森次 美尊

何が起こった!?クレディ・スイス AT1債が紙切れに!

こんにちは。

ファイナンシャル プランナー もりつぐ先生です。
どうぞ よろしくお願いいたします。

今日は、ある方から頂いた質問の答えについて、
掘り下げて解説していきます。

Q: 「 紙切れになったクレディ・スイス AT1債。
    やはり海外の投資は、国内よりリスクが高いの?」

というご質問をいただきました。

海外の証券と言っても、いろんなものが考えられますが
おそらく この方が言ってるのはこの証券だろうという風に
的を絞ってお話をしていきます。

これは、クレディ・スイスというスイスの投資銀行の債券が
デフォルトしたものだと思うんですね。

クレディ・スイス
 (クレディ・スイス・グループAG)は スイスに拠点を置く
  世界的な 投資銀行および金融サービス企業である

※ デフォルト
債務不履行。特に、国家が累積債務を返済できなくなること。


これは、投資銀行の発行している債券ですが
正式に、日本の金融機関が販売代理店として取扱いしているものです。

代理店を通さずに海外で直接、買付するというような物もありますが、
そういう物ではないということです。

しかも、かなり大手の日本の金融機関が販売をしていたので
日本でも実際に1,000億円ぐらい売れています。

そして、法人もこれをたくさん買いました。

世界では、2兆2,800億円 発行していたんですが、
これが全部紙切れになったということです。

「 これってちょっとヤバいよね。 」
ということで、結構 ニュースにもなりました。

そもそものお話なんですが、
『 債券って何なのか?』
これについて、もう1回おさらいしてみましょう。

債券というのは簡単に言うと、借用証書です。

例えば、会社がお金を集めたい時に社債という
会社の債券を発行して、その分のお金を借りておきます。

その借金は返済義務があり、仮に10年で満期の債券なら
10年後には必ず返すから、それまでの間 貸しといて下さい。

というもので、満期の10年で償還する形になるわけです。

” 借りてたお金はきっちり返しますよ 。
 500万円借りたなら、ちゃんと500万円返します ”
 というのが、ルールで決められているわけです。

これを2年間とか5年間の期間を決めて貸しといてね。
といったものです。

もう1つ、単に貸すだけには出来ないので
当然 貸した分 利息は頂きます!っていう話になります。
この利息も決められています。

10年間貸す代わりに利息1%で払っていく。
ということが、入り口で決められているわけですよ。

途中で やはり10年まで持たずに
「この債券はやっぱり要らないし、売りに出します!」
という事になると、これはその時の取引価格によるということです。

買い手がたくさん付いたら高く売れる可能性もあるけど、
反対に安くなる可能性もあります。

株とかに比べたら、取引量は少ないので
買い手が付く可能性は少なくなるかも知れないよ。
と言うようなものですね。

基本的には最後の満期まで持てばリスクって
そこまで無いじゃないですか。

じゃあ 何のリスクがあるの?って言ったら
会社が潰れた時のリスクなんです。

会社が潰れちゃうとそもそも借金を返せなくなるから
全部チャラね!ってことになっちゃうわけです。

そのリスクがある分、金利を高くつけているわけです。

誰もが潰れそうな会社には、お金を貸したくないじゃないですか。
金利を高くつけるとかしないと、
みんなお金は払ってくれないですよね。

じゃあ 
リスクが少ない安定してる所ってどこだろう?
って考えた時、会社じゃなくて国ならどうでしょうか。

日本という国は基本的にみんな潰れないと思いますよね。
アメリカという国も潰れないじゃないですか。

アメリカとか日本の出す債券を 国債といいます。

これらは、基本的に会社の債券に比べたら
信用度はかなり高いですよね。

ですので、ほぼ満期までいってお金が返ってくるよね。
という風になるので、やはり安定しているし、安心な分
利息は少なくなるというわけです。

こんな形の債券が社債というものです。

この社債を
クレディ・スイスという投資銀行が
発行していたわけです。

債券の2つの安心感

今までお伝えしてきたように
債券には安心感が2つあります。

そのひとつは
固定金利 なんですよね。

だから10年間借りるから、その間は固定でいきます。
と決めてくれるって事です。

もう1つは
② 満期があるということです。

満期が来たらお金は返ってきます。

ところが、今回クレディ・スイスが発行していた債券は
AT1債 というやつなんですけど、これは
かなりリスクのある債券なんですよ。

先程の2つの安心がどちらも得られないんです。

例えば 満期がないんです。

永久債 と言われていて
”基本 永久にずっと貸しといてね”
という債券なんですよ。

じゃあ どのタイミングで
貸してたお金を償還するのかは
発行した方のクレディ・スイス側が決めます。

という風に言ってるんです。

お客様からしたら
「 無茶苦茶言ってるけど、それって大丈夫なの?
いつまで貸しといたらいいの?」
みたいな感じにはなりますよね。

だから、その分金利を上げないと誰も買ってくれないし、
貸りてもくれないよ!
ということになります。

もう1つは 固定金利なんですけど、
確かに固定はずっとしてくれます。

しかし、会社が倒産しかけて危なくなった時
この債券って株の方に入れ替えられたりします。

少しややこしいお話ですけど、
例えばクレディ・スイスって投資銀行じゃないですか。

投資銀行って、会社が潰れかけた時には
お金を銀行に預けている人たちに
まず返していかないといけないですよね。

当然 返す順序というのがありまして
