竹内 美土璃

老後の備えとして注目されている「任意後見契約」とは?

後見人とは?制度や種類について

認知症や外傷によって判断能力が失われてしまうと、自分で財産を管理したり、契約をしたりすることが困難になります。
このような場合に自分の代わりに財産管理をしてくれるのが後見人です。

厚生労働省は、平成22年に、全国の65歳以上の高齢者で認知症の方が439万人いると推計されると発表しました。
成年後見はますます身近な制度になっていくと予想されます。

法定後見人と任意後見人の違い

後見人には、家庭裁判所の審判で選任される「法定後見人」と、あらかじめ自分で契約しておく「任意後見人」があります。

既に本人が判断能力を失っている場合は法定後見人を選任するしかありませんが、本人に判断能力があるうちなら後見人になってもらいたい人(任意後見受任者)と任意後見契約をしておくことができます。

法定後見人は、本人が判断能力を失った後で家庭裁判所が選任するので、本人が自分で後見人になる人を決めることはできませんし、後見人にどのように後見事務をして欲しいか注文を付けることもできません。
しかし、任意後見制度を利用すれば、本人が、自分の信頼する人に後見人になってもらうことができます。
また、後見が必要になったときにどのような生活をしたいのか、どのように財産管理をして欲しいのかを任意後見受任者に伝えたり、任意後見契約に定めたりしておけば、希望に添って後見事務をしてくれることが期待できます

任意後見契約公正証書の作成方法

任意後見契約書は公正証書で作成する必要があります。
公正証書で作成しなければ、合意書面を作成しても、効力は生じないので注意が必要です。

任意後見契約の注意点

任意後見契約は、本人が判断能力を失った後に、家庭裁判所で任意後見監督人が選任されてはじめて効力が発生します。
本人が判断能力を失ったのに任意後見監督人の選任手続が取られないと、せっかく結んだ任意後見契約が無駄になってしまいます。

親族や任意後見受任者に、適時に任意後見監督人の選任の申立をしてもらえるように、親族や受任者と連絡を取り合う関係を築いておくのが大切です。

関連記事

遺留分制度の改正-事業承継・相続対策における影響とは
はじめに 2018年7月に相続法が改正されました。約40年ぶりの大きな改正です。配偶者居住権、自筆証書遺言の要件緩和、自筆証書遺言の保管制度、相続人以外の貢献の考慮が注目されましたが、遺留分のルールが大きく変わったことはあまり紹介されていません。しかし、遺留分制度の改正は事業承継・相続対策に大きな影響がありますので、今回ご紹介します。 ……
配偶者居住権-残された配偶者の居住権を保護するために
配偶者居住権とは 今回は、2018年に相続法が改正され2020年4月1日に施行された「配偶者居住権」についてご説明します。 改正相続法は、建物の所有者が死亡したときに、その建物に住んでいた配偶者を保護するために、配偶者短期居住権と配偶者居住権を新設しました。 配偶者短期居住権は、遺産分割によって建物を取得する人が決まった日か、相続……
特別寄与料とは-相続人以外でも請求が認められるケース-
はじめに 平成30年(2018年)に相続法が大改正されました。今回は、この改正によって新たに設けられた「特別寄与料」についてご紹介します。 特別寄与料とは 長男の妻など相続人以外の者が、被相続人の生前に、被相続人のために無償で献身的に介護などを行い、看護料の支払いを免れるなど相続財産の維持増加に特別の貢献をした場合であっても、今回……
「フィナシー」みんなの資産運用相談企画掲載記事のご案内
目に見えない「金融」を見える化するメディア『フィナシー』の資産運用にまつわるお悩みにプロが回答するシリーズで、読者から寄せられた老後の資金に関する悩みにプロのファイナンシャルプランナーとして竹内美土璃が相談にお答えしております。 53歳女性・「第二の人生を始めたい」節税と資産形成の基礎知識 今回の相談者は、子どもがほぼ巣立ち、自営業者と……