企業型DCビジネス十年目の決議・第3回「決意編」

社員さんのために、提案を変える。支援を続ける。

第1回では、企業型DCの導入支援を事業として続けるまでの歩みを、第2回では、会社拠出と個別面談を大切にするようになった経緯を書きました。

最終回は、2026年4月の制度改正を受けて、なぜ私たちが提案の基本を変えることにしたのか。そして、導入後の支援をどのように続けていきたいのかをお伝えします。

以前は、選択制を中心に提案していました

第2回でご紹介したA+B方式は、会社拠出に、社員さんご自身の積み立てを組み合わせる方法です。これまで私たちは、このBの部分について、選択制を中心に提案してきました。

当時のマッチング拠出には、「社員さん本人の掛金は、会社の掛金を超えてはならない」という制限がありました。たとえば会社拠出が月3,000円なら、本人が上乗せできる掛金も月3,000円までです。会社と本人の掛金を合わせても、月6,000円にとどまります。

会社として無理なく続けられる金額から福利厚生を始めたい。一方で、社員さんの中には、自分でもう少し積み立てたい方がいる。その両方に対応しようとすると、当時のマッチング拠出は使いにくいものでした。

そのため、私たちは会社拠出に選択制を組み合わせる方法を提案の基本としていました。当時の制限の中で、社員さんが積み立てられる金額をできるだけ確保したいと考えていたからです。

2026年4月、提案を見直す理由ができました

2026年4月1日、マッチング拠出の「本人掛金は会社掛金以下」という制限が撤廃されました。会社の掛金が少額でも、会社と本人の掛金の合計が拠出限度額の範囲内であれば、本人が会社の掛金を超えて上乗せできるようになったのです。[1]

さらに、2026年12月1日には、企業型DCの拠出限度額を月55,000円から62,000円に引き上げる改正が施行される予定です。確定給付企業年金(DB)などを併用する場合には、他制度掛金相当額を差し引く必要があります。[2]

会社拠出が少額だと、本人の上乗せも少額に限られる。この理由でマッチング拠出を提案しにくかった状況は、2026年4月の改正によって変わりました。そこで私たちも、会社拠出にマッチング拠出を組み合わせる方法を、まず検討する方針に変えました。

会社拠出が3,000円の社員さんには、どのような違いがあるか

具体的な金額で説明します。ここでは、2026年12月の限度額引き上げ後を想定し、DBなどによる限度額の調整がない会社を例にします。

会社拠出を、部長職は月20,000円、一般社員は月3,000円とします。選択制を組み合わせ、生涯設計手当を全社員一律に設定する場合、会社拠出の最高額である20,000円を62,000円から差し引き、手当を月42,000円とする設計が考えられます。

この設計なら、部長職は会社拠出20,000円と選択制の42,000円で、合計62,000円まで積み立てられます。一方、一般社員は会社拠出3,000円と選択制の42,000円で、合計45,000円までです。法定の限度額との差額17,000円は、この会社の選択制の枠では使えません。

これに対してマッチング拠出では、会社拠出が3,000円の社員さんも、規約が対応していれば、残りの59,000円まで本人の掛金を上乗せできます。[2]

一般社員の場合(月額)
会社拠出+選択制会社拠出+マッチング拠出
会社拠出3,000円3,000円
本人が選択・上乗せできる掛金の上限

42,000円59,000円
掛金の合計上限45,000円

62,000円
法定の限度額との差17,000円0円

※選択制の42,000円は、法律で一律に決められた上限ではありません。上記のように、生涯設計手当を全社員一律42,000円とする制度設計での比較です。また、マッチング拠出の実際の掛金額は、規約に定める選択肢などの確認が必要です。

ここでお伝えしたいのは、毎月59,000円を積み立てましょう、ということではありません。会社拠出が少額の社員さんにも、ご自身の家計に合わせて上乗せ額を選べるようにしたい、ということです。

社会保険料が下がるかどうかだけでは決めません

選択制とマッチング拠出では、給与の扱いも違います。

選択制では、給与として受け取る代わりに掛金とした部分が、社会保険料の算定対象から外れます。その結果、保険料が下がる場合がありますが、将来の厚生年金や休業時の給付などが減る場合もあります。

一方、マッチング拠出は、給与額を減らさずに本人が掛金を上乗せする仕組みです。本人掛金は全額が所得控除の対象になりますが、選択制のように、その掛金によって社会保険料の算定対象となる給与額を減らすものではありません。[2][3]

