ご覧の皆さま、こんにちは。
FP相談ねっと・五十嵐(いがらし)です。
THE GOLD 60で新規記事「遺族年金、請求しますか?…年金事務所職員の“唐突な質問”に困惑する59歳男性。年金制度の『新ルール』を知って下した“苦渋の決断”【CFPの助言】」が掲載されました。
遺族厚生年金の受給権と老齢基礎年金、老齢厚生年金の繰下げ受給という、年金制度改正に関するテーマとしています。
現行制度上、遺族厚生年金の受給権者は、老齢基礎年金も老齢厚生年金も繰下げはできません。
しかし、2028年4月の改正によって、老齢基礎年金も老齢厚生年金も繰下げが可能となります。
遺族厚生年金は5年に有期化される改正もありますが、5年有期化については2028年4月以降にその受給権が発生していることが前提条件です。従いまして、2028年3月以前の受給権発生の場合は、5年有期の対象ではなく、65歳以降もも受給権者となります。
本記事の事例では、事実上は60歳以降65歳までの5年の支給となっていますが、受給権は65歳時点でも残っていることとなり、65歳以降も受給権者となります(再婚等失権事由に該当した場合は除く)。つまり、改正前の無期の年金の対象者になります。
このような5年有期でない方で、しかも、2028年4月以降に65歳になる方(1963年4月2日以降生まれ)が遺族厚生年金の請求していると、老齢厚生年金の繰下げができないことになります。
この場合、繰下げ可能なのは老齢基礎年金のみとなります。
本記事のケースと異なり、比較的若くして遺族厚生年金の受給権が発生し、長期間で金額も多い遺族厚生年金が支給されて無期の年金となる場合、数十年先の老齢厚生年金の繰下げよりも今の遺族厚生年金の受給を優先することも多いでしょう。
そうなると、遺族厚生年金を請求することから、老齢厚生年金の繰下げはできないことになります。
なお、2028年3月までに、65歳を迎える方(1963年4月1日以前生まれ)で、かつ、遺族厚生年金の受給権者となる方は老齢基礎年金、老齢厚生年金ともに繰下げできません。つまり、この場合は現行制度のとおりとなります。
今回2025年の年金制度改正には、遺族厚生年金の5年有期化、繰下げ許容など様々な項目が含まれていますが、複数の改正の影響を受けるケースもあることでしょう。
自身の年金のことで、改正の影響を受けるかどうか気になることは年金事務所等で確認しておきましょう。
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【FP相談ねっと・五十嵐義典 これまでの実績】
●FP個別相談、金融機関の相談会等含め年金相談は合計6000件以上経験。
●教育研修は地方自治体職員向け、年金事務担当者向け、企業年金基金担当者向け、社会保険労務士向け、FP向け、社会人1年生向け、大学生向けなど。㈱服部年金企画講師。
●執筆は通算550本以上!『週刊社会保障』(「スキルアップ年金相談」「年金相談のトビラ」、法研様)、月刊『企業年金』(「知って得!公的年金&マネープラン」、企業年金連合会様)、『企業年金総合プランナー』(「ブラッシュアップシリーズ」、日本商工会議所様)、「東洋経済オンライン」(東洋経済新報社様)、「MONEY PLUS」(マネーフォワード様)、「Finasee(フィナシー)」(想研様)、「現代ビジネス」(講談社様)、「THE GOLD ONLINE」「THE GOLD 60」「資産形成ゴールドオンライン」(幻冬舎ゴールドオンライン様)、「あなたのお金と暮らしのそばに。ハマシェルジュ」(横浜銀行様)、「よるかぶラボ」(ジャパンネクスト証券様)、「ファイナンシャルフィールド」(ブレイクメディア様)、「セゾンのくらし大研究」(セゾンファンデックス様)。その他監修本・著書として、FUSOSHA MOOK『定年前後に得するお金の手続き』(扶桑社様・共同監修)、『50代からの戻るお金・もらえるお金』(ワン・パブリッシング様・共同監修)、『DCプランナー1級合格対策問題集』『DCプランナー2級合格対策問題集』(経営企画出版・共著)。
●取材協力先は『日本経済新聞』『日経ヴェリタス』(日本経済新聞社様)、『読売新聞』(読売新聞東京本社様)、『プレジデント』(プレジデント社様)、『女性自身』(光文社様)、『SPA!』(扶桑社様)。その他「羽鳥慎一モーニングショー」(テレビ朝日様)放送用資料提供、「公的年金制度入門」(アフラック様)動画出演。
●調査研究活動は研究論文「老齢年金の繰下げ受給の在り方-遺族厚生年金の受給権がある場合-」(日本年金学会編『日本年金学会誌第39号』)など。日本年金学会会員。
※2024年7月までは井内 義典(いのうち よしのり)名義。