塚越 菜々子

ドル建て終身保険で増やすことを勧められたが注意点は?

教育費や老後にかかるお金が気になって相談したところ、「米ドル建て終身保険」を勧められました。いいような気がするけど本当に我が家に合っていますか?という相談をよくいただきます。

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確定拠出年金ねっと認定CFPの塚越菜々子(つかごしななこ)です。

 

ご相談いただくときに、商品がわかっている場合はまだいいのですが「なんかドルでやる何かの保険」という表現で聞かれることもあります(笑)
米ドルにかかわらず、近年提案されることが多い「外貨建ての終身保険」の注意点について考えてみましょう。

そもそもドル建て終身保険ってなに?

終身保険というのは「死んだら〇〇万円出る」という死亡保険です。「終身」というのは契約が死ぬまで続くということ。つまり、解約しない限りはいつ死んでも、その〇〇万円はもらえますよっていうことです。

これに対して期間が決まっている(10年とか20年とか)保険を「定期保険」といいます。

期間限定の定期保険は掛け捨てで保険料も安いですが、終身保険は保険の中にお金が積み立てられていて解約するとお金が戻ってきます。この戻ってくるお金のことを「解約 返戻金(かいやく へんれいきん)」といいます。解約返戻金がある保険は、掛け捨ての保険に比べると保険料は高いです。(だって解約したらお金返してもらえんるんだから)

ですので、終身保険というのは「遺された人のための保障」以外に『保険の中にお金を貯めるため』として使われることもあります。

そして普通の終身保険は日本円で払って日本円でもらいます。これをあえて、ドルで行うのが「ドル建て終身保険」です。
(米ドル以外にもオーストラリアドルのように 別の通貨のもあります)
なぜわざわざ日本円ではなくドルかというと、日本は低金利時代なんですね。なので、ドルですることで保険会社がドルで運用(アメリカ国債とか)でき、その分利率が高いからなのです。

これが「ドル建て終身保険」の基本です。

 

ドル「では」損しないけれど・・・・の罠

上記に書いた通り、ドル建てにすると円建てより利率が良くなることが多いです。

例えば日本円で100万円→105万円になるところ(105%)ドルだと100ドル→110ドルになるとしたら、確かに増えていますよね(110%)間違いなく損はしていません。

では100ドルかけたときは1ドル=100円だった場合「10,000円」
110ドルになったときに1ドル=80円だった場合「8,800円」

どうですか?減っていますよね。ドルでは110%ですが日本円でみると88%つまりー12%です。
日本で暮らしている限りは基本的には円で使いますので、換金・・・つまり為替の影響を受けてしまうということです。

『増える』と言われた場合は、日本円でもそうなのか、ということをしっかり認識しておきたいですね。

 

加入の目的は保険ですか?貯金ですか?増やすことですか?

ここで考えていただきたいのは「何を目的に加入するしようとしているか」です。

万が一自分に何かあった場合、残された遺族に対してお金を残すため、いわゆる「保険の機能」が目的で加入して、それをあえて掛け捨てではない終身保険を選んでいるのでしょうか。それともただ単に、強制的に口座から引き落として貯めていくため?はたまた「定期預金では増えないから増やそう」として運用のつもりで検討していますか?

万が一の保険だったら掛け捨ての保険ではだめですか?掛け金は1/3程度で済むことがほとんどです。また、保険の機能はいつまで必要ですか?貯まったお金を何かに使うために全部解約してしまったら保険の機能も消えてしまいます。

増やすためだったら、保険が一番適した方法ですか?25年間で20%ぐらいしか増えないのだとしたら、年率1%以下。ほとんど増える機能はついていないと思った方がいいですね。

保険と貯金・運用は全く異なるものです貯金や運用をあえて保険で行う必要があるかどうかはしっかり検討してただきたいと思います。

 

払込期間や元本割れする期間も重要

一概に「ドル建て終身保険」といっても、一般的な保険のように長い期間ずっと払っていくもの以外に「10年で払い込み」というように短期間で保険料を払い、あとは据え置いて増やしていくパターンもあります。

保険は基本的には払い込みをしている間に解約をしてしまうと確実に元本割れするものばかり。
まずはドルベースで最低いつまで解約しなければ元本割れしないかを確認するのがスタートです。元本割れする期間は実質引き出すことができないので(損してしまうから)その固定される期間に対しての増え率が見合っているかチェックしたいところです。

さらにそれに為替を加味して、「日本円でも」損しないのはどんな時なのかを自分自身が把握できなければいけません。

 

「我が家に」適しているかどうかのチェック手順

外貨建ての終身保険が一概に悪いわけではなく、自分の家に適しているかどうかが重要です。どのおうちに合うものでもないし、だれにとっても良くないものでもないはずです。

このあたりのチェックをしてみてください。

1:保険の機能を求めているのか
→まず必要な保険の金額(保障の額)は割り出すところから
→その保険はいつまで(何歳まで)必要なのか

2:元本割れする期間(実質下ろせない期間)はどれくらいか
→その期間が増え率に見合っているか

3:増やしたいならほかの方法は検討したか
→老後資金ならiDeCo
→15年以上使う予定がないならつみたてNISAも

4:為替がどう動いたら得したり損するのか理解できているか
→解約の予定時期に為替が悪かったら据え置ける状況か
→両替手数料やその他の資産の状況も理解できているか

慌てて解約することの無いようにしましょう

4つのチェックはいかがでしたか?よくわからない・自信がないと感じたかもしれません。

こうやって書くと外貨建ての保険は良くないととらえられてしまうかもしれませんが、もちろんそんなことはありません。
重要なのは「自分のニーズに合っていること」「自分が理解していること」です。

外貨建てはよくないからといって、慌てて解約する必要があるかもしっかり考えたいところです。すでに加入しているものをわざわざ損をしてまで解約しなくていいかもしれません。

ちなみに、私自信も米ドル建ての保険を一本契約しています。かなり昔に契約したものです。今だったら新規に契約はしませんが、解約しようとは思っていません。それほど内容が悪くないことや、支払う保険料に困っているわけではないこと、保険としての役割も期待していることからそのままにしています。

一人で悩むのは不安だし、とはいえ保険屋さんに聞きにくい。

そういうときこそ、どこにも属さない独立系のFPを使うタイミングです。

相談料を払うのがもったいないからと、モヤモヤしたまま契約し続けるのは残念ですし、あとからこの保険はやめておけばよかった・・!と思っても、元本割れが大きくて手を引きにくいのが保険。「高いな~ほんとにこれでいいのかな~」と思うのではなく、どうせ入るのなら気持ちよく保険料が払えるだけ納得してからの方が、より有益ではないでしょうか?

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