塚越 菜々子

扶養を気にせずに働いてもいい8つのパターン

  • 生活のリズムがつかめてきて、もう少し働けそう。
  • パート先も人材不足で大変そうだから勤務調整が心苦しい。
  • 勤続年数も長くなってきて時給が上がってきた。
  • 支出が増えてきて、この働き方だとお金にゆとりがない。
  • いちいち扶養を気にして働くのがめんどくさい。

でも、このまま扶養内に調整しないと損しちゃう?
そんなご質問もよくいただくようになりました。

とにかく扶養内に収めるのが賢いような風潮もありますが、本当にそうでしょうか?
実は扶養を気にせず働いてもよい人もいます。
今日は「こんな人は扶養に収めようとせず働いたほうが良い」というパターンをご紹介していきます。

【この記事のまとめ】
◆働きたくて働ける人が扶養内の働き方に制限する必要はない。
◆扶養の範囲以上にお金が必要な人は、収入を増やす必要がある。
◆働く理由がお金ではない人は、扶養にこだわらない働き方を選ぶことができる。
◆養ってくれる人がいない、あるいはいなくなる人も考慮すべき。
◆夫の収入が高い/低い場合は、税金上の扶養に影響が出ない。
◆家計の収支を合算管理している人は、税金増加よりも妻の収入増加のほうが有益である可能性がある。
◆パート先で社会保険に加入できる場合は、働くことで手厚い保証が増える。

この内容を動画で見たい方はこちらから▼
扶養の範囲を気にせず働いて良いのはこんな人! – YouTube

扶養を気にしないでいいのはどんな人?

扶養に関するルールの変更などがここ数年進んでいるので、どんな働き方をしたらいいか悩んでいる相談が多いです。

扶養というと「税制の扶養」や「社会保険の扶養」「扶養手当の扶養」などがあり、ややこしいです。自分がどうしたらいいのか判断するのが難しいことがあります。
どうしたら扶養内で得に働けるか?を考える人は多いと思いますが、この記事では逆に『扶養を気にせずに働いてもいい人』はどんな人か?について整理していきたいと思います。

1:働きたくて働ける人

働きたくて、かつ働ける人がなぜ「扶養内に収める」など、働き方を制限する必要があるのでしょうか?

扶養内ギリギリなど微妙な金額で働いてた人が扶養を外れることで、例えば年間の手取りが10万円減ったとします。でもその10万円は自分が働きたくて働くためにかかるコストと考えることもできます。欲しいものを買ったらお金は出ていきますよね。だったら働きたくて働くのに多少コストがかかってもいいのでは?

もちろんお金は重要ですが、働くことで会社や社会に貢献できる力はもっと大事なもの。
扶養内で収まる限り、働きたい気持ちや働ける力があっても、限られた金額しか働けないことはもったいないと思います。確かに一時的には扶養内でいたときより手取りが減る「働き損」の状況になるかもしれませんが、一度扶養から抜ければもう細かいことを気にせずに済みます

制限がないわけですから、人目を伺いながら休みを入れたり、困っている人を尻目にシフトを調整したり、時給が上がることが困ると思うこともなくせます。もちろん扶養内という制限を取っ払ってしまえば、手取りが増えるところまで働くのも選択できるということです。

働くことで果たせる役割があるのなら、喜んで価値を提供するのって嬉しいことですね。

2:扶養の働き方ではお金が足りない人

扶養でいるかどうかの判断は、そもそも扶養内の収入で家計が困らないかどうかから始めなくてはいけません。

もし夫の収入だけで今や将来の生活が成り立たないなら、扶養内で働いている場合ではなく、すぐに収入を増やす必要があります。お金があるから何に使うか、あるいは将来のために貯めるかを決められるのであって、そもそも足りていなければ話が始まりません。

「子育てが」「もう〇歳だから」「最近体力がね」なんて言葉も聞きますが、基本的に体力は年齢とともに落ちていきますし、子育て落ち着く時期には親の介護が始まるなど「満を持して働ける!」なんていう時期はそうそう訪れません。このまま扶養内でいて困らないか考えることが大事です。

夫の年収を上げるようとするより、自分が扶養を外れるほうが現実的じゃないですか?

3:働く理由がお金ではない人

パートで働いている人、みんながみんなお金の貯めに働いているわけではありません。私みたいに宝くじが当たってもたぶん仕事は止めないってタイプって、実は多いと思います。
自分の持っている時間や能力や経験を生かして働きたい気持ちがあるなら、扶養などの制約に縛られる必要はありません。
そういう人は誰かが決めた損得に囚われていたら窮屈だと思います。
仮に多少手取りが減ったとしても、それで得られるものってもっと多いのではないでしょうか?

損得勘定で決める人の価値観にわざわざ合わせなくてよし!

4:養ってくれる人がいない、あるいはいなくなる人

夫が自営業なのにもかかわらず、社会保険の扶養のルール(130万円の壁)を気にしている人がいます。
夫が自営業で国民健康保険や国民年金に加入している場合には、そもそも「扶養」という概念がありません。130万の壁自体がないということです。

また夫が定年などで退職する場合、妻も扶養される制度から脱退しなければなりません。特に59歳までの妻は扶養から外れることになります。そもそも扶養されることができないってことですね。
さらに、今後、離婚の可能性がある場合、離婚と同時に扶養でいられなくなります。子どもを自分が引き取って育てるなら、今度は自分が子供を扶養しなくてはいけません。自分で社会保険を用意する必要がありますね。

いつまでも扶養してもらえると考えて、自分が稼いで社会保険に加入する力を失うのはちょっと危ないかもしれません。

いつまでも扶養してくれる人がいるとは限りません。自分の人生を誰か任せすぎないこと!

