青山 創星

iDeCoやつみたてNISAの分散投資ってどやったらいいのでしょうか?(7)

前回は無リスク金利についてお話ししました。

今回は、証券市場線の傾きであるシャープレシオについてもう少し深めていきたいと思います。

赤い線と青い線で囲まれた領域内がさまざまな相関係数と資産A、資産Bへの投資の割合とを変えたポートフォリオの取りうるリスクとリターンを示しています。

同じリスクでも高いリターンが得られる方がいいポートフォリオだとすると、証券市場線の傾きが最も急峻なものがよいということになります。

すると、この図の②が選べるポートフォリオの中で最もよいものということになります。
この②のポートフォリオは効率的フロンティアと証券市場線の接する点のポートフォリオで、接点ポートフォリオと呼ばれています。
この接点ポートフォリオがマーケットポートフォリオと呼ばれています。

そして、リスク0、無リスク金利のポイントと接点ポートフォリオを結ぶ線は特別に、資本市場線と呼ばれています。
ポートフォリオを作るための理論として、最も古く最も広く知られているものがCAPM(キャップエム、Capital Asset Pricing Model 資本資産価格モデル)と呼ばれるものです。

CAPMでは、資本市場線の上にあるポートフォリオが最も効率的なポートフォリオなのでそれに投資すべし、とされています。

この考え方に従うと、ベストなポートフォリオはマーケットポートフォリオなので、負担するリスクを調整するためには、ポートフォリオの中の資産の割合を調整するのではなく、マーケットポートフォリオと無リスク資産の割合を調整するということになります。

アメリカの経済学者であるジェームス・トービンが提唱した分離定理というのはまさにここでご説明した方法で自分に合った投資をすればよいというものです。

この考え方に従うと、どんな人も持つべきポートフォリオはマーケットポートフォリオというもの一つということになります。

マーケットポートフォリオというのは、具体的にはどんなものなのでしょうか?

これは、市場に存在する全てのリスク資産に、市場全体の資産の構成比率に合わせて投資するポートフォリオのことを言います。

国内外の株や債券や商品などにそれらの時価総額の比率に応じた投資をするポートフォリオが必要となります。

日本の株式市場であればTOPIXに連動する投資信託、外国の株式市場であればMSCI ACWIに連動する投資信託、等々に投資するポートフォリオを作ることになります。

マーケットポートフォリオを作るのはなかなか難しいのですが、世界の株価やS&P500(アメリカの主要株式500銘柄の平均株価のようなもの)に連動する投資信託をこれとみなしたうえで、これ1本に投資して、これとキャッシュ(現金や預金等)の比率を変えることによって自分の資産のリスクをコントロールしていくというやり方もあるでしょう。

ウォーレンバフェットが、自分の家族に遺す遺産の資産運用は10%の政府短期債と90%のS&P500連動のETFで運用するよう指示したと言っているのはまさにこのような投資法といえます。

しかし、マーケットポートフォリオを使う方法には欠点もあります。

一つは、世界中に存在する全てのリスク資産に投資するポートフォリオを作るのは難しいという点です。

もう一つは、ポートフォリオのリスクとリターンは固定されてしまうので、それ以上のリスクを取りながらより高いリターンを狙うことができないという点です。

今回は、証券市場線の傾きであるシャープレシオについてとそれの最も高くなるポートフォリオであるマーケットポートフォリオについてお話ししました。
新しい言葉がたくさん出てきたので頭がこんがらがったかもしれません。

次回はリスクの意味についてお話ししたいと思います。

お楽しみに。