夫が借金をして家計に影響が出ている。どうしたらいい?時にはこんなご相談もあります。
答えの一つは「離婚準備をしましょう」です。
- え、そんな簡単に離婚なんて言われても・・・。
- 出来たら苦労はしないよ・・・
- 解決策はないの?
と思うかもしれません。
確かにその通りです。いきなり離婚は早計ですね。
この記事では、3種類の借金の原因と対策を考えながら、「なぜ離婚準備なのか」をお伝えしていきたいと思います。
普通の人は借金をしません
「普通」という言葉で表現が適切とは思えませんが、あえてこう書かせていただきます。
現在の日本では、借金のハードルはとても低いです。
身分証明書ひとつあれば、ある程度のお金を借りることは容易にできます。
(上手な借金が役に立つことがありますが、そういうケースは今回は対象外です)
でも、大多数の普通の人は借金をしません。(もちろん住宅ローンやカーローンは除きます)
せいぜい月々に支払いきれる範囲のクレジットカードまでで、それは多くの場合借金とはみなされません。
借りてしまいたいなと思うことはあったにしても、その一線を踏みとどまれるのが理性ある大人です。
きっと、今回お悩みの「借金」はそれを超えるものかと思います。
近くに借金を繰り返す人を見ていると、よくあることのように感じてしまいがちですが、「普通の人は借金をしない」認識でいましょう。
夫の借金を妻は返さなくていい
まず、多くの方が心配している「夫の借金を妻が返さないといけないのか」という問題については、
原則として妻には返済義務がない
と覚えておきましょう。
夫の借金は夫のものです。妻の知らないところで借りたお金はいくら夫婦であっても妻に返済義務は発生しません。ただし、借金の理由などによっては変わってくることもあるので注意が必要です。
また、保証人になったりしている場合は話が変わってきます。
でもそこでカッとなって理由を問いただしたり・強く責めても何も生み出しません。
どうして借金をしてしまうのか?借金をするに至った理由は何か?少し客観的に分析してみてください。
多くの場合が夫婦のコミュニケーション不足
借金とはいかないまでも夫がクレジット―カードを気にせず使うことで、毎月支払いにヒヤヒヤしながら家計を回しているという相談はよくあります。
「カードを無頓着に使う」の行き過ぎた形が借金ですから、その構造は似たようなものです。
こういうトラブルがある家計の場合、往々にして夫婦間でコミュニケーションが取れていません。
第一の問題はお金ではなく意思疎通ができていないことなのです。
その自覚があるのだとしたら、まずはお金の問題より夫とのコミュニケーションを改善する必要があることを心にとめておきましょう。
1:ギャンブル・キャバクラ等による借金
パチンコや競馬、お酒の席、風俗等・・・そのものは必ずしも否定されるべきものではないかもしれませんが、それもまず「収入の範囲で」が当たり前。
収入の範囲だとしても、家族・・・特に子どもを持ったらそれではいけませんね。
ギャンブルやキャバクラ等は一度でもしたら悪!というものではありません。
本人は実は乗り気でなくても、付き合いで断れずズルズルということが無いとも言い切れないからです。真面目で人のいいご主人ほどこういうことに巻き込まれているケースもありました。
ただ、やっぱりそれが借金するほどにまで行ったら、いずれにしても行き過ぎですね。
浮気や不倫についても基本的には同様です。
ギャンブル等の借金対策
こういった理由で借金を繰り返す場合は「解決策はない」と思ったほうが良いでしょう。
具体的に家族がどんなことに困っているのか伝える、利息の負担の重さを数字で見せる、本人が借金を知られたくない人(夫の親など)に伝えるなどもありますが、その程度でやめるのなら初めから困るような借金はしてこないことがほとんどです。
借金は病気と言われますが、こういった個人的な遊行費のために借金をする・借金をしてまで遊びたいという気持ちが抑えきれないのはやはり病気です。
一度や二度程度の失敗なら解決できることもありますが、それを超えて起こる場合は改善が難しいもの。
「そういうことを繰り返す人とこの先も一緒にいたいか」をよく考えましょう。
「子供から父親を奪ってはいけない」と仰る方もいますが、「妻子がいるのにもかかわらず借金を繰り返す姿を子どもに見せていく」ことに関してもよく考えなければいけませんね。
また、お金の問題とは少し違いますが「家に居所がない」男性ほどこういう傾向があるように思います。
