会社員のiDeCoは転職の際が最もリスキーになる!

こんにちは、確定拠出年金相談ねっと 代表の山中伸枝です。

最近iDeCoが花盛りでどっちを向いてもiDeCo、iDeCoです(笑)

ま、相変わらず一般の方にとっては、iDeCoって何?って世界なのですけど・・・

 

iDeCoの本名は確定拠出年金の個人型です。っで確定拠出年金にはもう一つ企業型があります。

この二つは全く異なるものなのですが、加入者からすると、行ったり・来たりすることがある結構つながった制度なんですね。

 

例えば、今年iDeCoを始めたAさん、将来のためのコツコツ積立を始めました。5年頑張ってお金も200万円貯まりました。

Aさん、ここで転職しました。新しい会社に入ってみると、企業型確定拠出年金があるそうです。

Aさん、びっくり。だってAさんのiDeCoの口座にある200万円、そっくりそのまま企業型確定拠出年金にお引越しが必要だからです。

これ単なるお引越しじゃないですよ。

Aさんは、積極的に投資信託で運用していたんです。

それもしっかり勉強してとても気に入った投信です、運用成績も良いしこのファンドなら十分な老後資金が貯められる!と思っていました。

 

それが・・・

 

新しい会社、企業が全社員に掛金を拠出するタイプの企業型確定拠出年金を導入しているんですよね。

あー、かわいそう

会社が掛金を出してくれるのになぜって?

実はAさんお引越しに際し、投資信託をすべて売却してキャッシュにしなければならないんです。今回は転職して初めて企業型があると分かったので、十分考える時間もなく会社の入社手続きと共に企業型への移換手続きをしなければならなくなりました

 

うーん、マーケットの状態が気になりますよね~

売却はしょうがないとしても、売却タイミングをAさんが指示することもできないので、すべての移換手続きが完了するまでAさんはハラハラドキドキです。

 

Aさん、気を取り直して会社の企業型確定拠出年金の商品ラインナップを見てみました

 

愕然

 

正直このラインナップでどうやって国際分散投資ができるんだよ~というレベル、更にバランスファンドはどれもこれも日本株に比重を置いたファンドでAさんは納得いきません。

確かに企業型であれば手数料負担は会社がしてくれるし、Aさんの会社では毎月給与の上乗せで5,000円の掛金を拠出してくれます。

 

でもな~

なんか納得いかないな~

 

Aさん、浮かない顔です。せっかくやる気を持って転職した会社、辞めるってわけにもいかないし、あー、なんかな~とため息をついています。

 

これ、全くのフィクションですがこういう事、これからいっぱい出てくると思いますよ。

確定拠出年金は移換の際、全てをキャッシュにしなければならないんです。また企業型では商品ラインナップを加入者が選べませんから、目が肥えた投資家が増えてくれば増えただけ、iDeCoでの資産形成に熱心が人が増えれば増えるだけこういう問題大きくなると思います。

 

解決策はないのか?

そうですね、あえて言えば三つあります。

一つは、転職を考える際あらかじめ企業型確定拠出年金を導入しているかどうか確認し、それと同時にiDeCoの資産もタイミングを見ながら売却していくこと。移換はマストなのですが、少なくとも売却タイミングぐらいは自分で決めたいよねということです。

ただ、転職の際、あまり企業年金について確認する人もいないと思いますので、これもまた意識しないと難しいですね。

二つ目が、企業が個人型加入を認める規約を持っていること。これであれば、企業型移換のタイミングを投資状況を見ながら売却することも可能ですしもし商品ラインナップが本当にしょぼければ個人型を継続することができます。ただしiDeCoの掛金上限は月2万円です。

またこの仕組みだと企業型にも平行して入ります。商品ボチボチであれば我慢ですが、会社が掛金を出してくれるのでその分はありがたいです。

でも、こういう企業は少ないでしょうね。なぜかというと、iDeCoとの併用を認めるには会社の規程を変更しなければならないからです。また併用というと異なる仕組みが二つということですから、管理コストもかかります。

iDeCoとの併用を認めない会社はマッチング拠出があるところが多くなるしょう。これは単に自分のお財布から企業型確定拠出年金の仕組みを借りてお金を運用するものなので、iDeCoを継続させることはできません。やっぱりすべての資金を売却して移換となります。

三つ目は、「選択制」といって、給与内から財形貯蓄のように自分の掛金を拠出できるタイプの企業型確定拠出年金制度を導入している会社に入ること。加入するかどうかは本人の「選択」ですから、iDeCoを継続させたいのであれば企業型に入らずiDeCoのままでいることができます。

もし企業型の商品ラインナップが良ければ、タイミングを見て企業型「選択制」にお引越しします。その場合掛金上限額が一気に55,000円まで引き上げられますし手数料は会社が持ってくれます。

ただこの選択制のデメリットは、掛金を拠出すると社会保険の給付が下がる点です。特に、体の具合が悪くて傷病手当金を受けながら病気療養も考えている方、出産を控えている方は、復職してから始めるべきです。また、すぐに転職を考えている人も、失業給付も下がりますから、やらない方がいいでしょう。

でも、将来への積立という意味では、選択制はメリットが大きいです。もし社会保険の仕組みがあまり詳しくないという方は以下のコラムを参照してください。

 

選択制の説明を分かりやすく動画で説明しています

選択制のデメリット(社会保険給付の減少)を分かりやすく解説しています

 

どんなことでもトレードオフ、メリットもあればデメリットもあります。

100点満点のものはありません。

それでも、回避できることは回避したいですし、対策がとれるものはとったほうがいいですから、しっかり情報収集しましょう。

 

しかし、全員加入型のいわゆる企業型確定拠出年金、今の時代にやっぱり合わないと思いますよ~。

だって確定拠出年金って自主的に資産形成するための手段なので、いわゆる退職金制度とか企業年金とかとは根本的に異質なものなんですよ。だから、主体的にやりたい人がやる、それに対して会社がバックアップするっていう選択制が、今の時代には合っていると思います。

 

企業型確定拠出年金への移換時のデメリットってあまり語られませんが、これからiDeCoをする人が増え、投資家としても成熟してくると絶対自分のiDeCo口座を維持したい、より良いプランなら変えてもいいけどというような人が増えてくるはずなんですよね。そうなった時、加入しないという選択肢も残してあげないと、ダメでしょう。

生き方の多様性

これは今後ますます尊重しなければならないことになると思います