こんにちは、確定拠出年金相談ねっと 認定FP
アイマーク株式会社 代表の村松です。
従業員を雇っている企業は一定の要件を満たすと、社会保険に加入する必要があります。社会保険料は労使折半(従業員と会社で半分ずつ負担する)ですが、会社にとっても負担が大きいので、社会保険料を節約する方法があれば知りたいという事業主は多いでしょう。しかし、実際に社会保険料を節約するにあたって、良策はありません。
今回はおすすめはできませんが、社会保険料を削減するとしたらこんな方法があるという方針で紹介させていただきます。
社会保険料は上昇傾向
健康保険組合連合会の報告によると、健康保険は令和元年までに少しずつ上昇し続けています。日本では今後も高齢化が進んでいくことから、この傾向はより顕著になると考えられます。
令和3年度(2021 年度)健康保険組合の予算編成状況―令和3年度予算早期集計結果報告―
社会保険料を節約する方法
冒頭に述べましたが、基本的に社会保険料の節約に良策はありません。他にも方法はありますが、代表的なものを2つ紹介します。
昇給は7月から
社会保険料は4月から6月の給料の平均から標準報酬月額を計算して12ヶ月分の社会保険料が決まります。昇給月を7月以降とすることで、社会保険料を最長で12ヶ月間節約することが可能です。
役員の社会保険料を検討する
非常勤役員は社会保険の加入義務はありません。そのため、出勤日数の少ない役員を非常勤役員にすることで社会保険料を節約できます。
基本的に社会保険料節約は難しい
社会保険料の削減方法を紹介しましたが、もし自分が従業員や、非常勤にされた役員の立場だったら、こうした事業主の社会保険料の節約方針を知ったらどう思うでしょうか?事業主は信頼を損ねてしまい、仕事へのモチベーションにも影響する可能性があるので、基本的には社会保険料の節約は難しいと考えましょう。
確定拠出年金企業型の加入を検討してみましょう
確定拠出年金企業型の「選択制」を採用した場合、制度導入のコストはかかりますが掛金は損金になるうえ、社会保険料の算定対象外になるので社会保険料の節約につながります。しかし、老後に受け取れる厚生年金額は、在職期間中に支払った社会保険料の金額に比例するため、社会保険料を節約すると、従業員が将来受け取れる厚生年金額が減少する可能性があります。
また、傷病手当金※も減少する可能性があることから、安易に確定拠出年金企業型の選択制を採用することは避けるべきでしょう。
※傷病手当金 会社員や公務員が加入する健康保険(被用者保険)の被保険者で、病気やケガのために働けなくなり、事業主から十分な報酬が支払われないときに支給されます。
確定拠出年金企業型の4つの制度設計
確定拠出年金企業型には、前述の選択制を含めて4つの制度設計があります。参考までに4つの制度設計の概要を紹介します。
①前払い退職金として支給
従業員の給与は変更せず、確定拠出年金企業型の掛金を、退職金の全部、または一部前払いとして、給与とは別に、会社が掛金を拠出する方法です。会社が拠出する掛金を事業主掛金と言います。事業主掛金は福利厚生費として損金となり、社会保険料の算定外となるため、社会保険料の負担は発生しません。
②マッチング拠出
事業主掛金を拠出する点は、①前払い退職金として支給するケースと同様ですが、マッチング拠出は、事業主掛金に加えて従業員が任意で自分の給料のなかから掛金を拠出できる制度です。
マッチング拠出の掛金は社会保険料の対象になりますが、所得控除になるため所得税・住民税がかかりません。事業主掛金とマッチング拠出を合わせれば、老後の資産形成のために大きな金額を毎月拠出できます。ただし、マッチング拠出は事業主掛金の金額を上回ることができないので、事業主掛金が少ないと、マッチング拠出額も小さくなり、老後の資産形成のための掛金としては物足りないケースがあるかも知れません。
③選択制
会社が掛金を給料に上乗せして拠出するのではなく、従業員の給料の一部を原資として掛金を捻出する制度です。従業員は、掛金を拠出せずに今まで通り給料として受け取るか、給料の一部を掛金として老後の資産形成に回すかを選べます。掛金は、社会保険料の算定外となるうえ、所得税・住民税がかかりません。
ただし、支払う社会保険料が減少するため、将来の年金額や傷病手当金が減少する可能性があります。
④ ①と③の組み合わせ
会社は事業主掛金を拠出し、なおかつ従業員は自分の給料の一部を原資として掛金を拠出するかを選べます。事業主掛金に上乗せすることで、より大きな金額を老後の資産形成に充てることが可能で、月額で最大5万5,000円まで積み立てられます。社会保険料、税金のメリットは①と③のケースと同様です。
まとめ
社会保険料は多くの事業主が負担に感じているかも知れませんが、おすすめできる社会保険料の節約方法は基本的にありません。あえて言うなら、確定拠出年金企業型の「選択制」を活用する方法がありますが、制度導入や運用にコストがかかるうえ、従業員の老後の厚生年金額や傷病手当金の金額が減少してしまう場合があるので、慎重に検討が必要です。相談したい方は、アイマークまで気軽にお問い合わせください。