会社や社員さんの社会保険料が下がることだけを見れば、選択制に魅力を感じる場合もあると思います。しかし、老後に向けた資金を準備するために、将来の年金や病気などで休んだときの給付に、どのような影響があるのか。その点も一緒に考える必要があります。

私たちは、会社拠出にマッチング拠出を組み合わせる方法を先に検討します。そのうえで、会社の給与制度や社員さんの状況に応じて、選択制を組み合わせる方法が適しているかを比較します。以前の提案をそのまま続けるのではなく、制度が変われば、社員さんにとって何が使いやすいかを改めて考えたいと思っています。

掛金を増やせない社員さんにも、支援は必要です

制度上は上乗せできても、毎月の生活費や教育費などを考えると、自分の掛金を出す余裕がない社員さんもいらっしゃいます。マッチング拠出の制限がなくなっても、家計の余裕まで増えるわけではありません。

その方に、無理に掛金を増やしていただく必要はありません。会社が出してくださる掛金について、どの商品を選んでいるか、どのような値動きや損失の可能性があるかを理解していただくことも、大切な支援です。

年に1回、就業時間内に一人15分の個別面談をお願いしているのも、そのためです。自分の掛金を上乗せしているかどうかにかかわらず、社員さん一人ひとりが質問できる時間を設けていただきたいと考えています。

第2回でご紹介したとおり、面談を実施していただいた会社では、投資信託を選ぶ社員さんの割合が徐々に高まってきました。ただし、投資信託を選ぶこと自体が面談の目的ではありません。値下がりの可能性も理解したうえで、ご自身に合った商品や配分を考えられるよう、お手伝いを続けることが目的です。

支援を続けるために、対価をいただく

会社に制度を導入していただくことも、社員さんに運用を理解していただくことも、一度の説明で終わる仕事ではありません。制度の変更を確認し、会社の担当者の方と相談し、社員さんの疑問にお答えする。その仕事を、導入後も続けていく必要があります。

第1回に書いたように、私たちは当初、導入支援を無料で行っていました。しかし、それでは十分な時間をかけて支援を続けることが難しくなります。そこで、導入支援と継続投資教育に対して、費用をお願いするようになりました。ほとんどの導入企業に継続教育の費用を受け入れていただけたことが、その後も支援を続けるうえで大きな支えになりました。

私たちが事業として続けられることは、社員さんが翌年も相談できる相手であり続けるために必要なことです。同時に、費用をいただく以上、会社にも社員さんにも、支援を依頼してよかったと思っていただける仕事をしなければなりません。

ほかの商品を併せて販売することを前提にせず、企業型DCの提案と導入後の支援そのものでお役に立ち、その仕事への対価で事業を続ける。私たちが「まっとう」と呼んでいるのは、このような関係です。

10年前から変わらないこと

2026年4月の改正を受けて、私たちは選択制を中心とした提案から、マッチング拠出を先に検討する提案へと方針を変えました。

ただ、10年前から変わっていないことがあります。

「中小企業の従業員にも、大企業並みの老後の安心を提供する。」

会社に無理なく続けられる掛金をご検討いただき、社員さんには、家計に応じて上乗せするかどうかを考えていただく。そして導入後も、ご自身の積立金と運用について相談できるよう、個別面談や継続投資教育を続ける。

社員さんに老後のための資金と、それを自分で管理していくための知識を持っていただきたい。その支援を続けられる会社でありたいと思っています。

制度が変われば、提案は見直します。導入していただいた後も、相談に応じ続けます。その仕事に対価をいただき、私たちも事業として続けていきます。

これが、企業型DCの仕事に取り組んで10年目の、私たちの決意です。


参考資料

[1] 厚生労働省「2025年の制度改正」(マッチング拠出の制限撤廃・施行スケジュール) www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/kyoshutsu/2025kaisei.html

[2] 厚生労働省「2026年12月から企業型DCの拠出限度額が5.5万円から6.2万円に引き上げられます!」 www.mhlw.go.jp/content/12500000/001739467.pdf

[3] SBIベネフィット・システムズ「選択制DCとマッチング拠出の共通点と相違点」 ad401k.sbisec.co.jp/corporate/magazine/difference-between-elective-dc-and-matching.html

※制度情報は2026年11月5日確認。2026年12月の改正は施行予定として記載しています。公開が施行後となる場合は、時制と施行状況を確認してください。

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