こんにちは、確定拠出年金相談ねっと 認定FP
アイマーク株式会社 代表の村松です。
2022年4月より年金制度改正法によって、私たちの年金制度が大きく変わります。内容を見てみると、長期化する高齢期を今回の年金法改正で補ってほしいという意図が見て取れます。
一見、これまでの年金制度の問題点が改善したように見える改正ですが、必ずしもそうは言えないようです。2022年4月から実施される年金制度改正法の主な内容について解説します。
2022年4月度の年金制度改正法の主旨
2022年4月より現行の年金制度が大きく変わります。今回紹介するのは主に次の4つです。
・75歳まで繰下げ支給が可能
・在職老齢年金の見直し
・確定拠出年金の加入要件緩和
・厚生年金保険・健康保険の適用範囲拡大
平均寿命が延び続けることで、長期化する傾向にある高齢期を、今回の年金改正法を上手に使って補ってほしい。そうした国の主旨が、今回の年金制度改正法の改正から見て取れます。
改正その1:75歳まで繰下げ支給が可能【2022年4月から】
これまでは繰上げ支給なら60歳から、繰下げ支給は70歳まで年金の支給を遅らせることができました。
年金を前倒しで受け取る繰上げ支給を利用すると1ヶ月あたり0.5%年金額が減少し、最大5年間前倒しで受け取れますが、30%減額となります。
しかし2022年4月以降は繰上げ支給の減額率は1ヶ月あたり0.4%になり、最大の減額幅は24%です。
一方、年金の受け取りを遅らせる繰下げ支給なら1ヶ月あたり0.7%年金額が増額し、最大5年間年金の受け取りを遅らせると最大で42%で増額となります。
さらに、2022年4月以降、繰下げ支給は75歳まで可能で、最大の増額幅は84%。ただし、75歳までの繰り下げは、健康寿命などを考えるとあまり現実的ではない可能性があり、ほとんど受け取れない可能性もある点には注意が必要です。
また、年金受取の時効が5年となっている現在では、70歳までの繰下げは、死亡時に本来受け取れる年金の総額の未支給年金が遺族に支払われますが、時効を超えた繰下げをした場合、死亡すると遺族が受け取れる未支給年金は時効にかかった分が減額されてしまいます。このあたりも早急な制度改正が必要になるはずです。
改正その2:在職老齢年金の見直し【2022年4月から】
働きながら受け取る年金のことを在職老齢年金といいますが、60~64歳の在職老齢年金が見直されます。これは、年金の繰下げ支給を広めようという意図が垣間見える制度ですが、この制度改正は、現在特別支給の老齢厚生年金を受け取っているごく少数の方にしかメリットがありません。
本来65歳から受け取ることになる、現役世代が老後を働きながら、年金を繰下げてもいいかと思えるような、本格的な制度改正が必要になるはずです。
改正その3:確定拠出年金がより加入しやすくなる
確定拠出年金企業型、iDeCoのいずれも加入可能年齢要件が緩和されます。より運用期間や受け取り開始時期が延びるため、運用期間を長く確保できて、資産をさらに増やせる可能性が高まります。
改正その4:厚生年金保険、健康保険の適用範囲拡大【2022年10月から】
パートやアルバイトなどの短期労働者に厚生年金や健康保険の加入が義務付けられているのは、現状は常時500人超を雇用する事業所などの要件が定められていますが、範囲が拡大されます。
これからは、さほど大きくない企業で働いていても、パートやアルバイトの短期労働者は、厚生年金、健康保険の加入が必要になります。つまり、これまで同じ時間、同じ時給で働いていたとしても、厚生年金料や健康保険料の負担が発生し、手取りが減少する人が現れるということです。
ただし、厚生年金に加入をしていれば、将来的に年金額が増額する可能性はあるので、長い目で見ればプラスになる可能性はあります。
まとめ
今回実施される年金制度改正によって、65歳以上の方も働きやすい環境が整います。また、年金支給年齢を繰下げて、年金額を増やすことも可能です。
一見改善のようにみえますが、実際に70歳、75歳まで果たして元気で働けるでしょうか?また、75歳まで年金の受け取り時期を遅らせても、75歳までの生活費はどうなるのでしょうか?
そもそも国の年金財政はひっ迫しているため、大きく改善することは考えにくいでしょう。これらの改正はあくまでも老後の選択肢の一つであり、現役時代のうちにしっかり運用で老後の生活資金を備え、老後は労働収入に過度に頼ることがないようなライフプランを立てておくべきです。