中林 友美

看護師が生命保険加入を考える前に読んでほしいこと その2

毎日毎日頑張っている看護師さん、お疲れ様です。 

前回のコラムでは

  • 「保険」という言葉は民間保険だけを指し示しているのではないということ
  • 皆さんも社会保険を支えている一員であり、いざというときに保障を受けることができるということ

についてお話ししました。

今回はその続きです。さらに詳しくお話ししていきますね。

「社会保険制度」について

社会保険は、医療保険・年金・介護保険・労働保険の4つに分類されます。

社会保険分類

皆さんが働いて受け取るお給料からは

  • 医療保険料(協会けんぽ・健康保険組合・共済組合・国民健康保険のいづれか)
  • 年金保険料(国民年金(基礎保険)+厚生年金保険料:会社員や公務員など)

が天引きされています。

40歳以上の方の場合は上記のほかに、

  • 介護保険料(医療保険の保険料と一括徴収)

も天引きされます。

それでは「労働保険」はどうなっているのでしょうか?

「労働保険」って何ですか?

労働保険

労働保険はあまり耳慣れないかもしれません。でも、働いている皆さんにとってとても大切な保険です。

では、「労災」という言葉は聞いたことがありますか? 

ニュースサイトなどで「過労死で労災認定」とか、「パワハラは労災認定されるのか?」などの見出しや記事を見たことがある方もいると思います。

労災は先ほど述べた労働保険の2つのうちの1つで、正式名称は「労働者災害補償保険」といいます。

もう一つが雇用保険です。労働保険は労働者の安全と生活を守るための保険です。

まとめると

  • 労災は業務上・通勤途中の災害による死亡や疾病を保障するもの
  • 雇用保険は雇用の安定や労働者の能力開発、労働環境の整備改善

を目的としています。

「労働保険」の保険料は?

「社会保険」の4つのうちの一つである労働保険は誰が保険料を負担しているのでしょうか。

労働保険のうち、労災保険の加入は事業場ごとに行うもので労働者ごとではありません。

すなわち、労働者個人の負担はありません。

ですから、適用事業場に使用されている労働者であればだれでも労災保険適用の対象となります。

労働者を使用して事業が行われている限り、法人・個人を問わず、労働者を一人でも雇用するすべての事業(一部任意加入の事業もありますが、看護師が働くような事業の場合は当然適応事業となっています)において、労災保険が強制的に適応されます

労働者であれば、常勤・アルバイト・パートタイマーなどの雇用形態は関係なく、使用期間の長短も(勤務初日であっても)関係ありません。

看護師の労災保険の事例とは?

看護師でよくあるのは…

針刺し事故

針刺し事故でしょうか。

これは、業務災害(労働者が業務を遂行するに際して、業務に起因して発生した負傷または疾病) といいます。

また、

車通勤の方は…

自動車事故

夜勤明けの帰宅途中…疲れてぼーっとして…

このような事故では、通勤災害(通勤途上の負傷または疾病)となります。

もちろん、電車やバスでの通勤・自転車通勤・徒歩通勤などの事故も対象ですが、届け出をしている通勤ルート以外での事故や仕事帰りの買い物や飲み会などに行った後の帰宅途中の事故では対象となりません(例外あり)。

このように、保険給付が行われるためには労働基準監督署での認定が必要となります。

ちなみに、

新型コロナウィルス感染症に最前線で奮闘している看護師等医療従事者が、万が一職場で他のスタッフや患者さんを通じて新型コロナウィルス感染症に感染した場合、労災の給付対象になるということが令和2年4月28日の厚生労働省の通達によって明示されました 。

労災保険の給付としては、治療費(療養給付)だけでなく、休業補償、障害補償年金、労働者が死亡した場合には遺族補償年金などもあります。

改めて考えてみると、昼夜を問わず一生懸命働いている看護師を含めた労働者にとって、とても大事な保険であることがわかりますね。

業務上や通勤中の負傷や疾病には「健康保険」は使わないで!

業務上は健康保険使わないで

ここで注意しなければならないことが一つあります。

業務上、または通勤途中の負傷または疾病では「健康保険」は使ってはいけないということです。

「病気やけが=健康保険だよね」と安易に考えてはいけません。

もし、後日その負傷または疾病が労災と認定された場合には、健康保険の給付を取り消し返還を求められることがあります。そうなると手続きが複雑になり、多くの人の手を煩わすことになります。

ですから、業務上・通勤途中の負傷または疾病が起こった場合にはまず上司や勤務先に連絡して指示を仰ぐことが重要です。

例えば今だったら、もし自宅に帰ってから発熱したり、新型コロナウィルス感染症が疑われるような症状が出た場合、まず勤務先に連絡するということですね。

また、先ほども申し上げた通り、通勤(出勤や帰宅)途中や業務上(訪問看護の行き返りなど)などの交通事故も労災です。事故の度合いにもよりますが、連絡などが可能な状況であれば勤務先に必ず連絡をして指示を仰いでください。

別の言い方をすれば、通勤途中や業務上の交通事故は、たとえ自分の車で起こした事故であったとしても自分が加入している自動車保険の会社に電話してはいけないということです。

労災認定されれば先ほど述べた「労災保険の給付」の治療費(療養給付)や休業補償、障害補償年金、労働者が死亡した場合には遺族補償年金なども受けることができます。

繰り返しになりますが、労働者 が安心して働くための制度が労災保険です。自己判断や思い込みは禁物です。

業務上の事故などはもちろん、通勤途中の事故なども上司や職場に報告しましょう。

もし帰宅途中の負傷や疾病が労災になりそうだと思ったら、最初から「労災保険指定医療機関」を受診することをお勧めします。

近くの 「労災保険指定医療機関」 を探す場合、 厚生労働省の「労災保険指定医療機関検索サイト」が便利です。

労働保険? 健康保険? 悩んだら…

  • 業務上=労災保険
  • 業務外=健康保険

という区別をぜひ覚えておいてくださいね!