こんにちは!
FP 相談ねっと認定ファイナンシャルプランナーの中林友美です。
前回説明した「病院で亡くなるときどうなるの?」 大事な家族の万が一に備えるシリーズ 医療編 その1の後編です。
前編はこちら
病院での最期とは
最期の時期が近づいてくるとベッド上で過ごすことが多くなり、ベッドを離れる時は車椅子を使います。こうなると大部屋ではなく二人部屋などに移動することが多いです。病院の事情にもよりますが、二人部屋や個室の場合、いわゆる差額ベッド代がかかる病院も多いです。
しかし様々な事情で、差額ベッド代の負担が難しい方もいらっしゃいますし、生活保護を受給している方もおられます。そのような方のために病院では差額ベッド代なしで入れる二人部屋や個室を用意しています。
病室に関する調整は病棟責任者である看護師長が担っているところがほとんどです。移動の際には、ご本人・ご家族だけでなく主治医や担当看護師とも話し合い決定します。ナースステーションから近い病室に移動となる時期です。
この時期の患者さんはだんだんと寝ていることが多くなってきます。がんによる痛みがある場合は、医療用の麻薬を持続的に使うのでさらにウトウトしている時間が多くなります。
このような時期には、会っておきたい人がいればお見舞いに来てもらえるようにお伝えします。命の時間が限られてきています。
食欲がないことも多いので好きなものや食べやすいものを準備してもらいます。がんの種類にもよりますがお腹に水がたまる(腹水)人もいます。腹水があってお腹が張って苦しい場合には、腹水を抜く処置をする場合もあります。お腹の張りや息苦しさにも医療用の麻薬が使われることもあります。
さらに病状が進んでくるとほとんど寝て過ごします。声かけにもあまり反応しなくなります。
さらに病状が進むと、尿量が少なくなり、呼吸も変化します。口呼吸になり規則的ではあっても一生懸命呼吸しているような努力呼吸と言われる呼吸になります。
そして手首の脈が触れなくなっています。血圧も測れなくなってきます。
そういう時には首の動脈(頸部動脈)や鼠経動脈で脈を測定します。
臨終場面と心電図モニターはドラマの定番ですが…
医療用のドラマなどで臨終の場面でよくあるのが、本人が寝ている横で心電図モニターがピッピと鳴っているというシーンです。
急に心電図モニター画面の表示が横一直線となり、ピー-------っと鳴り続ける。「おとうさー---ん」と泣き崩れる…
これが病院で亡くなる場合のスタンダードだと思っている方がほとんどではないでしょうか。
ドラマなどではその画面の中で実際には生きている役者さんが演じることになるので、亡くなるということが一目でわかるように演出するために、心電図モニターと言う小道具が必要なのです。
実際に手術の後の患者さんや心臓の動きをしっかりモニターしなければならない患者さんなどに関しては日常的に心電図モニターを装着しています。心電図モニターで異常をチェックすることは、体調の変化に際し一刻も早く必要な処置を行うために必要不可欠です。
穏やかで尊厳のある最期の時間のために
しかし命の終わりが近づいているという患者さんに心電図モニターを装着することは、尊厳のある穏やかなお別れの時間を奪うことになりかねません。
静かな部屋の中で心電図モニターの音や光があると、ご家族をはじめ面会の方々は患者さんご本人ではなく心電図モニターをチェックするようになります。画面が絶え間なく動いているので、目を奪われてしまうのも仕方がありません。ご本人の容態は、はた目には変化が少なくなってくるため、目に見える形でご本人が生きている証として確認したくなってしまうのでしょう。
看取り期にあるような方をケアしている場合には心電図モニターの装着はしないという方針をとっている病棟もあります。その際にはあらかじめしっかりと説明をしてご家族の同意をとっておくことが必要です。
特にご家族は、たとえご本人の苦痛を強いるものであったとしても「何かして欲しい」と希望することがあります。静かに穏やかにご本人を見送るということに対し、「何もしてもらっていない」と感じてしまうのです。
ですから、早い段階でご本人も交えてどのような経過をたどるのかをしっかり説明することが必要となります。
それは心電図モニターだけでなく点滴などの処置も同様です。食べられないからと言って、元気な方と同じようなたくさんの量の点滴をすると、むくみや腹水、痰が絡みやすくなるなどご本人にとって負担が大きくなります。
心電図モニターなどを装着していないので、看護師が適宜様子を見に伺います。ご家族がそばについていることが多いので、何か変化があった場合には知らせてくださいとお伝えします。