1番最初は 預金なんですよ。

本来は、その次に 債券を返します。

債券の中にも 劣後債というものがあります。

劣後債
劣後債とは、正式名称を「劣後特約付社債」と言い、企業が発行する
一般的な社債に比べて元本と利息の支払順位が低い社債のことを指します。
 

これは、債券の中で返す順序を1番後ろに遅らせるものです。
お金を全て返し終わったあと、手元に残ってない場合は返ってこないんです。

要は、返ってくるのが一番最後になる代わりに金利を高くつけますよ。
といった債券のことになります。

そして、さらに後ろに今回の AT1債 があります。

AT1債には特約事項で会社がつぶれかけた時は、
払い戻し義務のある債券と入れ替える可能性もあります。

会社というものは、基本的に株主のもので
結局は一番最後に責任をとる人達になります。

そして、1番最後までお金が返ってこない人達です。

でも、株主よりも返すのが後になるかもしれないよ。
というぐらい1番最後の最後だよ。
と言う風になってるのが今回お話している AT1債です。

資本規制による
銀行の資本・負債の弁済順位

● AT1債(クレディ・スイス発行)

今回 クレディ・スイスでこの流れが起こりました。

株価もかなり下がりましたが、デフォルトはしてないです。
一応 紙切れにはなってないんですよ。

一方で 、
AT1債は紙切れになったんです。

要するに債券の安定とも言える
『 固定金利 』『 満期 』も全くないので
一見すると、債券って安定資産と思うかもしれないけど
今回発行されていたものは、無茶苦茶リスクの高いものだった!!
ということです。

なぜ高リスクの債券が売られていたのか?

じゃあ、
そんなにリスクの高いものが日本で1,000億、
世界で2兆2,800億もなぜ売られてたのでしょうか?

これについて見てみましょう。

今 日本って、銀行預金の利率は大体 0.002%
といったところですよね。

こんな利率では 預金としては全然増えないし、
置いててもしょうがないじゃないですか。

じゃあ ちょっとなにか運用したい!って言って
日本の国債を買うとこちらの利率は0.3%です。

その点 今 アメリカの利率ってすごく良いですから
10年国債を買うと3.58% ですね。

楽天が少し前にモバイル関係でお金を集めたいから
モバイル債という2年間だけお金を貸して下さい!
という2年で償還してくれる債券を発行したんですよね。

こういう2年の短期とかなら金利って結構 高くつきます。
理由としては、金利って直近なら見えるからです。

でも10年とかの長期だと、だいぶ負担になったりしますよね。
なので短期の債券の利率は3.3% 付きました。

これは 中々良い利率の債券ですよね。

2年間 確実に3.3%で増やしてくれて、2年後には
もう償還してくれるということで爆発的人気が出た結果、
2,500億円も集めたんです。

そして今回のクレディ・スイスの
AT1債は驚異の9.75%!!です。

どうですか ちょっとやばくないですか?

結局 どれだけ大きいリスクが伴う商品だったか。
という事ですよね。

利率はこれくらいでないと割に合わないよねって感じですよね。

例えば、投資信託だったらS&P500インデックスでも
過去10%ぐらいで回っているので、実は同じぐらいで回っているんです。

ですけど 投資信託っていうのは
当然上がり下がりするものじゃないですか。

でも、S&P500といえば500社に分散しています。

世界のトップであるアメリカの上位500社が
いっせーので潰れるなんてことは、基本的にあり得ないですよね。

それだけ分散して、その分のパフォーマンスを出せるので、
潰れるリスクはなくて紙切れになるリスクって
ほぼ無いと言ってるじゃないですか。

それでそれぐらいのパフォーマンスならいいんです。
しかしクレディ・スイスは、1社なので潰れたら終わりなんです。

それで9.75%で回ってくれれば良いんですけど
逆に言えば、ゼロになる可能性もあるのに
9.75%で固定されてるって事です。

例えばなんですけど、投資信託で言うと
コロナ明けには30%の利回りが付いたりしました。

クレディ・スイスはそんなにつかないですからね。
上にいったとしても9.75%は固定なんですよ。

そして、紙切れになる可能性もあることを考えたら
やっぱりこういう個別銘柄で持つというのは
かなりのリスクがあるんじゃないかなと思います。

これはもちろん債権もそうだし、株にも言えることですよね。

やはり、その企業がこの先何十年続くかどうかというのは
誰にも予想なんかできないですからね。

なので、以前からこのブログでも言っているように
長期・分散・積立投資 がおススメだと言ってきました。

ですけど、自分で常にいろんなものを分散して見ながら色々買って、
売り買いできる程 沢山のお金も無いじゃないですか。

だから投資信託がやっぱり良いんだよって言うことです。

海外は危険、国内は安全なんてことはない。
利回りだけを見ていては危険!!

初心者はやはり、長期・分散・積立投資が安心!!

そして、最後にこの方の質問にお答えします。

国内だから安全、海外だから危険とか
そういうことではないですね。

今回のお話で、こんなに危険な商品だった。
という理由をお伝えさせていただきました。

今から資産運用していくなら、本当の意味で安心するためにも
資産は分散すること。
を考えて頂いた方が良いんじゃないでしょうか。
ということをお伝えしておきます。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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