毎日毎日頑張っている看護師さん、お疲れ様です。
FP相談ねっと認定ファイナンシャルプランナー、看護師、キャリアコンサルタントの中林友美です。
前回のコラムでは
- イデコには3つもの特別な税制優遇(掛金全額が所得控除・運用益非課税・受け取る時も大きな控除)があり、国が公認している最強の節税のしくみである
- 窓口となる運営管理機関(金融機関)を、手数料・商品の品ぞろえ・サービス内容の3つで比較すること
- 運営管理機関を2~3つを選び、インターネット経由等で資料・申込書を取り寄せること
についてお話しました。
今回はその続き、取り寄せた資料を比較・検討するところから始めましょう。
複数の運営管理機関から届いた資料を並べて比較検討をしましょう
自宅に届いた資料を封筒から出し、テーブルの上に並べてみましょう。それぞれ、運営管理機関の個性があることが分かりますね。
この資料を取り寄せたことで、銀行以外の金融機関、特に証券会社の資料を初めて見たという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
証券会社というのは、特別な人が使う金融機関で一般の人は縁がないと考えている人もいるかもしれません。
私もその一人でした。すごく敷居が高いイメージで、口座を開設したらすぐにお金を動かさないといけないんじゃないかとか、中身がわからないブラックボックスみたいとか、そんな風に考えていました。今まで無縁だったのだから仕方がないですよね。
以前は証券会社の口座を開設する場合、窓口に行かなければなりませんでしたし、誰かの紹介がないと開設できない金融機関もありました。
幸い、今はインターネットの時代です。口座開設も身分証明書の提出はスマートフォンで撮影してアップロードするので、オンラインで完結するところが多いです。
特にコロナ禍になり、オンラインが当たり前になったことで自宅に居ながらにしてさまざまなサービスが受けられるようになり、本当に便利になりました。
以前は自宅から近いとか、窓口に行きやすいなどという理由で金融機関を選ぶことが多かったですが、純粋に「手数料・商品の品ぞろえ・サービス内容」で選ぶことができる時代になったといえるでしょう。
オンラインで受けられるサービスは、都会に住んでいても、地方に住んでいても同じです。冷静な目でしっかり見ていきましょう。
まずは表紙から
まず、表紙を見比べて、中もパラパラと見てみましょう。
親しみやすい資料でしょうか。
わかりやすいように工夫されているでしょうか。
イデコのしくみは、人によって積み立ての上限額が違ったり、関わる運営機関も複数あり分業しているので複雑です。
ですから、複雑なしくみをユーザー目線でしっかり伝えてくれる資料かどうか、文章と数字、グラフが多用されて理論的に説明しているか、イラストが多用されていて感性に訴えるような資料か、あなたの好みに合致した資料はどの運営管理機関でしょうか。率直に見比べてみましょう。
さらに内容を見てみましょう
さらに内容はどうでしょうか。前回のコラムでもお話ししましたが、確定拠出年金法という法律に基づいた制度ですから、制度の仕組みは同じですが説明の方法はいろいろですよね。
運営管理機関ごとに違うのは、手数料・商品の品ぞろえ・サービス内容でした。
手数料はなるべく抑えた方がよいというお話をしましたが(ナースのためのイデコ、はじめの一歩①)、手数料の低さで選んで取り寄せた資料が複数あるなら、商品の品ぞろえの違いをしっかり見ていきましょう。
- 商品の数が多い
- 信託報酬が低い商品が多い
- 元本確保型の商品が充実している
- アクティブ型の投資信託商品が充実している
- バランス型の商品が豊富
などなど…
そうですよね。聞きなれないし、聞いたことがない用語もあるし…
まだ何もわからない中で決めなければならないのはハードルが高いですよね。
何を基準にして決めればいいの?