下顎呼吸と言って下顎を動かして一生懸命呼吸しているのですが、だんだんと強くなったりそして弱くなったりというような呼吸になってきます。そして呼吸が止まったかもと思ったら、ナースコールで看護師を呼びます。
変化があればナースコールでお知らせください
看護師が訪室し、呼吸が止まっていることや脈が触れないことなどを確認して医師に連絡します。
医師が訪室して、診察します。死の三徴候と呼ばれる、心臓拍動停止、呼吸停止、瞳孔の対光反射の消失を確認します。手順としては聴診器を当てて、ペンライトで瞳孔に反射がないか確認します。
その確認をした時刻が死亡診断時刻となり、死亡診断書に記入されます。
その後はしばらくお別れの時間を過ごしていただき、 遠方のご家族に連絡やすでに契約している葬儀社があれば事前に連絡しておきます。
看護師による死後のケア(エンゼルケア)をします。お身体をきれいに拭いて、ご家族にご用意いただいた洋服に着替えます。事前に洋服を準備する時間がなかった場合には、和式寝衣か洗濯済みのご本人のパジャマに着替える場合もあります。いつもの洋服ということでT シャツとジーンズを選ぶ方もいらっしゃいます。
最後に薄くお化粧をします。肌色のクリームを塗ったり、ほほ紅や口紅なども使って、ほんのり血色があるように仕上げます。エンゼルケアはご家族が希望される場合には一緒に参加していただきます。お化粧の時だけなど、一部分を手伝っていただく場合もあります。
病室から霊安室までは葬儀社の方がお連れします
看護師は死後のケアに入る前に病院と契約している葬儀会社に連絡をします。複数の葬儀社と契約している場合は、一年間の担当予定表が各病棟に配布されています。例えば〇月〇日の23:59まではA葬儀社、それ以降はB葬儀社というようにスケジュールが決まっています。時間は電話をする時点で判断します。
亡くなった方がいる旨をお伝えし、何時ごろ到着できるかを確認します。その時間までに死後のケアを行うように計画します。それまでにご家族に荷物の整理などを済ませておくように声をかけておきます。
霊安室に葬儀社が到着したら、病棟に電話がかかってきます。霊安室からストレッチャーで葬儀社の方が2名でお迎えに来ます。その時には白衣を着て病棟にいきます。
通常、大部屋の病室のドアは開いていることが多いのですが、ストレッチャーが通る時にはドアを閉めます。日中の場合には各部屋の患者さんたちにしばらく部屋から出ないように説明します。
ストレッチャーが到着したら、葬儀社の方がご遺体をベッドからストレッチャーに乗せ換えます。準備が整ったらご遺体とご遺族は一緒に霊安室まで行きます。
医師や看護師等病棟スタッフはエレベーターホールまでお見送りをします。霊安室に到着後に改めてお悔やみのご挨拶に伺う場合もありますが、病棟業務で手が離せない場合などは残念ながらうかがえない場合もあります。
霊安室からご自宅もしくはセレモニーホールなどへのご遺体の搬送には、すでに契約している葬儀社があれば事前に連絡しておきます。葬儀社が決まっていない場合には病室から霊安室に搬送した葬儀社に引き続き依頼することも可能です。
よくある質問として病院の葬儀社に依頼しなければならないのではないかとか、業者との癒着があるのでは、などと聞かれることがあります。
各病院によって方針が違うこともあるので一概には言えませんが、病院が依頼する葬儀社はあくまでも病室から霊安室までの移送に関することのみです。それ以外のことを依頼する場合にはご家族の間でよく相談して冷静に判断する必要があります。
最近では、葬儀について生前に相談する方も増えています
最近では生前から葬儀について考え、事前に相談する方も増えています。料金体系や方針などもホームページなどで明示している業者もありますので、家族の万が一を考える際の参考にしてみてはいかがでしょうか。
最後に、入院費の支払いは当日にはできませんので、後日精算となります。請求書がご本人の住所あてに届きますので確認してください。
おわりに
今回説明した経過は一般的なものであり、すべての方が共通するものではありません。
それでも「縁起が悪いから考えたくない」「その時になってから考えればいい」ということではご本人のみならず、ご家族も後悔することが多くなります。
特に親にはいつまでも元気でいてほしいという思いが強く、年齢を重ねて80〜90代になっているのに子世代が「死」に向き合わずに遠ざけてしまっている方がいらっしゃいます。
さらに一度考えたら終わりではなく、1年に1回くらいのタイミング(年末年始やお誕生日など)で話し合っておくとよいでしょう。
このコラムが少しでもお役に立てたらうれしいです。
次のclubhouseとコラムをお楽しみに!