大地 恒一郎

これからNISAの2023年非課税枠を使う際の注意点

こんにちは、
FP相談ねっとの金融教育家、投資信託ナビゲーターの大地恒一郎です。

癸卯の年、2023年も残すところ、あとわずか。
その12月も、あっという間に半分が過ぎようとしています。
そして、2024年の新しいNISA開始まで、いよいよあと3週間となりました。

皆さんは、今年中にNISA口座を開設しておくと、2024年から始まる新しいNISAの口座が自動的に開設されることはご存知だと思います。また、2023年の非課税投資枠は、2024年以降の非課税保有限度額である1,800万円とは別枠であることも知られています。そして、今年の非課税投資枠をこれから使おうと思っている方もいらっしゃるかと思いますが、実は少し注意が必要です。

それは何かというと、2023年のNISAの非課税投資枠を使う場合、株式や投資信託の受渡日は年内であることが必要だということです。

どういうことかというと、今年の金融機関の最終営業日は、12月29日ですが、この日までに株式や投資信託の受渡日が到来している必要があるということです。

勘違いしやすいのは、この12月29日に株式や投資信託の買い注文を出せば、2023年のNISAの枠を使えると思ってしまうことです。12月29日までは、12月14日から12営業日(営業日とは、一般的に土日祝日を除く平日のことで、通常、証券取引所の開いている15時までのことをいいます)もあるので、まだまだ大丈夫と思っている方がいらっしゃるかもしれません。

買い注文を出すこと、これは購入の申込みといいますが、この購入の申込みをする日のことを申込日といいます。この購入申込日が2023年内にあれば2023年の非課税投資枠が利用できる、ということではありません。ここは間違えやすいところですので、ご注意願います。

では、購入申込を済ませ、株式や投資信託の取引が成立(約定)すればいいのか、というと、それもダメです。
あくまで、それらの購入代金の決済が12月29日までに完了(受渡)しなければ、2023年の非課税投資枠を利用したことにはなりません。この受渡日が、12月29日以前ではなく、2024年1月4日以降となる場合、その金融商品の購入は、新しいNISAの2024年の非課税投資枠(つみたて投資枠であれば年間120万円、成長投資枠であれば240万円)を利用したことになってしまいます。

国内株式の場合は、受渡日は約定日を含めて3営業日目となります。つまり今年の場合は、12月27日に約定すれば、12月29日が受渡日となります。
そういう意味で、国内株式で2023年のNISA非課税枠を利用しようとする場合は、一般的に14日も含めて10営業日は購入可能です。

ところが、投資信託の場合は、そう単純な話ではないのです。

投資信託の申込日は、一般的に金融機関に15時までに注文を出せば、その日が申込日となります(ファンドごとに注文申込の締切時間が決められていますので、確認が必要です)。また15時間際の注文は、その日の申込に間に合わないこともあるので注意が必要です。仮に15時に間に合わなかった場合、つまり15時以降の注文は、申込日が翌営業日の扱いとなります。

そして、投資信託で分かりづらいのは、約定日と受渡日です。ややこしいことに、約定日と受渡日は、ファンドごとに異なっているのです。ですから、必ず交付目論見書などで確認する必要があります

たとえば、「つみたてNISA」で人気のある、三菱UFJアセットマネジメントの「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」を見てみましょう。

交付目論見書によると、申込締切時間は「原則として、午後3時までに販売会社が受付けたものを当日の申込分とします。」とされています。そして、「購入価額」つまり購入単価は、「購入申込受付日の翌営業日の基準価額」とされています。つまりこのファンドの約定日は申込日の翌日ということになるのです。

そしてファンドの約定が成立すると、購入代金を支払う必要があるのですが、その支払う日が受渡日ということになります。このファンドでは、「販売会社が指定する期日までにお支払いください。」と書かれています、つまり受渡日は、金融機関によって異なっている可能性があるということなので、購入する金融機関に確認する必要があります。
なお、受渡日を購入の場合も換金の場合と同じにしている金融機関も多いと思いますので、ここでは、換金の場合を見てみましょう(換金の場合は、換金代金を何日目から支払う、と目論見書に明確に記載されています)。

このファンドの換金代金は、「換金申込受付日から起算して6営業日目から販売会社においてお支払いします。」と書かれています。つまり受渡日は、申込日から起算して6営業日目ということになります。受渡日が6営業日目というのは、比較的長めの期間ですが、ファンドによっては、申込日から起算して7営業日を受渡日にしているファンドもありますので、ご自身で交付目論見書を確認していただきたいと思います。

そして、もう一つ確認しておくべき項目があります。

それは「申込不可日」です。これは、海外の市場や銀行の休業日等の理由により日本の金融機関は営業していても、ファンドの購入・換金の申込受付ができない日のことです。

12月はご存知のようにクリスマスの月です。海外では12月25日や26日を休業日にしている国も多くあります。国によっては、12月22日も銀行休業日としているところもありますし、クリスマスの祝日以外の理由で銀行休業日が設けられているケースもありますので、申込不可日も各ファンド毎に確認する必要があります。
運用会社や金融機関によっては、ファンドの「申込不可日」を一覧で公表している会社もあるので、参考にしてみてください。

「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」の場合、12月29日の6営業日前は12月22日ですので、12月22日に購入の申込をすると、約定日が12月25日、受渡日が12月29日となり、2023年中の受渡が可能となります。しかし12月の最終週の購入の申込では間に合わず、遅くとも12月22日の15時までに購入の申込をする必要があるということです。

「eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)」では、受渡日が購入申込受付日を含めて6営業日でしたし、12月22日は申込不可日ではなかった(12月の申込不可日は25日と26日)ので、12月22日に購入申込をすれば、年内受渡が可能でした。

ところが、先に書いたように、7営業日目の受渡となるファンドで、申込不可日が12月21日であるような場合は、年内受渡のできる最終購入可能日は、12月20日になってしまいます。
そうすると、本日以降、12月14日、15日、18日、19日、20日の5営業日しか、年内受渡が可能な日はありません。

2023年のNISA非課税投資枠を、これから投資信託の購入で利用しようとお考えの方は、ファンドの「申込不可日」や「受渡日」を金融機関で早急に確認し、早めに購入のお申込みをされることをお勧めします。