村松 繁

退職金制度を変更して確定拠出年金企業型を導入する方法

こんにちは、確定拠出年金相談ねっと 認定FP

アイマーク株式会社 代表の村松です

優秀な人材確保のために、これから退職金を用意したい、または今の自社の退職金制度が適切なのか疑問に感じている方は多いのではないでしょうか?

退職金制度にはさまざまな種類があり、なかなか自分だけで決めることは難しいものです。また、既に退職金制度を決めている場合でも、併用や移行が可能です。今回は主な退職金制度とその特長について解説します。

主な退職金制度の紹介

企業は必ず退職金制度を用意しなければならないというものではありません。ただし、人材不足が懸念される昨今、退職金を含めた充実した福利厚生制度は、優秀な社員の獲得にも有効です。ここでは、企業で用意している代表的な退職金制度を紹介します。

退職一時金制度

最もポピュラーな退職金制度です。退職金額の基準は就業規則などに記載されており、役職や勤続年数、退職理由などで支給額は決まります。

中小企業退職金共済制度(中退共)

国が用意している中小企業向けの退職金制度で、毎月企業が掛金を負担します。掛金は従業員1人あたり5,000円~30,000円です。

仮に月10,000円を10年間掛金を払うと、受け取れる退職金は約126万円。20年間掛金を払うと約267万円になります。

中小企業の退職金として、この中退共を活用している事業主も多いのではないでしょうか?しかし、中退共はかつて程大きく元本を上回ることはなくなっており、掛金が全額損金扱いになる点や、加入4ヶ月目から1年間、掛金を国が半分助成する点を加味しても、昔ほどのメリットは無くなっています。

なお、建設業で働く労働者を対象とした建退共や、清酒製造業退職金共済、林業退職金共済など退職金制度を設けている団体はありますが、いずれも中退共と運営状況はほとんど変わりません。

確定拠出年金企業型

会社が掛金を従業員に拠出し、従業員は自ら選んだ商品で掛金を運用する制度です。例えば2人の社員が同じ掛金を受け取っていたとしても、運用方法によっては将来の受取額が変わってくるという特徴があります。

確定拠出年金企業型には、会社が掛金を拠出する以外に3つのパターンがあります。

マッチング拠出

会社の掛金とは別に、従業員が任意で自分の給料を原資として掛金を上乗せできる制度です。会社の掛金だけで運用するよりも運用元本が増えるので、より目標額に近づけることができます。

ただし、マッチング拠出は会社掛金よりも多い金額を上乗せすることができません。そのため、会社掛金がそもそも少ないとマッチング拠出を増額しても、資産の増加はあまり期待できないでしょう。

選択制

確定拠出年金企業型を採用したいけれど、従業員の掛金を用意できない中小企業もあります。確定拠出年金企業型の選択制は、給与の一部を確定拠出年金企業型の掛金とする方法です。掛金の金額は選択可能で0円とすることもできます。

しかし、企業が掛金を負担しているわけではないので、会社として従業員の資産形成を応援しているというスタンスが伝わりにくい点には注意が必要です。

選択制と会社拠出の組み合わせ

選択制と会社掛金を組み合わせた方法です。選択制だけでは、企業が資産形成を応援しているスタンスは伝わりにくいですが、会社掛金も組み合わせることで従業員の老後の資産形成に本気で取り組んでいるという本気度が伝わります。

確定拠出年金企業型は、従業員の運用次第で大きく資産を増やすことができます。しかし、運用未経験という人も多く、企業側がある程度の本気度を見せないと、従業員はリスクをとって運用をしようとする気持ちに至りません。

他制度と組み合わせることもできる

各制度は、どれか一つしかできないわけではなく、退職一時金制度や中退共と確定拠出年金企業型と組み合わせる事ができます。しかし、各種退職金制度のメリットとデメリットを熟知している必要があるので、専門家に相談してみましょう。

他制度から確定拠出年金企業型に変更もできる

退職金制度は、他制度から確定拠出年金企業型に移行するなど変更も可能です。これまで積み上げた資産を確定拠出年金企業型に引き継ぐこともできます。ただし、現状の退職金制度で積立不足がある場合は、積立不足を解消することが必要です。

【退職一時金の移行の事例】
以下は、退職一時金から確定拠出年金企業型へ一部移行する事例です。退職一時金から確定拠出年金企業型に移行する場合は、単年度の移換は認められていません。

退職一時金部分を減少させ、確定拠出年金企業型を加えることで、企業は退職給付債務が減少し、従業員側は、外部積立制度が準備できるメリットがあります。

これまでに積上げてきた退職一時金を確定拠出年金企業型にどのように引き継ぐかは規約に定めます。

引用元:労働金庫連合会|ろうきんの勤労者の資産形成に係る役割発揮宣言

まとめ

退職金制度は数多くありますが中小企業では主に、退職一時金、中退共、確定拠出年金企業型が採用されています。それぞれの制度は併用や、切り替えも可能です。

しかし、新旧制度と比べて改悪となっていないか?新旧制度で不利益を生じる世代はないか、積立不足の対応はできるか?など細かいチェックポイントがあります。自社で退職金制度をこれから用意したい、今の退職金制度で本当にベストなのか知りたいという方は、ぜひアイマークまでご相談ください。