内田 英子

本当に必要?就業不能保険。見極めの3ステップ

こんにちは。
家計の総合医。ママがぐっすり眠れる家計の処方箋。
FP相談ねっと認定FPの内田英子です。

働けない万が一の時に給付を受けることができる就業不能保険。

最近家計相談の中で関連したご相談を
お受けすることが増えてきました。

多くの方が長生きをする一方で
物価上昇や戦争、新型コロナウイルス感染症の感染拡大など
不透明な見通しが続く中
確かに将来の暮らしについては
これまで以上に不安を感じてしまいます。

しかし、将来が不安だから、
「なんとなくよさそうだから」
という理由で就業不能保険に加入するのは
もしかしたら誤った判断かもしれません。

実際家計相談の現場では
意向に沿わない就業不能保険の加入状況を
少なからず目にします。

そこで今回のコラムでは就業不能保険のきほんから、
就業不能保険を見極めるためにしっておきたい3つのポイントについて
解説します。

就業不能保障保険ってなに?

就業不能保障保険は、その名称の通り
「仕事に就くことができなくなった時」
に給付金が受け取れる保険です。
「就業不能保険」や「収入サポート保険」などの名称で売り出している保険会社もあります。
ただし、「仕事に就くことができなくなった」と認定するのは
あくまで生命保険会社。
生命保険会社によって「どのような状態を就業不能とするか」は異なります。
最近はさまざまな就業不能保障保険が各社から発売されていますが
一般的に給付をもらえるハードルは高く、勘違いも多いです。

本当に必要?見極めの3ステップ

就業不能保障保険にまつわる勘違いが多い要因の一つに、
各社で販売されている就業不能保険ごとに内容が違う、
といったことが挙げられます。

こんなはずじゃなかったとならないためには
商品内容をしっかり理解して加入することが大切です。

そこで、各社の就業不能保険を見極める際、
しっかりと踏まえておきたい3つのステップについて解説します。

支払い要件を確認しましょう

いつ受け取れる?

契約を結ぶ前にまず確認しておきたいのは、
給付金がいつ受け取れるか?といった点です。

働けなくなった状態になったらすぐに給付金が受け取れる
と勘違いされている方も多いですが、
働けない状態になったからといって、すぐに受け取れるわけではありません。

実際は所定の就業不能状態が所定の期間継続した時に
給付金が受け取れます。

保険商品によっても異なりますが、
例えば入院・在宅療養の状態が60日を超えて続いたとき、
もしくは障害年金1・2級の受給要件に該当したとき受け取れる
といった具合です。

ちなみに在宅療養というと、家で療養をしながら在宅で働く、
といったイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれませんね。
しかし、就業不能保険における在宅療養と認定されるための要件では、
多くの場合少しでも仕事をしていると認定されません。

また、最近はうつなどの心の病によって休職される方も増えていますが、
うつによる就業不能時に給付金が受け取れるかどうかは
保険商品によって違います。

支払対象とする病気を限定する就業不能保険もあります。

一方給付金支払いの要件である継続日数は
最近では短期化しているものも販売されていますが、
14日・30日・60日・121日・180日以上など
保険商品によってばらばらです。
中には、医療保険の入院給付金との使い分けが難しい
ものもあります。

あくまで休職期間を算定の対象としており
退職してしまっては受け取れない就業不能保険もあります。

保険商品によって支払要件はばらばらと心得て、
いつ、そしていつまで受け取れるのか?
じっくりと確認していきましょう。

どんなふうに受け取れる?

支払い要件を確認する際には、給付金の受取方法についても確認しましょう。
就業不能保障保険の給付金の主な受け取り方法は、以下のとおり2つあります。

  • 一時金受け取り
  • 年金(月払い)受け取り

一時金受取りはまとめて給付金がうけとれます。
年金(月払い)受け取りは、毎年もしくは毎月給付金が受け取れます。
いずれにせよ、保険商品ごとに定められていますので
契約前には確認しておきましょう。

ちなみに給付金額ですが、
受け取り期間で短期給付金と長期給付金をわけ、
受け取れる金額が変わるものもあれば
受け取り期間を通じて同じ給付金額といった商品もあります。

公的保障を確認しましょう

就業不能保障保険への加入を検討する際には、
すでにお持ちの公的保障を必ず確認しましょう。

特に知っておきたいのは傷病手当金制度についてです。
傷病手当金は加入されている
公的医療保険制度から受け取れる
いわゆる働けない時のお給料を補ってくれる給付です。
健康保険や組合保険、共済、一部の組合国保で実施されています。

業務によらない病気やケガによって働けなくなってしまった場合に、
入院の有無に関わらず
お給料が受け取れない期間※において、
最大1年6カ月間給付を受け取ることができます。
※連続した3日間の待期期間を経たのち4日目以降の期間。
いくらくらい受け取れるのか?というと、
およそお給料の6割です。

つまり、傷病手当金が受け取れるようであれば
就業不能保障保険に新たに加入せずとも
すでに働けなくなった時のある程度の所得補償は持ち合わせている
ということなんですよね。

ちなみに傷病手当金は受給している途中で退職しても、引き続き給付を受け取ることができます。

あなたが就業不能保障保険に入ろうかなと思った理由は何だったでしょうか?
万が一のことは考えることもつらいですが
そもそものきっかけについて振り返りながら
傷病手当金はいくらくらいもらえそうなのか
まずはおおざっぱでいいので計算してみましょう。

福利厚生を確認しましょう

傷病手当金の金額について確認したら、
次はお勤め先の福利厚生制度についても確認してみましょう。

傷病手当金は病気やケガでお給料がもらえない期間に受け取れる所得補償ですが、
お勤め先によっては傷病手当金を使わずとも
一定期間の収入を補うことは可能になるかもしれません。

病気休暇は取れませんか?
休職手当は受け取れませんか?

公務員の方の場合、
病気休暇であればお給料の全額が補償されますし
休職扱いにしてもらうことができれば
1年程度お給料の8割程度を受け取れる場合もあります。

お勤め先によっては傷病手当金制度に上乗せされる
付加給付がある場合もあります。

付加給付があれば多くの場合、
傷病手当金を受け取れる間、お給料の8割程度の給付が受け取れます。

また、傷病手当金の給付期間を延長して受け取れるところもあります。

まとめ

就業不能保障保険の基本と見極めの3ステップについて解説しました。
ともすれば死亡による万が一よりも
家計負担が増すことが考えられる働けない万が一。
想像すれば怖くなってしまいます。

でも本当にこわいのはどんな働けない状態なのか。
またすでに備えているさまざまな保障でまかなえるものはないか。
もう一度家計の今を振り返ってみましょう。

お勤め先の福利厚生内容も案外しらないものは多いものです。

働けない万が一に備える手段は
必ずしも就業不能保障保険だけではありません。

持続可能な家計設計のために
まずは確認して正しく畏れることが大切です。