内田 英子

学資(子ども)保険 比較検討してみた

こんにちは。見つける。ツクル。
家計の総合医。FP相談ねっと認定FPの内田英子です。

先日学資(子ども)保険についてご相談をうけました。
「夫の万が一のことが怖くて学資保険に加入しているけど、本当にこれでいいのだろうか。」というものです。

学資(子ども)保険は一言で申し上げれば子どもの学資金を準備するための保険。
一般的に保険は被保険者が万が一の時に保険金がおりるのがスタンダードなかたちですが、
学資保険の場合は、被保険者となる子どもが生存しており進学する際に学資金としてメインとなる給付を受けとることができます。

学資保険の最も大きなベネフィットは契約者(親など)が万が一の時には保険料の払込が免除となりながら、学資金が当初のスケジュールどおり支払われるということ。

契約者万が一の時にも子どもの教育資金は確保してあげたいという方は多いと存じますが、
万が一の時に家計の負担をなくしながら一定の学資金の準備を見込めるのがベネフィットとなります。

しかし、学資保険はいわゆるつみたて型の保険ですから、多くの場合、保険料負担は小さくありません。
その一方で低金利の今、利回りは高くありませんから、資金のあそびを確保しながら合理的な判断をされたいということでしたら、学資保険加入に限らない方法を検討していくことも有効な策となることと思います。

結論から申し上げるとわが家は学資保険には加入していないのですが、理由もなく加入しないという判断をしたわけではありません。

そこで、今回のコラムでは学資保険Aを例にあげ、その他の方法と比較しながら合理性を確認していきたいと思います。

学資(子ども)保険加入のコスト

今回例にあげる学資保険Aの内容は以下のとおりです。
30歳男性、子ども0歳 18歳払済 学資金受取総額300万円の場合
月保険料 13,230円
返戻率:104%
(税金は考慮していない)

学資保険Aに加入した場合の18年間の支払い保険料総額は2,857,680円となります。

支払った保険料よりも多くの学資金を受け取れるといっても、増える金額は18年間で142,320円のみ。
1年あたりになおすと7,906円、返戻率は1年あたり0.22%です。
教育費の上昇が目立つ今、これではインフレに負けてしまうことが想定されます。

そこで、学資金を用意するのが目的であれば、わたしは以下のような選択もありではないかなと考えます。

定期保険に加入し契約者万が一のときの学資金の確保に備えながら、つみたて投資によって生存時の学資金を用意する

実際にこの方法を選択するとどのようなメリットデメリットがあるのでしょうか。
コスト面を比較していきたいと思います。

定期保険+つみたて投資のパターン

想定されるコスト1:定期保険の保険料

今回例にあげる定期保険Bの内容は以下のとおりです。

契約者 男性30歳 保険金額600万円※ 保険期間20年間
月保険料951円

※保険金額は比較検討のため、学資保険A加入のベネフィットとなる契約者万が一時の保険料払込免除による最大の利益額約586万円をふまえて設定しましたが、
死亡保険も契約者万が一の際は以後の保険料の払込は不要となりますので、学資金300万円を目標とするのなら実際の加入時の死亡保険金は半分の300万円にしてもいいと思います。

定期保険Bに加入した時の18年の保険料総額は205,416円です。

18年間拠出する場合、学資保険Aと定期保険Bとの保険料総額の差は2,652,264円にもなることがわかりました。

ただし、生命保険に加入すると生命保険料控除による減税メリットもあります。
そこで、生命保険控除適用による減税メリットもふまえた正味のトータルコストの差を確認しておきましょう。
減税効果は所得によって異なります。試算結果は以下のとおりです。

課税所得195万円以下330万円以下695万円以下900万円以下1800万円以下
学資保険A加入時の減税額合計…③108,000円144,000円216,000円237,600円309,600円
定期保険B加入時の減税額合計…④30,810円41,090円61,630円67,790円88,340円
③ ― ④77,190円102,910円154,370円169,810円221,260円
トータルコストの差2,575,074円2,549,354円2,497,894円2,482,454円2,431,004円
(18年間保険料を拠出する場合)※減税額は10円未満切り捨て。生命保険料控除を満額受けることができるとする。

課税所得によっても異なりますが、減税もふまえた正味でのトータルコストの差は250万円前後、学資保険Aの方が多くなることが見込まれます。

想定されるコスト2:つみたて投資の積立元本

次に、生存時の学資金の準備のためにつみたて投資もあわせて実行していく必要があります。
目標金額を300万円とするとき、必要な積立額は以下のとおりです。

利回り年3%年5%
総積立額(元本)2,496,000円2,208,000円
目標金額:300万円 引き出し時のリスクを分散できるよう積立期間はゆとりをもたせ16年とする 税金は考慮していない

なお、毎月の積立額は以下のとおりです。
(利回り年3%の場合)13,000円
(利回り年5%の場合)11,500円

学資金300万円の準備を目標とし、学資保険加入と定期保険加入+つみたて投資の経済合理性を比較するなら、学資保険加入時の正味のトータルコストと定期保険加入の正味コスト+つみたて投資の元本総額を比較する必要があります。

保険間の正味のトータルコストの差は前述しましたが、この差額をつみたて投資に必要な総積立額が上回るケースでは、学資保険ではない準備方法の方が効率的であると推測されます。

総積立額が保険のトータルコストの差を上回るのは以下のケースです。

(利回り3%の場合)課税所得696万円以上の場合
(利回り5%の場合)いずれのケースもなし

このような結果から、必ずしも学資保険で学資金を用意する、という選択肢だけが適切なものではないのだということがお分かりいただけるのではないでしょうか。
もちろん投資にリスクはつきものですから、つみたて投資といえども始める前にはお勉強することが必要です。
また、保険料は年齢や性別によっても増減します。しかし、保険料は長期にわたって支払いが続きますし、学資金の受け取りは時期も固定されています。
まとまった一定額を長期で固定して出さなくてはいけないというのは、子育て中の変化の多い家計にとっては負担になることや、働けなくなった万が一の際の家計の柔軟性が落ちてしまうことも考えられます。

結論:わがやが学資保険に加入しない理由

  1. すでに学資金をふまえた必要保障額を死亡保険加入により準備している
  2. すでに資産運用をしている
  3. 見えないところに資金を長期間固定されるよりも目の前に自由とゆとりを残しておきたい(個人的な好み)