家族への想いが抑止力になるような家庭になっているか改めて思い返す必要はありそうです。
2:ADHD、うつ病等の精神障害による借金
ギャンブルやキャバクラ等必ずしも個人的な遊行費ではないけれど、なぜかキャッシングを繰り返したり、お金を借りてきてしまう。欲しいと思ったらすぐに買ってしまう。相談もせず高い家電を買ってくる。
疲れた疲れたと言って休日は部屋にこもり、ネットショッピングでストレス発散をする。
こんな「衝動が抑えられない」という理由で借金をする人もいます。
大人の発達障害と呼ばれるような特性がその原因のこともあるようです。
ギャンブルやキャバクラのように好き勝手に享楽しているのなら見切りをつけようもあるのですが、このケースの場合はそういうことばかりではありません。
基本的に良い夫であり、良い父親だったりします。
きちんと会社に出社もし、ギャンブルも煙草もするわけでもない。せいぜいたまのお酒ぐらいでそれも問題ない範囲。
ただ、どうしてか突然必要もないものを買ってきたり、仕事が忙しくなると急に何かにとりつかれたようにネットショッピングを繰り返す。普段の態度から考えても、ストレス解消なのかと思うと強く言えない・・・。
こんなご相談例もあったりします。
精神問題による借金の対策
まず、うつ病などを患っているようでしたら、適切に治療をするなどのアクションを先に取りましょう。
うつ病の対策として「本人の好きにさせて見守る」ということもあるかもしれませんが、借金をして財産を失うようでは結果としていい方向に行くはずがありません。
昨今増えていると言われる、大人のADHDなどの場合は、病気ではなく「特性」と言われるものですから「治す・変える」ことは難しいものです。治療という選択肢がないわけではありませんが、おそらく『特性を受け入れうまく付き合っていく』が本質になると思います。
もちろん「だから仕方ない」とすべてを認めていては家族として成り立ちません。
まずはしっかりと本人と話し合い、よくないことだと認識しているか・やめてもらいたいという思いが伝わっているかをしっかり確認しましょう。
その上で、どうしても「衝動」が起こってしまうのならば、それは本人の意思ではなく外部からの抑止力を強くしておくことが必要です。本人の合意の上で、下記のような物理的な対策を取っていきます。
A:クレジットカードが使えない状態にする
まずはクレジットカードを物理的に持たせないようにしましょう。
あれば使ってしまう。そして特性の場合はそれを「理性」でコントロールすることが難しいのです。それを根性論で頑張らせるより物理的に距離を置くことが重要です。
ネットショッピングなどは極力コンビニ払いや代引きを利用する。
どうしても必要な場合はその都度カード情報を入力するようにして、普段はカードで決済できないようにする。
社会的に全くカードがないことが困るようなら、残高を少なくした銀行のVISAデビットカードなどを持たせる。
こうして「衝動的に借金ができない」状態を作り出してあげましょう。
B:貸付自粛制度に登録してもらう
本人が「借金はしたくない」「家族に迷惑を掛けたくない」と反省しているのなら、貸付自粛制度を申し出てもらうということができます。こうすることで衝動的に新たな借金をしにくくします。
ー 貸付自粛制度とは
ご本人が、自らに浪費の習癖があることやギャンブル等依存症によりご本人やその家族の生活に支障を生じさせるおそれがあること、その他の理由により、ご本人自らを自粛対象者とする旨または法定代理人等または親族のうち一定の範囲の者が、金銭貸付による債務者を自粛対象者とする旨を当センターに対して申告することにより、当センターに貸付自粛情報を登録し、一定期間、当センターの会員に対してその情報を提供する制度です。
(一般社団法人 全国銀行協会)www.zenginkyo.or.jp/pcic/selfcontrol/
申し出手続きができるのは原則として本人のみ。
登録したからといってすべての借り入れができなくなる保証はありませんので、この申し出はどちらかといえば「本人の”借金をしない”という意思を家族に示す」意味合いが強いと思っています。
3:不足する生活費の補填のため
このケースはちょっと注意が必要です。
日常家事債務と呼ばれる、いわゆる生活費のための借金は、どちらかの名義で借りたとしても夫婦で連帯して返済する義務が発生します。家計を夫が完全に管理していて妻が全く知らなかったとしても、家族の生活のために夫が借金をしている場合は二人でした借金とみなされます。
