小川 洋平

一時払いドル建て終身保険って、どうなの?

こんにちは(^^)

経営者の理想を実現する資産形成のプロ、ファイナンシャルプランナーの小川です。

先日ご相談いただいた事例なのですが・・・

「生命保険の営業さんから、一時払いのドル建て終身保険を勧められています」

という件

ここ数年の超低金利時代の影響で、ドル建て保険を積極的に推奨する保険会社さんも増え、こういった提案も多くみられるようになってきました。

まず、結論として

生命保険は「保障」が命

です。

大事なことなのでもう一度言います。

生命保険は「保障」が命

この一言、つまり「保障」が要るのかどうか、このポイントでまず保険商品を使うべきかどうかが99%以上決まります。

何事も最も重要なのは「目的は何か?」

です。

目的が何かによって、「目的に対して適切な手段はなに?」

が決まってきます。

ですので、そもそも目的によって適した手段が異なるので、大前提として「商品が悪いのではない」と先に申し上げておきます。

しかし、今回の事例は「このくらい増えるって推してました」という、保障を抜きに単に運用目的でのお話だったので、運用の考え方から保険の運用商品としての非効率さと、営業さんは「日本はこれから円安に向かっていく」という予想までされていたようですので、それについても言及してみたいと思います。

米ドル一択では「分散」にはならない

資産運用の基本中の基本は、「長期」と「分散」です。

複数の会社、複数の業種、複数の国、複数の資産と、異なる資産に分散させることで、リスクを低減しながらもリターンを狙っていくことができるためです。

そして、「分散」と言うからには、米ドルに一極集中してはいけません。

よく「日本円だけで持ってはいけない」と言いますが、これは正解です。

でも、かといって米ドル一極集中も分散になってないので本来の考え方からは外れてしまいますよね。

通貨分散と言うならば、豪ドルやユーロなどにも分散しなきゃいけません。そうでないと、予想に反してアメリカがドル安に向かって行ったら大損ですからね。

今アメリカが米ドルの価値を維持できているのは「基軸通貨国」という世界の通貨の中心であるという要素が強いためです。

しかし、今後の世界情勢によってアメリカが基軸通貨国ではなくなる可能性も十分に考えられます。

しっかり複数の国に分散させることが大事です。

②保険商品はコストのムダが多すぎる

運用商品の選び方のポイントの1つが「手数料」です。

手数料は私達の資産から引かれていきますので、その分私達の資産は仮に利益がプラマイゼロであってもマイナスするということになります。

いかなる金融商品を選ぶ際にも、この手数料は意識しましょう。

そして、初めにお伝えした通り、保険商品は99%「保障」が命です。

「保障」の機能が命ですから、その保障のためのコストが掛かるのは当然です。

これを「保険関係費」と言いますが、私達が支払う保険料からこの「保険関係費」が差し引かれます。

保険会社さんの商品によっては誤差がありますが、大体5%~8%程度は最初にコストとして私達の資産から引かれます。

仮に、1000万円の保険料ならば、5%の50万円~80万円が必要ということですね。

つまり、もうそれだけマイナスの状態から運用がスタートするということです。

投資信託を購入した際にも、購入時の手数料はありますが、これだけ大きなものはなかなかありません。

そして、「利率が〇%くらいで~」という、利率をPRするトークもありますが、これは「予定利率」というもので、実際に私達に返ってくる予定のお金の利回りとは異なります。

「予定利率3%を保証します」という契約でも、実際には3%で運用されるわけではなく、2%程度になっていることもあります。

投資信託にも「信託報酬」という、運用資産に掛かるコストがありますが、こちらも安いものならば0.1%代ですのでそこまで大きなコストは掛かりません。

このように、保険を単純に運用商品として考えるとムダが多すぎるのです。なので、運用に保険は適さないということが言えます。

繰り返しますが、保険の主役は保障です。その主役のためにコストを払うのは当たり前で、これが悪いわけではありません。

ただ、単に運用を目的としたものとしての選択肢としてはあまりに非効率的であると言えますね。

③これから円安に向かっていくのか?

将来のことはどうなるかはわかりません。ひょっとしたらそうなるかもしれません。

結論としてはこのようになります。ただし、その反対もまた然りで、超円高の時代に突入する可能性もありますよね。

と、可能性の話をしたらハッキリ申し上げてキリがありません。

しかし、「プラザ合意」という為替の大きなインパクトがあった時代を除いた、過去30年程度の間で見ても、為替の平均は1ドル=約111円です。

過去30年ほど、平均値から通常どの範囲にブレがあるか、標準偏差を計算してみると大体13%ずつのバラツキがありました。

つまり、111円くらいを基準に、90円台後半~120円台までの間で通常は変動してきたということになります。

そして、少し特異なことがあるとその標準偏差13.86%の倍である27.72%まで変動したことがあります。

過去30年間の数値をベースに考えると、現在1ドル=135円程度の状態はドル高状態と言えるので、これからもこの「通常」が続くのであれば今はドルの買い時ではないと考えるのが妥当と言えます。

ただし、何かの出来事があって、この「通常」が崩れる状況になる可能性もありますので、その可能性も否定はしませんが、その反対もまた然りです。

少なくとも、「これから円安に向かいます」と断定はできませんし、確率的には低いことをあたかもそうなるかのように誤認させるような言い方は避けるべきでしょうね。

④結論として、投資信託を利用した方がローリスク・ハイリターン

数字で見える返戻率よりも、為替の変動の方が運用資産に対して大きな影響を与えますので、為替のリスクを正しく理解しないといけません。

そんな為替のリスクに合わせ、どの程度のリターンを得られる配分ができるかを計算すると、このような配分で投資信託を購入することを考えることができます。

同じようなリスクでも、返戻率で毎年2%~3%程度しか増えない商品に比べ、平均リターン7%以上が実現可能です。

先日のGPIFの配分のように、資産配分をもっと債券の比率を増やせば、小さなリスクで、先進国の株式と債券で5%以上のリターンも狙っていけます。

外国債券や株式などが組み入れされてますので、今後日本が円安になればその分資産が増えやすくなります。

また、経済の発展すれば株式が価格を上げてくれますし、日本と先進国、新興国で分散してますので、現代の日本を含む先進国が低成長を続けたとしても新興国の成長によって資産が成長してくれます。

このように、ドル建て保険をよりもリスクを低減させながら、もっと大きなリターンを狙っていける運用が可能です。

このような理由で、単に運用が目的なのであればドル建て保険は適した選択肢とは言えませんし、今後円安に振れるかどうかはわかりませんが、確率的には低いと言えますね。

ドル建て保険の使い道は、アメリカにいる子供にドルで相続財産を残したいなど、そういった目的で使うのならば目的にしっかり合っているので良いのですが、仮に増やす目的としては利率の低さとコストから向いていませんし、過去30年程度の為替の動向を分析すると可能性としては現在は円安状態であり、今後更に円安が続く可能性は低いと言えますし、仮に円安になっても投資信託で分散投資することでドル建て保険以上に対策ができているということになりますので、単に運用目的で小さいリスクで大きなリターンを得たいのならば投資信託を使った方が適していると言えます。

そして、このような考え方の基本をしっかり身に着けられると、あらゆる金融商品も適切に評価し、ご自身にとって有益なものかそうでないのかを判断できるようになります。

ただし、繰り返しになりますが、目的によっては今回運用商品としてダメ出しさせていただいたドル建て保険もとても良い手段として使うことができる場面もあります。

しっかり目的を把握し、それに合った手段として活用していきましょう。