小川 洋平

「インフレ」を学ぼう

こんにちは(^^)

ファイナンシャルプランナーの小川です。

昨年2022年のロシアのウクライナ侵攻を受けて以後、電気代の値上がりやガソリンの値上がりなど物価上昇が負担になっているという方も多いことでしょう。

先月のNHKのニュースでは『7月の消費者物価指数 前年同月比2.4%上昇』と報じられ、長く続いた日本のデフレも終わりを迎えることになりました。

「物価が上がるってどういうこと?」「何で上がるの??」

ということについて学び、どう対策していけば良いかを学んでいきましょう。

1.物価上昇=インフレとは?

インフレ=インフレーションの略

物価が継続的に上昇し、お金の価値が下がる現象を言います。

例えば、私が子供の頃は近所の食堂に500円玉を持ってラーメンを食べに行ったものですが、400円のラーメンを食べて100円のおつりをもらって帰ってきたのを覚えています。

しかし、今はラーメン一杯700円、800円、チャーシューメンを頼めば1,000円を超えるのも珍しくない状態です。

昔の500円と今の500円は価値が違うんですね。

その反対で、デフレ=デフレーション

という状態が1998年以降、これまでの日本です。お金の価値が上り、物の値段が下がってきた状態を言います。

2.需要と供給のバランスにより起きるインフレ

通常、インフレは「需要」と「供給」のバランスで決まります。

需要とは、人が物をどれだけ必要としているのかを言い、供給とは物をどれだけ提供できるのかを言います。

需要が供給を上回ることで物価が上がり、反対に需要が供給を下回ることで物価が下がるということです。

例えば、昔たまごっちが流行った時がありましたね(古い・・・)

たまごっちとは | たまごっちシリーズ|バンダイ公式サイト (bandai.co.jp)

定価は確か6000円くらいだったと思いますが、あまりに人気で、今のようにインターネットが普及する前の時代でなかなか手に入らない時代でしたので、一時期はその5倍ほどの価格で売買されていました。

これはあまりに人気でたまごっちの生産が追い付かず、それ以上に欲しい人が多かったために価格が上がっていったことが理由です。

価格を上げても商品が売れれば、できるだけ高い値段で売りたいというのが売り手側としては思うことですよね。ですので、需要が供給を上回ることで物の値段が上がるということです。

反対に、モノが売れないと価格は下がります。

スーパーで半額になっているお惣菜がわかりやすいでしょうが、1割引きになり売れ残り、2割引きになり売れ残り、3割引きでも売れず、半額、そして最終的には定価の2~3割程度で売られていることもありますね。

物が売れないともう少し値段を下げれば欲しがる人も出てくるかと考え、物の値段を下げていきます。

なので、需要が供給を上回ることによりインフレが起き、主に経済が活性化し、モノが売れる状態になり起きることになります。

これをディマンドプルインフレと言います。

3.輸入品や資源価格が上がることで起きるインフレ

 

一方、円安や資源価格の高騰により起きるインフレもあります。

まさに2022年以降の日本がこのような状態なのですが、原油価格や小麦など資源価格がロシアのウクライナ侵攻により大幅に上がって起きるインフレがあります。

コロナ禍で経済活動が制限されて一時期大幅に下落していますが、その後に世界で経済活動が正常化されはじめ回復、2022年2月のロシアによるウクライナ侵攻を受けて急上昇しているのがわかりますね。

天然ガスについても同様にロシアによるウクライナ侵攻で高騰していますが、現在では少し落ち着きを取り戻していますね。

日本は現在9割近くを火力発電に頼っており、燃料となる石炭、原油については限りなく100%に近い割合を輸入に頼り、天然ガスにおいても約60%を輸入に頼っている状況です。

ですので、エネルギー資源の高騰が私達が支払う電気代に圧し掛かり、ガソリン代や灯油代の値上がり、そして企業のコスト増にもなりますのであらゆるモノの値上がりへと繋がります。

こういった輸入品価格の上昇が招くインフレを「コストプッシュインフレ」と言い、私達にとってはネガティブなインフレと言えます。

また、円安になると海外から輸入する際により大きな日本円を支払う必要があります。

例えば、1ドル=100円の頃よりも、現在のように1ドル=140円程度になると輸入品の価格は1.4倍程度になります。

エネルギー資源など輸入品価格の高騰、そして円安が昨今のインフレの要因となっています。

4.インフレは今後も続く・・・?

