ご相談者DATE しづかさん(仮名)
【年齢】 32歳
【職業】 会社員
【性別】 女性
【家族構成】 独身・一人暮
相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)
確定拠出年金に加入しようと思い、本屋・WEBでいろいろと調べました。そうしたら、私みたいな会社員は掛金がすくなくてビックリ!! フリーランスの友達の方が沢山掛けれるのに、なんで?と思いました。お金のことは難しくてわからな過ぎて、相談するのも恥ずかしい。寺門さんのBLOGをみて、敷居が低そう(失礼(>_<))なので相談しました。
ご相談内容
今年、転職しました。新しい会社に確定拠出年金制度があり加入することに。導入教育?という説明会に参加しました。わかったような・・わからないような・・。その後、たまたま学生時代の仲よし三人組でランチをしました。そうしたらメーカー勤務のAちゃんの会社でも入っていて、盛りあがりました。もうひとりのBちゃんは、フリーでダンスのインストラクターをしています。「将来が不安」という話になり、その後彼女は色々と調べたみたいなのです。そうしたらLINEがきて「私は確定拠出年金3万円はいった」って連絡が。
私は会社で金額が決められていて1万円未満なのです。Aちゃんは会社員なのに、私より掛金の金額多いし、なんか納得いかなくて調べました。WEBや本を買って読んだら、掛金にはタイプがわかれているみたいですね。調べれば調べるほど、わからなくなりました。なんで会社員の掛金は少ないのですか?なんで同じ会社員でも差があるのですか?
ご相談でお話した内容
2017年確定拠出年金の歴史に新たな1ページが刻まれました。2017年1月に個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入対象枠が大幅に増えました。今まで「確定拠出年金」という存在を知らなかった人、興味がなかった人、または薄い人も多いに関心を持ち始めたのです。拡大にともない、国もPR活動に本格的に乗り出しました。特に銀行や証券会社の中でもWEB系の金融機関は加入PRに力を注いでいます。
1‐1:iDeCo加入者状況
2017年7月の時点で、iDeCOの加入者は約58万人となり、前年比200%強増しとなっています。増加の一番の要因は、上記にあげた「加入対象者の拡大」でしょう。またPR活動の一環として、TV CM放送やiDeCoキャラクターの白イルカちゃんの採用など、大きく目立ったPR活動をしています。
1‐2:問い合わせの増加
上記のようなPR促進や、私ども確定拠出年金相談ねっと認定FPの情報発信も手伝い、今年に入ってから問い合わせ数がとても増えました。また、勉強をする人も増えてきたようです。昨年までは「よくわからない存在」だった確定拠出年金が→「興味のある存在」に変化していったようです。大変嬉しいことです。
私どもの代表 山中伸枝の著書も好評な販売状況でございます。
それだけ、皆さんの研究が進んでいるのでしょう。
その中で…最近多い質問は「会社員は個人事業主に比べてなんで掛金に差があるのですか?不公平なのでは?」という問い合わせです。確かに、山中の著書の中の比較表をみても、会社員と個人事業主の掛金の限度額は違います。
2‐1:会社員と事業主の掛金の比較
そもそもご相談者様は会社で確定拠出年金に加入するとのこと。すると、区分上は「企業型」確定拠出年金への加入となります。
■確定拠出年金<企業型>の掛金(企業が社員に拠出する掛金の上限額)
企業年金(厚生年金基金・確定拠を実施していない場合 | 月額 55,000円 |
※上記、規約において個人型年金の加入を認める場合の企業の掛金 | 月額 35,000円 |
企業年金(厚生年金基金・確定給付企業年金)を実施している場合 | 月額 27,500円 |
※上記において個人型年金の加入を認める場合の個人の掛金 | 月額 15,500円 |
企業型の場合、会社が社員に掛金を拠出するため、上記はそれぞれの条件下の会社の掛金上限額です。この枠の中で会社が社員の掛金額を決定します。ご相談者様はこの掛金が1万円とのことです。
■確定拠出年金<個人型>(加入者本人が自分で出せる掛金の上限額)
※DC…確定拠出年金
自営業者(第一号被保険者) | 月額 68,000円 | |
会社員・公務員 (第二号被保険者) | 会社に企業年金がない | 月額 23,000円 |
会社が企業型DCに加入 | 月額 20,000円 | |
会社がDCと企業年金に加入 | 月額 12,000円 | |
会社が企業年金のみに加入 | 月額 12,000円 | |
公務員等 | 月額 12,000円 | |
専業主婦(夫)(第三号被保険者) | 月額 23,000円 |
一方上記は、確定拠出年金「個人型」確定拠出年金の掛金一覧表です。
確かに、個人事業主の方は月額68,000円の限度額に対して、会社員の方の限度額は企業型で55,000円となっています。その差13,000円です。個人型だと更に上限との差が広がります。
《13,000円の差は将来いくら変わるのか?》
例)30年間加入した場合
13,000×12ヶ月 × 30年 =468万
確かに大きな差を生みますね。しかし…なぜ国は確定拠出年金において会社員より自営業者を優遇するのでしょうか?
