高野 具子

【実例】相続で大変だったこと

「出会った人の懐と心を豊かにする」アラフォー世代の働く女性のための
My Money Coach 高野具子です。 

いつもはiDeCoや資産形成や保険についてのお話ですが、昨日は相続研究会にて勉強してきました。
そこでのお話と実例についてシェアしたいと思います。

相続の実例について

昨日の勉強会では、主に相続放棄について学びました。
相続放棄はやや内容が込み入りますので、今日はシンプルな相続事例について触れていきます。 

ちなみに相続放棄するケースとは、被相続人(亡くなった方)に借金があると、それも受け継いで返済しなければなりません。借金を受け継ぎたくない場合、相続放棄することで返済不要となります。 

しかし少しでも被相続人の資産を受け取ってしまうと、「あなたお金受け取ったでしょ、じゃあ借金も請け負ってね」となり、相続放棄することができなくなります。ここが注意点です。

さて話を戻します。 

【今回の実例】
被相続人(亡くなった人):66歳男性 妻は10年前に他界・借金なし・内縁の妻なし・隠し子なし
相続人(遺族):子ども2人(成人)

通常、実例はお客様の相談ケースですが、今回は我が家のケースです。

相続と言うと、ドラマで親族同士が喧嘩したり、お金が絡むと目の色が変わると言った「争続」が思い浮かぶ人もいらっしゃると思いますが、我が家は円満相続でした。
橋田寿賀子のドラマのようにドロドロしていませんので、面白味はないかもしれませんが、ご一読ください。

 いきなり相続発生

人が亡くなるケースの多くが病気です。
父も同様、病気で他界しました。しかし入退院を繰り返していたということもなく、病状を知らされておらず、私たちにとってはとても急なことでした。

相続が発生すると、申告期限があります。

10カ月

不幸中の幸い、相続人は私と弟の2人です。愛人や隠し子などもおりません(笑)
なので10カ月あるのは、余裕だと思っていました。

 

相続の前にやらなければならないこと【お葬式について】

元々私が勤めていた前職のブライダルの会社は、冠婚葬祭の会社でした。
既に母の時と祖母の時と過去2回利用しており、葬儀はそこにお任せしました。

一般的には、葬儀屋さんに知り合いがいることは少ないと思います。家の近所のどこに葬儀屋さんがあるか確認しておくとよいでしょう。家族を看取った後、葬儀までに日が短いと準備が多く寝不足になりがちです。心神喪失している中、あまり自宅から遠い場所だと行き帰りだけで疲れてしまいます。ですので、自宅近くで見つけておくと安心できます。

病院と提携している葬儀屋さんも多いです。最近は、悪徳葬儀屋さんは少なくクリーンになりましたが、昔は見積もりももらえず、すべてが終わった後、異常に高い請求書が来る…ということがありました。

あちこちの葬儀屋さんで、生前相談を行っています。費用がいくらくらい掛かるのか、予め聞いておきましょう。
最近では「終活」や「エンディングノート」などで、予め準備される方も増えています。これは遺族にとって助かるのでお勧めです。

葬儀費用のための生命保険は必要?

 よく生命保険の担当者に、葬儀の費用はすぐ出さなければならない。銀行口座が凍結されるから、死亡保障は絶対必要です!と言われたことはありませんか?「ザ・営業トーク」です(笑)

葬儀費用は確かに迅速に支払う必要があります。慈善事業ではありませんから。
しかし「銀行口座が凍結される」タイミングはいつか?がポイントです。

死亡届を役所に提出したら、その時点で銀行口座が凍結されると思っている人も多いですが、それは事実ではありません。基本的に銀行は遺族の申し出がない限り、死亡の事実を知ることはありません。

我が家の場合は相続人が2人(私と弟)だけでしたので、銀行に行ったときに「これで凍結していいですか?葬儀費用は足りていますか?」と言ってくれました。

もし相続人が多い場合、凍結前に被相続人の預金を使ったとなると、遺産分割する際、揉めるケースも出てくるので注意は必要です。しかし相続人が多くなく、事前に引き出しできれば葬儀費用に充てることができます。たまたま父と生前「暗証番号を何にしているか?」の話をしており、葬儀費用は父の預金から支払いました。

生命保険に入っていれば確かに便利です。保険会社によっては、即日給付してくれる会社もあります。しかしその分の預金が確保できていれば、不要だとも言えます。保険加入する前に、受け取れる保障額と、支払う保険料のバランスを考えてから加入しましょう。

先に申し上げておくと、このあと出てくる手続きのための費用や、我が家の場合、税理士に相続税申告を依頼しましたので、その分の費用も確保する必要があります。

相続が発生したら何から始めれば良いか?

 そもそも相続手続きのゴールは何でしょうか?

