三角 桂子

【遺族年金】重婚的内縁関係の再審査請求が決定しました

こんにちは。神奈川の湘南でFPと社会保険労務士の二刀流で活動している三角です。
この度ご縁により、遺族年金・未支給年金の再審査請求をさせていただきました。

内縁関係とは、婚姻届を提出していない状態で、夫婦と同様の関係を有し共同生活を送る方を指し、「事実婚」とも言います。実際に戸籍を入れている状態と同程度に夫婦関係があると認められれば、内縁(事実婚)でも法律婚と同じように年金を受けることができます。

【審査請求の依頼】

今回のご相談者様(Kさん)は、弊法人のブログを見ての依頼でした。以前、重婚的内縁関係の遺族年金請求をさせていただいた記事を見つけてくださったとのことです。

ご相談者様自身で遺族・未支給年金の請求をしたところ不支給になったとのことです。重婚ということですから、戸籍上の妻がいますが、夫婦関係は形骸化。内縁の妻と夫婦として生活していることを重婚的といいます。本来、戸籍上の配偶者と解消していれば問題ないのですが、人と人の関係の中で、どうにもならないこともあるかもしれません。

そんな中、夫が亡くなり、遺族年金・未支給年金はどちらが受け取れるのでしょうか?遺族年金は、亡くなった時に亡くなった人によって生計を維持されていた人が対象で、最も優先順位の高い方が受け取ることができます。では、生計維持関係がどちらにあったかが問題となります。

今回の「重婚的内縁関係」とは、戸籍上の配偶者と離婚していない方と内縁(事実婚)関係にある状態であることをいいますが、平成23年3月23日年発0323第1号厚生労働省年金局長通知の「生計維持関係等の認定基準及び認定の取扱いについて」重婚的内縁関係について以下のように記載されています。

重婚的内縁関係
認定の要件について、届出による婚姻関係にある者が重ねて他の者と内縁関係にある場合の取扱いについては、婚姻の成立が届出により法律上の効力を生ずることとされていることからして、届出による婚姻関係を優先すべきことは当然であり、従って、届出による婚姻関係がその実体を全く失ったものとなっているときに限り、内縁関係にある者を事実婚関係にある者として認定するものとすること。

なお、内縁関係が重複している場合については、先行する内縁関係がその実体を全く失ったものとなっているときを除き、先行する内縁関係における配偶者を事実婚関係にある者とすること。
① 「届出による婚姻関係がその実体を全く失ったものとなっているとき」には、次のいずれかに該当する場合等が該当するものとして取扱うこととすること。
ア 当事者が離婚の合意に基づいて夫婦としての共同生活を廃止していると認められるが戸籍上離婚の届出をしていないとき
イ 一方の悪意の遺棄によって夫婦としての共同生活が行われていない場合であって、その状態が長期間(おおむね10年程度以上)継続し、当事者双方の生活関係がそのまま固定していると認められるとき
② 「夫婦としての共同生活の状態にない」といい得るためには、次に掲げるすべての要件に該当することを要するものとすること。
ア 当事者が住居を異にすること。
イ 当事者間に経済的な依存関係が反復して存在していないこと。
ウ 当事者間の意思の疎通をあらわす音信又は訪問等の事実が反復して存在していないこと。

karakama-shigeo.com/syahoken/tuuchi/H230323-0323-1.pdf

つまり、重婚的内縁関係にある方を「婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者」として認定するには、届出による婚姻関係がその実体を全く失ったものとなっていること、その状態がおおむね10年程度以上継続していることが必要であり、総合的に勘案して事実婚関係の認定を行うものとされています。

Kさんのお話しをお伺いすると、20年は内縁(事実婚)関係にあり、戸籍上の配偶者との関係がなくなっていたとのことでした。ですが、夫の親が戸籍上の配偶者と同居し送金していることから、内縁の妻の年金請求は不支給となり、そのため弊法人に依頼があり、審査請求をさせていただくことになりました。

しかしながら、審査請求は棄却。審査請求の謄本をみて愕然としました。調査回答書はこちらの事実と相違していたからです。基本的に戸籍上の妻が優先されるため、回答書をみる限りでは生計維持関係は戸籍上の配偶者であり、こちらの審査請求は棄却される内容でした。

【再審査請求への決断】

重婚的内縁関係については、下記記載のとおり、調査をして認定することになっているのです。

重婚的内縁関係に係る調査
重婚的内縁関係にある者を「婚姻の届出をしていないが事実上婚姻関係と同様の事情にある者」として認定するには、届出による婚姻関係がその実体を全く失ったものとなっていることを確認することが必要であり、このため、次の調査を行い、その結果を総合的に勘案して事実婚関係の認定を行うものとすること。

なお、この調査は、相手方の任意の協力を得て行うものであるとともに、本人のプライバシーに関係する問題でもあるので、慎重に取り扱うものとすること。
① 戸籍上の配偶者に対して、主として次の事項について、婚姻関係の実態を調査すること。
なお、戸籍上の配偶者の住所は、戸籍の附票(住民基本台帳法第16条~第20条参照)により確認することとすること。
ア 別居の開始時期及びその期間
イ 離婚についての合意の有無
ウ 別居期間中における経済的な依存関係の状況
エ 別居期間中における音信、訪問等の状況
② 前記①による調査によっても、なお不明な点がある場合には、いわゆる内縁関係にある者に対しても調査を行うこと。
③ 厚生年金保険法及び船員保険法の未支給の保険給付並びに国民年金法の未支給年金についても同様の取扱いとすること。

Kさんは、審査請求の結果をみてショックを隠しきれませんでした。しかしながら、亡くなった夫の想いをとげたいと、再審査請求を決意。調査回答書の内容がこちらと相違していることを書き出し、その根拠資料を添付し、再審査請求をしました。

すると社会保険審査会から公開審理の場で意見を述べる機会をいただき、Kさんと社会保険審査会に出席、いままでの想い、意見を述べてきました。

定期的に送金していたのは、離婚できた場合の慰謝料と親の介護分であること。家の訪問は親に会うためであることを訴えました。夫が病気で通院中も配偶者として付き添ってきたこと。さらに亡くなった当時、Kさんとの自宅であり、戸籍上の配偶者が遺体の引き取りを拒否し、Kさんが配偶者として葬儀を執り行ったこと。もろもろの根拠資料をつけて公開審理にのぞみました。

公開審理から待つこと4ヵ月、最初の遺族・未支給請求から2年以上かかって、ようやく決定しました。Kさんは、「諦めないで良かった。亡くなった夫に報告します」と喜んでいました。

人生100年といわれるようになり、長い人生の途中にはさまざまな出来事もあるでしょう。いろんなご意見があるかもしれませんが、Kさんが夫と過ごされた20年以上はかけがえのない人生であり、その証である遺族・未支給の再審査請求をさせていただいたご縁に感謝しています。

※本投稿はお客様(Kさん)のご理解、ご協力のもと掲載させていただいております。

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