確定拠出年金相談ねっと 認定FP
アイマーク株式会社 代表の村松です。
確定拠出年金企業型は、会社だけではなく、従業員にも税制のメリットがあるとされています。会社が効率的な退職金準備方法として用意はしてくれたけれど、従業員は住宅ローン控除や医療費控除のように確定申告をする事になってしまうのでしょうか?
この記事では、確定拠出年金企業型に伴う年末調整について解説しています。
確定拠出年金企業型は確定申告は必要か?
確定拠出年金企業型は節税効果があると聞いたので、初回の住宅ローン控除や医療費控除のように確定申告になるのでしょうか?最近では、確定拠出年金といっても選択肢が増えてきましたが、現状では以下のような選択肢が考えられます。
①確定拠出年金企業型で企業が掛金を拠出する場合
②確定拠出年金企業型で企業が選択制を導入した場合
②会社が、会社掛金に加えてマッチング拠出を導入した場合
④③に加えて、従業員がiDeCo(イデコ)も併用した場合
確定拠出年金企業型で企業が掛金を拠出する場合
確定拠出年金企業型で企業が掛金を拠出する場合、または、選択制によって従業員が選択した掛金は会社においては福利厚生費となり損金扱いになります。従業員においても、所得税や社会保険料の対象とはなりません。
したがって、従業員は確定申告の必要はありません。年末調整の必要もありません。
マッチング拠出の場合
マッチング拠出は、企業が規約によって定める制度ですが、従業員が任意で拠出を決めることができる制度です。
マッチング拠出の掛金は年末調整となり、「給与所得者の保険料控除申告書」の小規模企業共済等掛金控除欄の、「確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金」の欄に金額を記入します。ここは、事業主が記入するので、従業員が記入をする必要はありません。
iDeCo(イデコ)をやっている
勤務先で確定拠出年金企業型を導入していて、規約に定められていればiDeCo(イデコ)を併用することができます。iDeCo(イデコ)は会社掛金とは扱いが異なり、自分で金融機関を見つけて運用をすることになります。
しかし、iDeCo(イデコ)の場合は、掛金を事業主が給与から控除して納付する場合と、個人が掛金を直接払う2つのケースに分かれます。
事業主払込を選択している場合
iDeCo(イデコ)は事業主を経由して掛金を支払うことが可能です。これを「事業主払込」といいます。会社が従業員の口座から掛金を天引きして、事業所の預金口座から口座振替によって掛金を国民年金基金連合会に納付します。
この場合、会社が毎月の給与から控除したiDeCo(イデコ)の掛金額を集計する必要あります。マッチング拠出同様で、従業員は金額を申告する必要はありません。
直接納付の場合
iDeCo(イデコ)の掛金を直接本人が払っている場合は、生命保険などで年末調整するのと同等の扱いになります。小規模企業共済等掛金払込証明書が毎年10月~11月頃、国民年金基金連合会から加入者に届きます。証明書の中にiDeCo(イデコ)でいくら年間掛金を拠出したかが記載されています。
この場合、会社ではいくらiDeCo(イデコ)に加入をしているかが分からないので、自分で記入をする必要があります。
「給与所得者の保険料控除申告書」の小規模企業共済等掛金控除欄で、「確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金」の欄に年間の金額を記入します。小規模企業共済等掛金払込証明書は、納付がされた次の月に発送されるため、初回の掛金納付額が9月以降だったような場合は、会社の年末調整の時期に間に合わない可能性があります。
この場合は、自分で確定申告を行なわなければ還付を受けることができません。生命保険のようにまだ年末調整というシーンではポピュラーな存在ではないiDeCo(イデコ)は、経理部や人事部などが年末調整用の書類の提出を催促してくれない可能性があります。
年末調整書類を提出しなかった場合も、確定申告をしなければ還付を受けることができません。
まとめ
確定拠出年金は国の後押しもあり、制度が毎年柔軟になり、会社が掛金を拠出する以外にも、選択制や、給与の中から任意で加入をするマッチング拠出、自分で金融機関を選んで個人で加入をするiDeCo(イデコ)など上乗せをする制度は多様化しています。
しかし、どの制度を採用したとしても、従業員が確定申告をしなければいけないケースは基本的にはなく、あったとしても国民年金基金連合会からの書類が会社の年末調整の時期に間に合わなかった場合や、年末調整の手続きを忘れた場合など極めて限定的です。どの制度を選んだとしても、従業員があまり負担になることはありません。
確定拠出年金企業型に上乗せをするならどの制度が良いかという観点でみると、マッチング拠出を選ぶと、会社掛金を上回ることができないので、会社掛金が少ない場合、マッチング拠出も少額で、老後の備えとしては心もとないものになります。
その際に確定拠出年金企業型の選択制を活用すると、今まで通り給与の一部を受け取るか、確定拠出年金の掛金として活用するのかを選択することも可能です。
確定拠出年金企業型の選択制の導入にはノウハウが必要となりますので、気になる方はぜひご相談ください。