金の詳しい資料をご持参いただくことになりました。