塚越 菜々子

海外転勤!確定拠出年金DC(企業型)iDeCo(個人型)はどうなる・どうする!?【転勤とお金シリーズ3】

憧れてはいたけれどとうとう来た!海外転勤!そういえば、DCやiDeCoはどうなる!?

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確定拠出年金相談ねっと認定CFPの塚越菜々子(つかごしななこ)です。

転勤とお金シリーズと題して、転勤にまつわる税金や年金制度について解説しています。
シリーズの3回目『確定拠出年金DC・iDeCo(イデコ)と海外転勤』のお話です。

シリーズ1:海外転勤・赴任があってもNISAが継続利用できるようになります!(2019年税制改正)

シリーズ2:転勤したら住宅ローン控除は使えなくなる?

自分が入っている確定拠出年金は「企業型DC」?それとも「個人型iDeCo」?

確定拠出年金は企業型(DC)と個人型(iDeCo)があります。

海外転勤の場合の取り扱いがそれぞれちょっと違っていますので、一つずつ解説しますね。

まずは自分が企業型のDCなのか、個人型のiDeCoなのかを確認しておきましょう。
個人型に気づかぬうちに入っていたということはまずありませんが、企業型はよくわからないままなんとなく会社の制度として入っている、という場合も少なくないようです。
自分で積み立てているにしろ、会社が積んでくれているにしろ自分の財産ですのでしっかりと認識しておいてください。

そもそも海外勤務の場合の社会保険はどうなる?

確定拠出年金は年金制度の上乗せ部分でもあるので、社会保険との関係を切っても切り離せません。
海外で働くことになったときは、原則として相手の国の社会保障制度に加入する必要がありますが、保険料の二重払いや掛け捨てを防止するために、社会保障協定を結んでいる国があります。

(ドイツ イギリス 韓国 アメリカ ベルギー フランス カナダ オーストラリア オランダ チェコ スペイン アイルランド ブラジル スイス ハンガリー インド ルクセンブルク フィリピン)など

参考:社会保障協定(日本年金機構)

社会保障協定を結んでいる国への転勤

協定を結んでいる国で5年以内の海外勤務の場合は、一時的な派遣として日本の社会保障制度にそのまま入り続けることができます。

5年を超えてしまった場合、延長できる国もありますが、原則として日本の社会保険制度から外れて、現地の社会保障制度に加入することになります。

社会保障協定がない国への転勤

協定がない国への転勤の場合は、転勤した国の社会保険制度に加入し、かつ日本の会社で働き続けていれば日本の会社の社会保険にも入り続けることになります(二重に加入)

ここでのポイントは「日本の会社に雇われ続けるのか(雇用主がどこになるのか)」「転勤先の国とは社会保障協定を結んでいるか」となります。

企業型確定拠出年金(DC)の加入者が海外転勤した場合

では、企業型確定拠出年金(DC)はどうなるでしょうか。
企業型確定拠出年金は、社会保険制度とセットだと考えていただくとわかりやすいと思います。

転勤先の国の社会保険に二重加入していたとしても、日本の社会保険制度に加入し続けている限り、企業型確定拠出年金は継続することができます。

ただし、5年以上の勤務になり転勤先の国の社会保険のみに加入することになった場合、そもそも雇い主が日本の会社ではなくなった場合(日本の社会保険から脱退した場合)などは継続できなくなります

継続できなくなった場合は新たに積み立てていくことはできませんが、すでに入れてあるお金をどうするか決めて運用などをし続ける「運用指図者」になることができます。
(加入していた年数が短かったり、資産が少額の場合など一定の条件を満たす人だけは脱退一時金を受け取ることができる場合もあります←今はかなり珍しいケースです)