実は給料が大幅に下がっていた・ボーナスがなくなった、などが起きて生活のお金に困ることがあったとしても、男性のプライドゆえにそれを妻に伝えることができず、借金でつじつまを合わせようとしているうちにほころびが出てきた。妻はそうとは知らずに今まで通り暮らしていた、などということもあります。
生活費補填のための借金の対策
この場合は、まずきちんと夫婦で情報を共有することです。
どのくらいの収入があって、どのくらいのお金が出ていくのかをお互いつまびらかにする。
今までご主人が管理していた場合や、ご主人が自分の収入に自信があった場合などは、簡単には話し合いは進まないことはほとんどです。ですが、このままでいいはずがありません。
借金の責任は二人にあるわけですから、これまで支え・管理してくれたことを感謝しながら、これからは二人で協力していきたいと申し出ましょう。
くれぐれも夫から家計管理を「取り上げる」形にならない配慮をしましょう。
夫の忙しさゆえに管理ができなくなっているなどがあるのなら、まず妻が管理の仕方を覚え、情報共有しながら任せてもらう範囲を増やしていくなどがいいでしょう。
絶対にやってはいけないのは
借金対策で絶対にやってはいいけないのは「借金の肩代わりをすること」です。
利息がもったいないからとりあえず妻の貯金から返す。
親にお金を借りて返す。
こういうことをしてはいけません。
「もう二度としない」「親や妻にちゃんと返していく」などと反省している様子をみて、肩代わりしてしまうケースは非常に多くありますが、(言葉を選ばずに言えば)「痛い目を見ない」場合、繰り返してしまうことが多いのです。
自分がしたことの責任は自分で取る。これが大人です。
借金をしたことによって、自分が大変な目にあうことをしっかり感じてもらう必要があります。
反省は口ではなく行動で表してもらう。
きゅうくつな暮らしになるかもしれませんが、その原因を作ったのは何なのかを認識してもらいましょう。
いい大人相手に・・・とむなしくなったり、残念な気持ちになるかもしれませんが、心を鬼して本人に責任を全うさせましょう。
また、自分の暮らしぶりによる日常家事債務の借金ならば、自分も責任をもって支出を減らしたり仕事に出るなどの責任を妻自身が行動で示すようにしましょう。
離婚準備は「支える力」にもなる
夫の借金問題が発覚したとき、ご相談者様にまずお尋ねするのは「今後もその人と一緒にいたいですか?」ということです。
世間体や子供のことを一度わきに置き、家族がいるのにもかかわらず借金をする人を「病めるとき」そして「老後」も支えていきたいと思うかどうかは大事なポイントです。
もし、迷っているのなら、離婚準備を進めていきましょう。
- 経済的・精神的に自立し子どもを守ることができるだけの収入を確保する
- 住まいや子どもの学校がどうなるか検討する
- 財産分与をするうえで、自分自身の財産は何があるか整理する
- この先どんな生き方をしていきたいか自分に問う
例えばこのようなことです。
縁あって家族になったのだから・・・と思うかもしれませんが、夫の借金の犠牲になる必要はありません。自分と自分の子供の未来を守るために、守ってもらった過去を捨てたとしても、誰もあなたを責めません。
できる限りのことをしたのなら、勇気をもって自分が幸せになる選択をしましょう。
もちろん上記のことは離婚準備ではありますが、これらは「離婚を選択しない」となった場合にも家族を支える力になります。支えたいという自分の気持ちを優先するのなら、離婚できる覚悟とともに支えましょう。くれぐれもその選択はあくまで自分が下したものであり、子どもや周りの誰かのせいにはしないことです。
妻の経済的・精神的自立は、「どうせ妻は出ていくことなどできない」というモラハラ傾向のある男性にも影響していきます。
また、夫の借金による子どもへの金銭的影響を減らすことができます。
一度支えようと決意しても、どうしても支えきれなかったり、支えていこうと思えなくなったなら離婚してもいいのです。
自分や子供が被害者になることはありません。
適切に家計管理をすることは、離婚した場合も・支えることを選択した場合も「生きていく力」になります。
「夫の借金」という問題を抱えているのなら、なにかしら動かないといけない時期が来ているはず。
離婚準備でもあり、支える覚悟である「家計管理」は今すぐできることの一つかもしれませんね。
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