日本は1998年以降、2022年までデフレが続いてきました。

しかし、日本以外の国では基本的にはインフレ基調にあり、経済の規模もそれに伴い成長しアメリカやイギリスでも40年前から物価は3.5倍程度にもなっています。

この物価上昇は経済成長に伴い起きているものであり、物価だけではなく賃金もそれに応じて上昇してきているのです。

アメリカのスターバックスの時給が日本円で5,000円程度になっているという話を聞いたことがある方もいらっしゃるかと思いますが、経済成長により物価が上がり、それに応じて賃金の水準も上昇してきていることが大きな要因です。(円安なので日本円に換算した時給が高くなっているのも要因の一つ)

また、これまで物価が安く、人件費が安かった国が成長して物価が上がり、これまで未整備だった労働者を保護するような法律が整ってくると生産コストも上昇しますので価格を上げざるを得なくなるでしょう。ですので、世界全体で経済が成長し、物価や賃金が上がり続ければ輸入品の物価が上がることが当然に予想されますね。

仮に日本経済が今後も不調でディマンドプル型のインフレが起きないままだったとしても、世界全体で物価が上昇していけば日本の物価水準に追いつき、追い越すことも想定されます。

5.日銀の金融政策は妥当なのか・・・?

こういった状況において、日銀は安倍政権以降の量的緩和(流通するお金の総量を増やし、景気を上向かせる政策)の方針を継続しています。

これに対し「インフレなのだから引き締めに転じるべきだ」 「日本も利上げを行うべきだ」という声も挙がっています。

しかし、日本のインフレは景気が拡大したために起きたものではなく、輸入品の価格の上昇により起きたコストプッシュ型のインフレです。

景気が良くなり引き締めを行うべき状況なのであれば当然利上げ、引き締めの方向で考えるべきでしょうが、ようやくコロナ禍の不況から国内経済が上向き始めた現状で金融の引き締めを行ってしまうことは国内経済にマイナス要因になってしまうと考えられます。

そのため、方向性としては日銀の方針は決して誤りではないと言えるでしょうが、アメリカや世界各国がインフレ対策を行っている中で日本だけが緩和を継続していれば円安の要因となり、更に物価が上昇することも懸念されるでしょう。

ですので、早期に国内経済を上向かせ、各国に倣って金融の引き締めに転じることが今すべきことと言えるでしょう。

ただし、昨今の円安は単に量的緩和や日米の金利差によるものだけではありません。

こちらのチャートをご覧いただくと、ある時期から急速に円安が進行しているのがわかりますね。

その時期とは2022年の2月20日頃です。

何が起きた時期でしょう?

正解は、ロシアのウクライナ侵攻です。

それまでは1ドル=110円台で、円安傾向ではあったものの過去30年の為替レートにおいては標準的なレートであり、2000年頃からの日米のマネタリーベースを比較すると大体同程度でした。

つまり、昨今の円安は金融政策のみでコントロールすることが難しいと言えます。

たしかに、円安が進行する最中で日本だけが世界の潮流に反し量的緩和を継続すれば円安が更に進行し、経済に悪影響を及ぼすことも考えられますが、だからと言って景気を抑制する政策に安易に舵を切ることが適切ではありません。

数字をあらゆる角度から分析し、適切な対処法を考えることが大切ですね。

7.個人の生活、資産を守るために考えるべきこと

「日本の円安は更に進行する」といった説もあり、ドル建て保険やドル預金での資産の保有を勧められるケースも少なくはありません。

しかし、過去30年の為替の水準から考えれば昨今の為替レートは標準の範囲を超えた円安であることがわかります。

リーマンショック後~欧州債務危機により、1ドル=70円台にもなる超円高な時代には「このまま円高が続いて企業の海外流出が続き国内の雇用が・・・」といったようなことも言われていましたが、今はまさにその真逆の状態と言えます。

勿論、このまま更に円安が進行する可能性も無いわけではありませんが、統計学で考えれば元の水準に戻っていくと考えるのが妥当でしょうし、急速に円安が進行した要因がロシアのウクライナ侵攻なのであれば、問題が落ち着いたときに再び元の水準に戻っていくことも考えられるでしょう。

ですので、円安が更に進行するからと慌ててドルに資産を移したり、一時的な金利の高さを求めてドル預金などを行うことには注意が必要です。

今考えることは「どちらに転んでも資産を守りながら増やすことです。

つまり、資産運用の基本中の基本である「長期分散投を行うことです。

円安が進んでも、円高に戻っても、成長し続ける世界経済に投資し、10年、20年、30年という長期で、世界経済の成長の恩恵を享受しながら、目の前のことに惑わされずに基本に沿って考えていきましょう。