これから人によっては何年も、何十年もお付き合いしていく金融機関ですから慎重に考えることは大切です。
しかし、考えすぎて行動できないということになってしまうのは本末転倒ですよね。
ですから、よくある疑問をまとめておきましょう。
疑問1:せっかくいいと思って決めた金融機関が、将来倒産してしまったらどうなるんですか?
答え:イデコには加入者の資産を守る仕組みが整っていますので安心してください。
確定拠出年金法に基づいた制度ですので、各運営機関の役割も決まっています。
例えば、加入者の資産を預かる信託銀行は、銀行の資産と加入者の資産は分けて管理する決まりになっていますし、運営管理機関は窓口業務のみを担当しているため、加入者の資金の管理はしていません。
イデコはいくつもの運営機関が集まって運営している仕組みです。それぞれの運営機関はいずれも破綻リスク、倒産リスクがありますが、その上で安全に国民の大切な資産を守っていく仕組みが作られています。
もし自分が利用している金融機関が破綻してしまった場合、次の金融機関に引き継がれる仕組みになっています。
疑問2:最初はいいと思って選んだ金融機関でも、後々になって別の金融機関に変更したいと思ったらどうすればいいですか?
答え:金融機関は変更することができます。しかし、次に述べる2つの点に注意しましょう。
- 今まで積み立てて運用してきた資産はすべて売却・解約し、現金化しなければなりません。しかし、引き出すことはできないので、新しい金融機関に全額を移換することになります。
- 現金化した資産の中から、前金融機関に対し、事務手数料として4,400円を支払うことになります。
投資の基本を理解しよう!
よくある疑問の答えはわかりました。
でも・・・・・
というのが本音です!
- せっかく貯めたお金が減ってしまうかもしれないと不安になる
- 安心・安全だからと「定期預金」のような元本確保型がいいかなと考えてしまう
どう考えたらいいかわからないからそう思ってしまう…、そうですよね。
では改めて、資産形成の基本を理解しましょう。
資産形成には、「貯蓄」と「投資」の二つの方法があります
貯蓄は、お金を蓄えておくことで、銀行などに預けることです。そのお金は自由に引き出すことができますね(流動性が高い)。
一方、投資とは利益を見込んでお金を出すことです。
すぐに必要な資金ではなく、何年か先に必要になる資金(住宅資金や教育資金、老後資金など)のためにある程度の期間をかけて少しづつ増やしていくことを目的に行います。
銀行預金と違って、すぐに現金化できない(流動性が低い)のですが、その資金はゆっくりと育てていくというイメージです。
特に、イデコで行う資産形成は老後資金(このコラムでは、働く看護師にとっては看護師人生をねぎらう退職金と考えています)ですので、長い期間をかけて(長期)毎月一定額を積み立てていき(積み立て・分散)、少しづつ増やしていくことを目指したいですね。
・長期・積み立て・分散のメリット
その「長期・積み立て・分散」を活かしたメリットがいくつかあります。
- 長期間投資することで複利効果を得られる
- 一定額を毎月積み立てていくことで時間(時期)の分散ができる(ドルコスト平均法)
- 値動きが違う複数の商品に投資を行うことで地域の分散・銘柄の分散ができる
ひとつづつ、説明していきますね。
複利効果とは?