個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入者が海外転勤した場合

会社の制度ではなく、自分でiDeCoに加入しているケースはどうなるでしょうか。

まずは、iDeCoができる人はどんな人か見てみましょう。

日本国内に居住している20歳以上60歳未満の方で・・・・』

このように書かれています。
ということは、海外転勤で日本に住まなくなった人には加入資格がないことになりますね。

加入していた人が、外れることを「資格喪失」といいます。正確にはこのように書かれています。

資格喪失の条件
加入者の方が次のいずれかに該当したとき
(1)企業型確定拠出年金を実施している企業に就職(転職)し、企業型確定拠出年金の加入者等になったとき。
※企業型年金規約で個人型同時加入を認めている場合は除きます。
(2)農業者年金の被保険者になったとき
(3)国民年金の保険料の納付を本人申請により免除されたとき
(国民年金保険料免除該当・不該当届を提出する場合を除く)
(4)日本国内の住所を有しなくなったとき
(5)(4)以外の理由により国民年金の被保険者でなくなったとき

参考: www.ideco-koushiki.jp/library/

海外転勤で「(4)の日本国内の住所を有しなくなった」場合、本来iDeCoの加入資格は失います。

日本国内の住所を有しなくなった・・・なんともわかりにくい表現ですが、要は住民票を抜く(国外転出・海外転出)などをする場合は国内に住所がなくなったことになりますね。

ただし、iDeCoの場合は年金の種類が「1号なのか」「2号なのか」「3号なのか」によって取り扱いが変わります。

厚生年金加入者(2号)の場合

会社で厚生年金に加入してる「2号被保険者」の場合は、企業型のDCと同じくそのまま加入し続けることができます。

ただし、住民票を海外転出するなどして、住所がなくなってしまいその家に誰もいなくなってしまう場合、大事な書類等の郵便物などが届かなくなってしまうので、金融機関にはあらかじめ連絡が必要です。郵便物の送り先を例えば実家にしておく必要があるので(住民票との住所が異なるので金融機関に連絡してくださいね)十分に注意しましょう。

また、企業型のDCと同じく、海外赴任中に日本の厚生年金から外れてしまうと加入の資格を失います。

扶養内(3号)の場合

サラリーマン(2号)の夫の扶養に入っている場合は、3号に該当します。夫が転勤しても、3号でいられるうち(夫が厚生年金に加入したまま)ならiDeCoの継続は可能です。夫が厚生年金で無くなる場合は、自分も3号ではなくなるので、iDeCoの加入資格を失うことになります。

自営業等(1号)の場合

日本に住所がなくなると、国民年金の加入義務はなくなります。

もともと厚生年金加入ではなく、国民年金のみ(1号)だった場合は、住民票を海外転出させると国民年金を払う必要がなくなります。任意加入といってあえて入り続けることはできますが、任意加入者はiDeCoができませんので、1号の場合は海外へ転出するとiDeCoの加入資格がなくなります
新規に積み立てることができなくなるということです。

2022年5月~iDeCoの制度のルール改正により、任意加入をしている場合はiDeCoに継続して加入できるように変わりました。

任意加入を選択せず、iDeCoの加入資格を失った場合は、一定の手続きを行ったうえで「運用指図者」になります。これ以上お金を入れることはできないけれど、入れてある分の運用を続けることができます。
日本に戻ってきてから、再度加入手続きをすることで再び掛金を拠出できるようになります。(国民年金も強制加入に戻ります)

コールセンターへの問い合わせではしっかり確認を

iDeCoの加入者拡大に伴って、どこの金融機関もほとんどコールセンターがありますが、実は必ずしも正しい答えが返ってくるわけではないことがあります。

この件に関しては、国民年金基金連合会並びに複数の金融機関に確認を取っていますが、一度で回答が返ってきたところばかりではありませんでした。金融機関によっても回答にばらつきがみられました。

問い合わせて、もし「あれ?」と思うようなことがあったら、そんなものなのかな・・・と思わずに、しっかりと確認を取ってくださいね。

海外への転勤は期間が長くなると、税金や年金制度に大きな影響を及ぼします。
ただでさえあわただしい転勤で面倒くさいと感じることもあるかもしれませんが、自分の大事な資産を守るためにしっかり手続きしたいですね。