村松 繁

 早いほど有利!急な事業承継でトラブルを避けるには?

こんにちは、確定拠出年金相談ねっと 認定FP

アイマーク株式会社 代表の村松です。

社長の平均年齢は毎年上昇しており、残された従業員の雇用や、会社の技術を守るという意味でも、事業承継は中小企業の社長にとって重要な問題です。

また、社長自身に万が一のことが起こった場合も考えておく必要があるでしょう。この記事では、急な事業承継が発生した場合に想定できるトラブル事例と、生命保険を使った対策について紹介します。事業継承とは

会社の事業を権利や財産とともに後継者に引き継ぐことを事業継承といいます。似ている言葉に事業承継がありますが、事業承継は文化的・精神的なものも全て引き継ぐことを表すため、若干ニュアンスが異なります。

事業承継とは

社長年齢は上昇し、後継者問題は深刻化しています。東京商工リサーチの統計によると、社長の平均年齢は毎年上昇傾向です。また、高齢の社長ほど業績悪化が鮮明という統計もあります。

日本は99.7%が中小企業、そして中小企業の従業員は68.8%(3220万人)です。従業員の雇用を守るという意味でも、社長の事業承継は待ったなしの状況になっているのです。

引用元:東京商工リサーチ|全国社長の年齢調査(2019年12月31日時点) 

急に事業承継が発生したらトラブルだらけ?

事業承継をする時期は必ずやってきます。後継者を見つけて引き継ぐ準備をしておくことも大切ですが、社長に万が一のことが起こる場合もあるでしょう。

事業承継の準備をしておかず、社長に万が一のことがあったときのトラブル事例を紹介します。

急な事業承継で、資金が枯渇してしまった

事業承継の準備が整わないうちに社長が突然亡くなり、十分な経営能力がないまま後継者が会社を引き継いでしまうと、売上が激減してしまう可能性があります。また、売上減少に伴い、従業員の給与の支払いなどが滞るかも知れません。

さらに、事業承継がうまく行かず、事業の不振を察知した取引先が支払いを急に迫ってきたり、金融機関が貸付金の返済を求めてきたりすることも考えられます。事業承継を意識したら万が一の事が起きて運転資金が枯渇しないよう、早めに備えておくことが大切です。

経営者保証が相続されてしまう

中小企業の社長は、金融機関から融資を受ける際に社長本人が会社の連帯保証人になることがあります。会社の返済が滞った場合は、社長個人の財産を処分して返済に充てなければなりません。

これを経営者保証といいますが、経営者保証を設定している社長に万が一のことがあると、後継者は経営者保証も引き継がなければなりません。

自分に万が一のことがあった場合には、経営者保証やその他の債務を残さないようにすることが大切です。

自社株をめぐるトラブル

中小企業の相続財産は自社株など流動性の低いものが多い傾向にあります。仮に相続が発生して後継者以外に自社株が分散してしまうと、後継者は思ったような経営ができなくなってしまいます。

そのため、社長に万が一の事があった場合に、分散してしまった自社株を後継者が買い戻すための資金や、万が一のことがあった場合の相続税の納税資金なども用意しておかなければなりません。

生命保険をつかって解決できること

急な事業承継によって考えられるトラブルは、生命保険を活用すれば、多くのケースで解決が可能です。生命保険をつかった事業承継問題解決方法を紹介します。

生命保険金を使うと株式を買取資金に充当できる

受取人を法人とする生命保険に加入をすることで、社長に万が一の事があった場合は、法人が保険金受取人となり、後継者から自社株を買い取ることで納税資金や債務の返済、従業員の給与などに充てることができます。

保険金受取人を指定できる

先にも述べましたが中小企業の相続財産は不動産や自社株など流動性の低いものが多い傾向にあります。生命保険は、万が一のことがあったときには、保険金受取人を設定できる点が特徴です。

仮に、自社株しか相続財産がなく自社株は全て後継者に渡したい場合、保険金受取人も後継者としておけば、社長に万が一のことがあった場合に生命保険金が後継者に渡ります。

その生命保険金を原資に、代償金を他の同族人に支払うことで相続トラブルを回避できます。さらに遺産分割協議書に生命保険金を記載する必要はありません。

中小企業は自社が繁栄するために、日々活動をしていますが、活動をすればするほど自社株評価が上昇してしまい、後継者に多額の相続税がかかってしまいます。

業績を下げるなどで自社株評価を下げることもできますが、相続対策で自社株評価を下げるために業績を落とすようなことは本末転倒です。生命保険なら、比較的少ない掛金で大きな生命保険金を用意できるので、自社株評価を維持して買い取り資金を用意することができます。

まとめ

事業承継資金として生命保険は活用できますが、生命保険が活用できるのは万が一のことがあった場合です。万が一の場合の相続対策以外にも、どのような人を後継者とするべきか、M&Aをするのが最善なのか?事業存続には人的要素も大きく関わってきます。

生命保険での対策も含め、事業承継は、早い段階で準備をしたほうが打つ手の選択肢は多くなります。事業承継で悩んだら、早めに専門家に相談しましょう。

なお、中小企業の事業承継をサポートする税制も整備されています。
【中小企業の事業承継をサポートする制度】
・事業承継税制
・遺留分に関する民法の特例
・事業承継円滑化法による金融支援

また、事業承継をサポートする公的機関も地域によっては組織されています。
【静岡県事業承継ネットワーク】