塚越 菜々子

転勤したら住宅ローン控除は使えなくなる?【転勤とお金シリーズ2】

転勤になったら住宅ローン控除はできなくなりますか?

意を決してマイホームを買ったのに、まさかの転勤!?どうなる・どうする住宅ローン!

転勤になったら住宅ローン控除はできなくなりますか?

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確定拠出年金相談ねっと認定CFPの塚越菜々子(つかごしななこ)です。

実は税理士事務所に10年超勤務。税金が得意分野のFPだったりします(^^)

転勤とお金シリーズと題して、転勤にまつわる税金や年金制度について解説しています。

住宅ローン控除の基本

住宅ローン控除は、住宅ローンを組んでマイホームを購入した場合、ローンの残高等に応じて税金の負担を減らしてもらうことができる制度です。

住宅ローンの金額には上限がありますが、マイホーム購入の年から10年間、年末のローンの残高の1%が所得税や住民税から差し引かれます。(ローンを組んだ時期や住宅の性能によっては10年ではなく15年だったり、1%ではない場合もあります)

また、2019年の税制改正では消費税の増税に合わせて、+3年ローン控除が伸びることになっています
(11年目~13年目は、単純に残高の1%ではないので注意が必要です)

住宅ローン控除を受けるにはいくつかのルールがありますが、その中でも特に大事なの

「その家に実際に自分や家族が住んでいること」

です。
いくつも家を買って(例えば投資用不動産のように)ローンを組んで税金を安くしまくることは認められていないのですね。

あくまで“自分が住むマイホームを買う人”用の有利な制度なのです。

というわけで、転勤などで住まない場合は本来税金を安くしてもらうことはできませんが、色々な条件により使えるケースもあります。
それぞれ確認してみましょう。

 

単身赴任の場合:国内転勤

住宅ローンを受けている人が単身赴任で引っ越し、家族はそのまま住み続ける場合は引き続き住宅ローン控除を受けることができます。

 

(1) 単身赴任等の場合
 家屋の所有者が、転勤、転地療養その他のやむを得ない事情により、配偶者、扶養親族その他生計を一にする親族と日常の起居を共にしない場合において、その住宅の取得等の日から6か月以内にその家屋にこれらの親族が入居し、その後も引き続き居住しており、当該やむを得ない事情が解消した後はその家屋の所有者が共にその家屋に居住することと認められるときは、その家屋の所有者が入居し、その後もその家屋の所有者が引き続き居住しているものとして取り扱われ、この特別控除等の適用を受けることができます。

(国税庁)

こうやって書かれるとややこしいですが、簡単に言うと、『家族が住み続けていて、転勤が終わったら戻ってくる予定ならそのままローン控除を受けていていいよ』というルールです。

 

単身赴任の場合:海外転勤

海外転勤(「非居住者」と呼ばれる状態になる)場合は、住宅ローン控除の適用がありませんでしたが、平成28年の税制改正により一部ルールが変わりました。
平成28年4月1日以降に住宅の取得等をした場合は、海外単身赴任であっても住宅ローン控除が受けられます。

ただし、住宅ローン控除は日本の所得税や住民税から差し引いてもらうものですので、海外赴任先の国でのみ税金を納めていて、日本に税金を納めていない場合は使うことができません。

 

家族も一緒に引っ越す場合:国外&海外どちらも

家族も一緒に転勤に帯同してその家には住まなくなる場合は、住んでいない期間は住宅ローン控除を期間は受けることができません。

引っ越す『前』に手続きをしておけば、戻ってきてからは再度住宅ローン控除を受けることができます。

 

ただしローン控除が受けられる期間が(例えば)10年間と決まっていたら、その年数が経ってしまっていたら住宅ローン控除はおしまいです。転勤している間は10年のカウントがストップするわけではないことに注意しましょう。

例:住宅ローン控除の期間が10年の場合

2年間:住む(住宅ローン控除を2年受ける)=残りの期間8年

5年間:家族全員転勤(この期間は住宅ローン控除は受けられない)=残りの期間3年

再び住む(住宅ローン控除が受けられるのは残り3年

このように、残存期間がある場合だけ戻った後も住宅ローン控除が使えます。2年しか使っていないからといって、残り8年使えるわけではないのですね。

 

(2) 住宅借入金等特別控除等の適用を受けていた者が、家族と共にその家屋を居住の用に供しなくなった場合(再び居住の用に供した場合の再適用)
 その者が居住の用に供しなくなった日の属する年以降、住宅借入金等特別控除等の適用は受けられませんが、次の全ての要件を満たす場合は、その家屋を再び居住の用に供した日の属する年(その年において、その家屋を賃貸の用に供していた場合には、その年の翌年)以後、残存控除期間につき、この特別控除の再適用を受けることができます。

(国税庁)

引っ越し「前」「戻ってきて再度住宅ローン控除を再開」するときに、税務署に対して手続きが必要になりますので、引っ越し前後のバタバタで忘れないようにしましょう。

番外編:転勤中にマイホームを賃貸にする場合

ここからは、「住宅ローン控除」の税金の話ではなく、銀行などから借りている「ローン」の注意点です。

住宅ローンは、その名の通り自分たちが住むためのお家を立てるお金を貸してくれるものです。マイホーム取得用の借金なので、金利もかなり安く抑えられています。当然、賃貸に出して家賃をもらうためのお家用には住宅ローンは貸してくれません。
ということは、自分たちが住むためといって借りたのに、賃貸に出してしまうとルール違反になる可能性があります。

住宅ローン用ではない、賃貸に出すための家のローン(アパートローンなど)と同じ利息になってしまったり、最悪の場合「一括で返して!」と言われてしまう可能性もあります。(実際のところそうなったケースは私は今のところ聞いたことがありませんが・・・)
銀行によって対応は違ってきますが、このように書いてある銀行もあります。

転勤などで一時的にご自宅に住めなくなったときは
転勤、長期出張、その他の生活状況の変化によるやむを得ない理由により、一時的に融資住宅に居住できない方については、お取引店窓口へ住所変更届をお出しください。また、融資住宅に戻られた折は、再度住所変更届をお出しください。
(住所変更届をお出しいただく場合は、変更がわかる書類【住民票など】が必要です)
万一、無断で融資住宅を他人に賃貸・譲渡されますと当行とお客さまとの間で取り交わした契約に違反することになり、お借入金を全額ご返済いただく場合がございますのでご注意ください。

(池田泉州銀行)

これから購入する・すでにローンを支払っているけれど一家で引っ越す予定がある場合などは、あらかじめ確認しておくと安心ですね。

 

転勤は単身赴任にしても一緒についていくにしてもお金の流れが大きく変わります。時期が予測できないならなおさら、今の家計がしっかりしている状態にしておきたいですね。
「ナイショで賃貸に出したらバレるんですか」というご質問にはお答えできませんが(笑)どんなパターンがあるかなど、一緒にシミュレーションするお手伝いもしていますよ。

 

【参考】
国税庁:No.1234 転勤と住宅借入金等特別控除等
www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1234.htm

泉州池田銀行:住宅ローンをご利用のお客様へ
www.sihd-bk.jp/kojin/kariru/guide/10.html