竹内 美土璃

本人に代わって第三者が財産を管理する制度「成年後見」とは?

成年後見の制度について

日本の平均寿命は世界第1位で、還暦を両親に祝ってもらうことも珍しくなくなりました。
一方で、厚生労働省の研究によると、65歳以上の高齢者のうち、認知症の人は推計15%、2012年時点で462万人に上るとのことです。
せっかく長生きをしても、記憶力や判断力が衰えて、自分で医療機関や介護施設と契約を結んだり、預貯金や有価証券などの財産を管理したりできなくなってしまうのではないかと思うと不安ですね。

そのようなときに、本人に代わって第三者が財産を管理する制度が「成年後見」です。

成年後見の種類について

成年後見には、法定後見と任意後見の二つがあります。

法定後見

法定後見は、本人の判断能力が不十分になった後で、親族などが家庭裁判所に申立てをして、家庭裁判所に後見人を選んでもらう制度です。
誰を後見人にするかを決めるのは裁判所で、本人が決めることはできません。

任意後見

任意後見は、本人が、自分が判断能力が無くなったときに備えて、後見人になってもらう人と公正証書で「任意後見契約書」を結びます。
本人が病気や事故で判断能力が無くなったら、家庭裁判所で後見監督人を選任してもらい、任意後見が開始します。

任意後見は、本人が、あらかじめ自分の後見人になる人を決めておくことができます。
後見事務の内容も、あらかじめ任意後見契約で決めておくことができます。
さらに、自分が判断能力が無くなった後の生活についての希望を後見人候補者に伝えておけば、後見が開始した後に、後見人が本人の希望に添って医療機関や介護施設に入所させてくれることも期待できます。

任意後見は、自分で「誰に」、「どのような」支援をしてもらうか決める制度だと言えます。

一言アドバイス

「終活」(自分の老後や死後への準備をすること)への意識が高まり、遺言や尊厳死宣言書を作成する人が増えるのと同様に、任意後見契約を結ぶ人も増えています。

任意後見契約は、判断能力があるうちにしか作成することができません
判断能力が衰えても自分らしく生きられるように、任意後見契約を結ぶことを検討されてはいかがでしょうか。

(さくら総合グループ さくら総合法律事務所 弁護士 竹内裕詞)

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