2‐2:公的保障において会社員が優遇されている事実
<厚生年金がある>
そもそも確定拠出年金の設立の目的は何だったのでしょうか?それは「少子高齢化」をむかえる国の危機を乗り越える手段だったのです。よく考えてみてください。現在の年金制度において、会社員の方には「厚生年金」がありますが、個人事業主は「基礎年金(国民年金)」のみです。基礎年金には確かに付加年金はあります。しかし、その上乗せ部分は微々たるものです。現在、年金が支給されている高齢者間で比較すると、まるっとしたイメージですが約「倍」違います。(厚生年金は給与により個別に違うので具体的な数字は言えません)
<企業年金>
大企業にお勤めの会社員の人のなかには、会社が運用する「企業年金」という制度があります。「○○厚生年金基金」や「確定給付企業年金(DB)」と呼ばれているものです。上記の表でも示されていて、企業年金に加入している人は、会社員でも特に掛金が少なくなっています。この他企業型確定拠出年金というのも企業年金の1つですから、やはり掛金に制限が設けられています。
<保険制度の充実>
会社員の方は、各企業の「健康保険組合」や「健康保険協会」に加入しています。一方個人の方は「国民健康保険」です。基本的なサービス内容にも差がありますが、更に、健康保険組合に加入の方は付加給付といって、通常の給付より大きな金額が受け取れることが多いのです。
<確定拠出年金の拠出期間>
確定拠出年金の掛け金を支払うことを「拠出する」といいます。その拠出期間が、個人は60歳までに対して会社員は65歳までとなります(規約による)。そのため、60回(12カ月×5年)ほど多く拠出できるわけです。上記の比較式に当てはめると、13,000円×60回=780,000円 となり、拠出金額の差が縮まります。
<雇用保険>
自己都合で退職をした場合、または会社が倒産などにあった場合、わずかな掛金で大きな保障を受けることができます。
2‐2:公的保障における個人事業主のデメリット
個人事業主は、会社員に比べて年金受取額や保健制度において受給額・サービスの給付が少ないと申し上げました。また、会社員は「健康保険」や「厚生年金」の払い込みにおいても優遇されています。個人事業主は、年金の掛け金や保険料は全額自己負担となります。一方で会社員は「労使折半」といって、労働者と企業が半分ずつ支払います。そのため、会社員は月々の支払額の負担も少なくなるのです。さらに、「雇用保険」は個人事業主にはありません。例え事業に失敗してもそこに賃金の保障はなく、個人的に民間の保険で賄うしかないのです。
2‐3:確定拠出年金の掛金はなぜ会社員と事業主とは違うのか!
以上のように、個人事業主は会社員に比べて保障は少なく、負担が大きいと言っても過言ではありません。確定拠出年金はそんな事業主の人たちへの「公的年金の補完」という目的があります。将来、少子高齢化の影響で、年金制度を支えている人(掛金を支払う人)と年金受給者のバランスが崩れます。そうすると、「支給額の減額」が進むこととなるのです。とてもではないですが「(公的)年金生活」では、暮らしていけません。そのために採用したのが、確定拠出年金「自分年金」「私的年金」なのです。
3‐1:企業型 確定拠出年金の種類
個人型確定拠出年金(iDeCo)に比べ、企業型 確定拠出年金は会社の加入状況によっていくつかのパターンがあります。「会社員だから掛金は少なくて不公平だ」と言うまえに、ご自身の会社の加入制度がどうなのか調べてみましょう。
- 会社に企業年金がない場合(掛金:55,000円 ただし掛金額を決めるのは会社)
- 会社に企業年金がないがiDeCo(個人型)加入が認められている場合(会社の掛金上限額:35,000円 個人がiDeCoで拠出できる金額:20,000円)
- 会社に企業年金がある場合(会社の掛金上限:27,500円)
- 会社に企業年金(厚生年金基金、確定給付企業年金)はあるがiDeCo(個人型)と併用も認められている場合(会社の掛金上限:15,500円 個人がiDeCoで拠出できる金額:12,000円)
最近、転職により確定拠出年金の「移換手続き」による相談も増えてきました。その際、会社員の皆様が「自分の会社がどのパターンだったのか、新しい会社はどのパターンだったのか」ということを知りません。「入っておけばよかった」と全員がおっしゃいます(笑)
実際、iDeCoの加入状況をみたら面白いことがわかりました。
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現在のiDeCO 加入者状況をみてみると、なんと会社員の方が個人事業主の約5倍となっております。それは、最初は会社経由で「確定拠出年金」に加入したといても、そのメリットがよくわかっているからでしょう。私ども認定FPも、もっとPR活動をしなくてはいけませんね。
4‐1:まとめと会社員の転職の際の注意点
いかがですか?確定拠出年金の掛金で不公平を感じていたかたも、実は会社員は公的保障において、随分と優遇されていることがわかっていただけたでしょうか。最後に、転職の際の注意点をお伝えします。上記したように「企業型:確定拠出年金」には種類があります。例えばAパターンの会社からBパターンの会社へ転職した場合の確定拠出年金はどうなるのでしょうか?下記の様になります。移管とは、確定拠出年金の保管(預かり)金融機関が変更されることです。
<転職時の確定拠出年金の移換>
※会社により管理(運営管理金融機関)している機関が変わります。
- Aパターンの会社の商品を解約して現金化
↓
- 前の会社から新しい会社へ確定拠出年金の「現在の資産残高」がまとめて移換される。
↓
- 前の会社から移換された「現在の資産残高と新しい会社での拠出金額を選択。
(できない場合もあります)
↓
- 転職先Bパターンの会社の商品を選択
以上となります。
これからの時代の転職は「確定拠出年金」の有無もキーワードとなるでしょう。また「どのパターンを運用できる会社なのか」という点もポイントです。いまや欧米では「資産運用」は当たり前となっています。この10数年、日本経済がアメリカ経済に大きくかけ離まされてしまったのは、資産運用がなかったからです。確定拠出年金に加入して、老後の自分が豊かな生活をしていけるように築いてまいりましょう。また、そのメリットを周りの家族・友人にPRをしてみてください。
ご相談者様は、改めてご自身の会社の制度に関心をもたれたようでした。人事部に問い合わせをした上で、またお目にかかる予定です。次回は会社で加入している確定拠出年金の運用商品の資料もお持ちになるとのことですので、商品選びのアドバイスもさせていただきます。これからの資産形成、しっかりとサポートさせていただきます!