5:夫の年収が高い、あるいは低い人

これは税金上の扶養の話です。

税金上の扶養(=配偶者(特別)控除)には、妻の所得だけではなく、夫側の所得にも制限があります。
夫が会社員の場合は約1200万円ぐらい(所得1,000万円)を超えてくると、例え妻が無収入であっても税金の扶養に入ることができません。妻がいくら稼いでいようとも夫の税金には影響がないので、103万や150万の壁などを気にする必要はなくなります。

逆に夫の所得が低くそもそも税金を払っていないような場合は妻を扶養に入れたところで税金には影響が出ないこともあります。
所得自体は低くなくても、住宅ローン控除などの控除が大きい場合なども同様です。
個人事業主などは売上が多くても経費も多く、所得が少ないなどもあります。お互いに所得や税金などをよく確認したいところです。

扶養を外れると税金が爆増するって言うけど、ほとんどの場合は勘違い!

6:家計の収支を合算管理している人

こちらも税金上の扶養の話です。
妻が税制上の扶養から外れると夫の税金が増えるケースがありますが、税金が増えたとしてもトータルで考えると妻が稼いできた金額の方が多いことがほとんどです。

妻の収入が103万円を超えると配偶者控除は受けられなくなりますが、配偶者特別控除として150万までは夫の税金は増えません。妻が103万円を超えて130万円稼ぐと家計の収入は27万円増。夫の税金は全く増えません。

妻の収入が150万→160万に増えると収入は10万増。夫の年収が700万だとしても増える税金は1.6万円程度です。
家計全体で収支を管理している場合はトータルで増えるほうが良いわけですから、税制の扶養にこだわる必要性は低いです。

ただし、妻の所得によっては各種所得制限に影響があったり、社会保険の扶養とはまた別であることには注意が必要です。

オレの金!にこだわる場合は、夫婦でよく話し合いをしましょう。夫婦と言えど言うなりになる必要はありませんよ。

7:パート先で自分が社会保険に入れる人

パート先に106万の壁(週20時間・月8・8万円など)があって、社会保険に加入できる条件がそこまでハードルが高くない場合は、扶養にこだわりすぎず、自分が社会保険に加入するほうが長期的にはメリットが大きくなります。

働く時間を全く増やさずに社会保険料を払うと一時的に手取りは減るかもしれませんが、その代わり公的な保障(傷病手当金・障害年金や遺族年金の上乗せ)、老後の年金が増えるなどのメリットがあります。

働く時間を少し増やしたり、最低賃金や自分の時給が上がったときには気にせず手取りを増やしていくこともできます。
将来の安定を考えるなら、扶養内に収まることにこだわりすぎず社会保険に加入する選択がおすすめです。

正規雇用でないと社会保険に入るのが難しかった時代とは大違い!パートタイムであっても収入に応じて、正規雇用と同じ保障が得られるのは大きいです。

8:手厚い保障や老後の年金を増やしたい人

社会保険の扶養は「保険料を払わずに健康保険と年金に加入できてお得~」と思うかもしれませんが、実際には扶養内の人が得られるのはかなり手薄な保障です。
自分が健康で、養ってくれるいる人がいるからぎりぎりで成り立っているだけとも言えます。ただし、様々な理由で働けない人がいるので、それらの方を全くの保障なしに放り出すことの無いように最低限を確保しているだけです。

以前、メルマガ読者の方のお姉さまがご病気になり、働きたいのに働けなくなってしまったのを目の当たりにして「若いころは自分が病気で休むなんて考えたことはなかったけれど、年齢が上がるとそういうリスクもある。安心して働ける状況は自分で作っていかないといけないと思った」と扶養を外れて社会保険に加入して働くことにしたと教えてくれたことがありました。

働く必要のある人ほど、自分の収入に公的な保障があるというのは安心感が大きくなりますね。

社会保険料は「ただ取られる」ものではなく、支払いに応じた保障を得ることができます。

女性でも働ける機会が圧倒的に増え、かつ男性ならずっと所得を上げながら働き続けることができるわけではない現代においては「扶養内に収まるのはお得ではない」と思っておくほうが、選択を誤りにくいと思います。

本当に大事にしたいのはなに?

「扶養を外れたからといって社会保険に加入できるわけではない」というのは現状の問題として残っているのは事実です。(130万円以上稼いで扶養を外れても、パート先で社会保険に入れなければ国民健康保険・国民年金への加入が必要)

ですが、パート先でそれほどハードルが高くなく社会保険に加入できるのだったら、扶養内にこだわる必要はあまりないかもしれません。

働く力があって働きたいと思っている人が、たかだか103万円とか130万円程度の働きに抑えておくのは本当にもったいないことだと思います。

この先最低賃金や物価が上がっていけば、扶養内にこだわるほど生活の質は下がっていってしまうかもしれません。
今の損得にこだわって、元気に働ける機会を失ってしまうよりは働けるときにいていくほうが経済的な安定感は増していくはずです。

もちろんどんな働き方を選ぶかは個々の自由ですし、事情があって働けない人はこれからも守るべきだと思っています。
ただ、あまりにも「扶養内でうまく働くのが得」のような情報が多すぎて、窮屈感を感じているのなら、あんまりこだわりすぎずに思い切って働いてしまったほうが自分のためにも社会のためにもなるかもしれません。

いま目の前のお金だけではなく働き方・生き方について考えるきっかけにしてみてください

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