「遺産分割協議書」を作り、納税額を被相続人(亡くなっていた人)の住所の税務署に、相続税額を申告することです。

遺産分割協議書とは、誰に何をいくら相続するか?を明記する書類です。これを作ると同時に相続税の計算も行っていきます。このゴールが分かると何をスタートさせればよいのか、分かってくると思います。

まず受け継ぐ遺産がどれだけあるか?を確認しなければなりません。そのために一番最初に行うことは、銀行へ残高がどれくらいあるか?を確認するため、「残高証明書」を依頼します。

この残高証明書は「下さい」と言ってすぐ出てくるものではありません。必要書類があります。

①被相続人(亡くなった人)の戸籍謄本
生まれてから亡くなったときまでのすべての戸籍謄本が必要です。もし戸籍の住所が変わっている場合、各地の市区町村の役所から取り寄せなければなりません。戸籍(の住所)は移さない方が良いと言われるのは、このためです。

生まれてから亡くなったときまでのすべての戸籍謄本について、もう少しお伝えします。
実際は2種類の謄本が必要です。

A.戸籍(除籍)全部事項証明書:これは磁気ディスクに記録されている戸籍(除籍)の内容のすべてについて証明したものです。
手数料 1450

B.改製原戸籍謄本(抄本):「かいせいげんこせき」と言いますが、通称「かいせいはらこせき」「はらこせき」と呼ばれます。戸籍制度の改正にともない、作り替えられる前の戸籍です。戸籍コンピュータ化の直前の状態のものもこれにあたります。謄本は原本すべて、抄本は原本のうち一部の方だけを写したものです。
手数料 1750

遠方の場合、取り寄せに1週間~2週間ほど掛かりますので、早めに取り寄せましょう。

②相続人(自分たち)の戸籍抄本または戸籍謄本
被相続人(亡くなった人)との関係を証明するために必要です。親子の場合は①があれば、大丈夫です。

③相続人(自分たち)の印鑑登録証明書(原本)
発行より6ヵ月以内のものが必要です。手数料1300円です。
印鑑登録証と身分証明書を出せばすぐ請求できます。

この2点(あるいは3点)を用意して初めて「残高証明書」が請求できます。

 

ここまでの手数料について

1450円+750円+(300×2人)=1,800円掛かります。

1カ所だけでしたらよいですが、各地違うとその分の取り寄せが必要ですし、これを各銀行へ提出しなければなりません。コピー不可です。5行あれば、9,000円掛かります。

葬儀費用のことばかり気に掛けていましたが、意外と掛かるなぁと感じた1つです。

 

各銀行の「残高証明書」取り寄せ期間

小さい銀行だと早かったです。横浜信用金庫では、即日出してくれました。都市銀行だと2週間前後掛かると言われますが、実際は10日くらいでした。

注意すべきは郵便局です。

都市銀行の場合、通帳の支店の取り扱いだけ確認すればよいのですが、
郵便局は、全国の郵便局へ残高確認しなければなりません。
最低1カ月は掛かります。「ここの郵便局だけでしたが」と言ってみましたが、ダメでした。 

郵便局に預金を預けている方は多いと思います。
いよいよ相続手続きしなければと9か月目で行ってしまうと、間に合わない可能性が出てきます。

「郵便局は時間が掛かる」ということを覚えておいてください。

ネット銀行の場合

これが案外厄介です。

パスワードが分からず、店舗に行っても「窓口はありません」と言われてしまいました。とりあえず残高証明だけは出すことができましたが、ほとんど残高がなかったので、放棄しました。年配の方がネット銀行を嫌うのも止むを得ないと感じる瞬間でした。

しかしやはりネット銀行は便利で私もよく利用しています。「エンディングノート」などで家族にIDやパスワードを知らせておくのも大切だと思います。

昨日の弁護士先生からは、海外に預金口座を持っている方のお話がありました。
「日本語が通じない」「現地に来ないと残高証明できない」「弁護士ではなく本人の問い合わせじゃなければダメ」
と言われたそうです。
万一、残高が2万円ほどだった場合、往復の飛行機の運賃を考えると完全にマイナスになってしまいます。確かに海外預金は利息が大きいところはあるので、何とも言えませんがなかなか難しいものだと感じました。

 

一番大変だったこと

相続が発生した瞬間でした。
当初、我が家の場合「何をしたら良いか分からない」という状況に陥りました。初めてのことで具体的にどうなるかがさっぱり見当がつきません。最初の内は仕事にかまけてしばらく放置していました。これはかなり危険です。もし被相続人(亡くなった人)に借金があり、相続放棄する必要があった場合、3カ月で家庭裁判所に申告しなければなりません。もし父に大きな借金があったら放棄できず、借金を抱えることになっていたかもしれません。

残高証明が出そろった後の相続税の計算は税理士さんにお任せしたので、かなり助かりました。

しかしここまでの銀行とのやりとりは自分たちでやらなければなりません。意外とこの部分が面倒でした。

他に詳しく費用面について書かれたコラムはあると思いますが、
大変だったことが書かれたコラムはあまりないと思い、記載してみました。
お役に立てれば幸いです。