この図の一番上「1年後」のグラフは、最初に100万円の元手を投資による収益が年10%で運用できた場合、投資効果が10万円得られて合計110万円になったということを表しています。
複利運用した場合、2年目には1年後に得られた10万円を足した110万円を10%で運用し、2年後には121万円となり、またその利益も含めて運用すると複利効果がだんだん大きくなってくるということを表したグラフです。
最終的に、右下の赤い資格の枠の中を見たていただきたいのですが、10年の複利運用の場合、259万円になった一方で、10年間、投資成果を投資元本に組み入れなかった場合(単利運用と言います)毎年10万円の利益ということで10年間で100万円、投資元本と合わせて200万円となり、複利運用の方が約60万円多く利益を得られたという結果になります。
イデコのように、長期間の積み立て投資を行うことができる仕組みの場合、この複利効果を最大限に活かした投資を行うと「お金がお金を生み出す」効果が得られるのです。
ドルコスト平均法とは
ドルコスト平均法という言葉を聞いたことがありますか。
イデコでのドルコスト平均法を用いた投資は、一度仕組みを理解し、定期的な積み立てを開始してしまいえば、いつも心穏やかでいられてる投資方法です。
値段の上がり下がりや相場の状況などの細かい調整などはまったく必要ないので、忙しく看護師の仕事に邁進している方にぴったりの投資法なのです。
詳しく説明していきますね。
このグラフは、1月に1口10円の投資信託を1万円分買った場合、購入口数は1000口になります。だんだん値下がりしていますが、毎月1万円ずつ購入することは続けました。だんだん値下がりしているので、購入口数は増えています。例えば、9月は1口2円なので、1万円で5000口購入できました。
最終的に、1年間の毎月1万円づつ積み立てて合計12万円で、購入口数は27,123口となりました。
12月の価格は、1口5円なので、最初に1口10円に比べれば5円も値下がりしていますし、1年間で一回も当初の1口10円を上回ることはありませんでした。1口の値段だけみると残念と思うような結果かもしれません。
しかし、実際の利益はどのように計算するかというと、12月で投資を止めた場合には1口5円に購入口数をかけることになり、135,615円となります。購入金額は120,000円ですから、差額は15,615円の利益となります。だんだん値下がりしているので、損しているように見えるかもしれませんが実際には利益が出ているという結果です。
これは、
- 一定額を毎月同じタイミングで買い続けるということ
- 安いタイミングの方が口数を多く買えるということ
が良い結果を生むということです。
ですから、例えば2020年3月にあった「コロナショック」で株価や投資信託が軒並み値下がりした時期がありましたが、その時も口数を多く買うことができました。
投資信託の値段が下がるとがっかりするというイメージがあるかもしれませんが、ドルコスト平均法で長期間運用している場合、値段が下がってラッキー!と考えることが多いです。
このように、投資の基本を知ると今まで常識だと思っていたことが、全く違うということがあります。
このイデコ加入をきっかけにドルコスト平均法を知っていただき、次は積み立てNISAにチャレンジしてみましょう。
地域の分散・銘柄の分散とは?
この図にあるように、特性の異なる複数の資産の組み合わせや、複数の地域・通貨の組み合わせなど値動きが違うもの同士を組み合わせることは、どのような状況でも大負けしづらい仕組みです。
例えば、かき氷専門店に投資しようと思った場合、暑い時期は繁盛しているけれど、冬はほとんど売り上げがないですよね。だから、かき氷専門店とおでん屋さんの組み合わせに投資する、というイメージです。
イデコは資産形成に大切な「長期」「積み立て」「分散」のメリットを活かす仕組み!
いろいろと説明してきましたが、聞きなれない言葉やややこしい数字の説明もあったりして難しいと感じる方もいらっしゃると思います。
私も最初は何のことだかチンプンカンプンでした。でも、繰り返し聞いたり、実際にやってみたりする中でだんだんとわかってきました。
初めて何かをはじめようとするとき、誰でもはじめは初心者のはずです。
最初から採血が上手にできる看護師はいないですよね。最初は学生同士、そのあとも看護師同士で練習することから始めると思います。
それと同じように、まずは投資初心者としてイデコのような公的な仕組みを利用することで投資の世界に一歩を踏み出してみる。
そのあと、もっともっと広くて奥深い投資の世界に行くという順番がいいのではないかと思っています。
以上で、ナースのためのイデコ、はじめの一歩②は終わりです。
次回のコラムでは、個人型年金加入申出書に記入するところからお伝えしますね。
もし、「興味はあるけどちょっと心配…」「一つ一つ一緒に確認しながら進めたい」と思ったら↓↓お問い合わせフォーム↓↓からお気軽にお尋ねください。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!