村松 繁

いまさら聞けない、日銀の金融緩和とは

こんにちは、確定拠出年金相談ねっと 認定FP

アイマーク株式会社 代表の村松です。

9月半ばに一時145円近くまで円安が進行し、3兆円規模と言われる為替介入にもかかわらず円安は止まらない状況です。円安は輸出企業が強い日本にとっては有利と言われますが、過度な円安は私たちの生活にも悪い影響をもたらしているのです。

ここ最近の円安を招いている要因の1つが日銀の金融緩和政策と言われています。この記事では、金融緩和政策とはどのような政策なのか、また、なぜ金融緩和政策が円安を招いているのかについて解説しています。

金融緩和とは

9月半ばに米ドルと円の為替レートは145円近くまで円安が進み、1998年以来24年ぶりの水準となりました。

これは、アメリカが国内のインフレを抑えるためアメリカの中央銀行にあたるFRBが政策金利を引き上げていることと、日銀の金融政策が原因と考えられます。

金融緩和の仕組みと、日銀の金融緩和が円安を招く理由について見ていきましょう。

基本的な金融政策の仕組み

日銀を含め各国の中央銀行は、金融政策によって国の物価や経済の安定を保っています。

例えば、景気が急速に回復すると、物価も急速に上昇するため国民は生活必需品が購入できなくなり、不満を持つようになるでしょう。

そこで中央銀行は、金利を引き上げて(金融引きしめ)企業がお金を借りにくくすることで、景気の回復を抑制し、物価上昇を抑え込もうとします。

逆に、景気が悪化すると、中央銀行は金利を引き下げ(金融緩和)、企業がお金を借りやすくして経済活動を盛んにすることで、景気の回復を図ろうとします。

このように各国の中央銀行は、金利を上下させることで、物価や景気をコントロールしているのです。

日本は1990年前半に起こったバブル崩壊以降、デフレ(物価の下落)基調を未だに抜け出すことができていません。

そのため、多くの国が新型コロナウイルス禍からインフレ(物価の上昇)が起こり金利を引き上げているにもかかわらず、依然として金融緩和を堅持している世界的にも珍しい国という位置づけにあります。

ただ、日本でも2022年4月以降消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)で、2.0%を超える数値が続いています。

身の回りの物価が上昇していると感じている人も多いのではないでしょうか?しかし、現状日銀は、「粘り強い金融緩和」を続けています。

【日本の消費者物価指数の推移】

引用:2020年基準 消費者物価指数 全国 2022年(令和4年)6月分 | 総務省

シュリンクフレーション

物価上昇は必ずしも価格に反映するとは限りません。企業は価格を上げると消費者離れを起こすことを懸念して、食品などの量目を減らして価格を維持しようとするケースもあります。身近なケースでいえば、これまで50g×3個パックで販売されていた納豆が、価格は同じでも45g×3パックになったようなケースです。

こうした量目変更も消費者にとっては実質値上げと言えるでしょう。このように価格には反映されない量目変更などによる値上げのことを、シュリンクフレーション(shrink(縮む)+Inflation(インフレーション)の組み合わせ)、あるいはステルス値上げ※1)と言います。

消費者物価指数は、小売物価統計調査の調査員がこうしたシュリンクフレーションも絶えずチェックしており、例えば、これまで165gだった商品が150gになった場合、調査価格に1.1を乗じた金額を消費者物価指数の調査に反映させています。

※1)ステルス値上げのステルスとは、レーダーで補捉できないステルス戦闘機からとったもので、ステルス戦闘機のように目に見えない値上げのことを表します。

円キャリー取引

日銀の金融政策が、なぜ円安につながるのでしょうか?それはこの円キャリー取引が関わっているためです。

世界の投資家は円の金利の低さを利用して、金利の低い円を借りてお金を調達し、ドル資産を購入する、いわゆる「円キャリー取引」で利益を得ようとします。

その結果、円が売られ、ドルが買われるので、急速に円安が進んでしまうのです。

日本は金融緩和で金利を維持しているにもかかわらず、欧米はインフレ対策で急速な利上げ(金融引き締め)を進めているため、ますます日本と欧米の金利差が広がります。

世界の投資家にとって、円キャリー取引がますます「おいしい取引」となり、円安が進行しているのです。

日本の金融緩和は続くか?

ロシアのウクライナ侵攻や、円安による輸入価格の上昇により、日本は幅広い品目で価格が今後も上昇すると考えられています。

日本の2.0%台という物価上昇率は、欧米の8.0~9.0%という水準ほどではありませんが、今後も日銀が金融緩和政策を堅持するとは言い切れない状態になっています。

ただ、日銀は利上げの要件の1つとして、物価の上昇に賃金が追いつくことを挙げているため、当面日銀の金融緩和は変わらず継続する可能性は高いでしょう。

インフレ対策としての投資

日銀の金融政策は今のところ現状維持になる可能性が極めて高いので、物価上昇率も当面現状のまま推移することが考えられます。

物価上昇局面では、預貯金といった利回りの低い金融商品で運用をすると、資産価値が目減りしてしまいます。そのため、資産の一部を投資信託や株式投資といった金融商品で運用をして、自分の資産をまもることが大切です。

まとめ

各国の中央銀行は、金融政策によって物価や景気をコントロールしています。日本では物価が上昇しているものの、物価の上昇に賃金が追いついていないという理由で、金融緩和政策を堅持しています。

物価上昇率は現状の2.0%台で当面は推移していく可能性が高いと言えるでしょう。

こうした物価上昇(インフレ)局面では、投資信託や株式投資といったリターンの大きい金融商品を利用して、資産の目減りを防ぐことが大切です。

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