小川 洋平

医療、がん保険を法人で契約する落とし穴・・・?森永卓郎さんの事例から学ぶ

こんにちは(^^)

経営者のキャッシュを増やし、資産を最大化するプロ、ファイナンシャルプランナーの小川です。

経済評論家として有名な森永卓郎さん、がんで闘病中だということをつい先日知りました。

森永さんの書籍は私が保険営業マン時代に読み、大きく影響を受けてきました。

地元で講演会が行われた際には直接お話をお伺いし、本題と大きく外れてましたが漫談のような経済の講演会でとても楽しませていただきました。

年初から大江英樹さん、山崎元さんといった私が大きく影響を受けたお二方ががんでお亡くなりになっていますが、森永さんには是非病気に打ち勝っていただき元気にお仕事を続けていただきたいと願うばかりです。

さて、1/29(月)にYAHOO!ニュースに掲載されたこちらの記事にある森永さんがやってしまった「致命的なミス」についてお伝えしたいと思います。

ステージ4すい臓がん公表の森永卓郎さん「致命的なミス」を告白…「深く考えてなかったんですけど、大きな反省」(スポーツ報知) – Yahoo!ニュース

法人経営者の方、保険商品の募集業務に携わる方は是非ご一読いただければ幸いです。

1.法人でがん、医療保険を契約する場合の税制の問題?!

法人経営者の方だと、「保険は会社で契約した方が経費で落とせるから良い」とお考えの方も多いことでしょう。

確かに法人で払った方が法人の経費(損金)として処理できるため、法人税の圧縮になりますし、保険料を会社で支払う分役員報酬を引下げすれば個人の税金が安くなり、場合によっては社会保険料が下がることもあります。

しかし、法人で契約した方が節税になるからと思って契約した結果、結果的に受け取ることができる保険金が大きく減ってしまうことがあるのです。

2.法人の損金にできる契約形態

まず、法人の損金にするための契約形態について解説します。

保険を契約する際には、①契約者 ②被保険者(誰に保険を掛けるのか) ③受取人 を指定することになります。

この場合、法人の損金にできる契約形態は

①契約者:法人

②被保険者:役員個人

③受取人:法人

とする必要があります。

ここで受取人を個人にしておくと、役員個人の支出を会社が払っているという扱いになるため、役員への給与とみなされますので、税金を抑えたければ受取人を会社にしておく必要があります。

ただし、原則社員全員を対象とし、経営者も医療保険やがん保険に加入する場合は受取人を個人にしておいても「福利厚生」とみなしてもらえます。

3.保険金受取時の税制は?

ここで問題が、実際に保険金を受け取る際です。

受取人が法人になっているので、保険金は当然法人で受け取ることになります。

このとき、法人で受け取る税金は「雑収入」となり、法人の利益に上乗せされます。

仮にこのときの法人の利益が800万円を超えている場合ですと、実効税率が約33.5%となりますので、800万円を超えた部分の利益に対して税金は約1/3掛かることになります。(法人の種類や規模によって異なる場合がある)

仮に300万円を受け取った場合ですと、せっかく保険金を受け取っても1/3に対し課税されるので100万円も税金が引かれることになります。

そして、医療保険やがん保険の保険金は、一般的には治療費として契約している場合が多いでしょう。

なので、治療費として経営者個人がお金を使うために法人から300万円を移した場合、今度は経営者個人に対して税金が発生するため、法人と個人の税金が二重で課税されてしまうことになります。

そうすると、場合によっては300万円の保険金を受け取っても、法人税が増え、個人の税金も増えてしまうために実質手元には半分くらいの保険金しか入らない場合も多いのです。

これが森永さんがやってしまった「致命的なミス」の理由です。

4.契約時の目的をしっかり確認する

森永さんの失敗から学ぶことは、しっかり保険契約の目的を確認することです。

法人契約が必ずしも問題であるわけではありません。仮に、がんや三大疾病などの大きな病気に罹った際に、会社の利益の減少を補填するために契約しているのであれば全くもって問題無いことです。

中小企業は経営者さんがトップ営業マンとなり、経営者さんが現場を回し、経営者さんが働けなくなると売り上げが大きく落ち込んでしまい、赤字になってしまうというケースも多いものです。

そういった場合の損失に対し保険金で対策をされたいという場合でしたらしっかり目的に即したものと言えます。

しかし、そうでなく個人の治療費として使いたいということであれば、やはり個人で契約することが望ましいと言えます。

個人で契約すれば保険料は生命保険料控除の介護・医療保険の控除の対象となりますので、個人の税金が安くなり、受け取る際には保険金は全額が非課税です。

ですので、必要な治療費を確保する目的でしたらできるだけ個人で契約した方が良いと言えますね。

5.既に契約している場合にはどうしたらいい・・・?

既に法人契約で医療保険、がん保険を契約されているという方も多いことでしょう。

その場合、個人に名義変更することができます。

保険金を支払う事由が発生する前に、個人に名義変更して個人で払うということであれば特に問題はありません。

また、生命保険の営業さんの間で流行っていたのですが、医療保険を10年などの短期間で保険料を払い込み、全額会社の経費にしながら支払いが完了したら個人に名義変更するというプランがあります。

こういったプランを契約している場合には、もし保険料を支払っている途中で保険金支払い事由が発生したらその時点で法人の雑収入の対象になると考えられますので要注意ですね。

5.「福利厚生」として活用する

前述の通り、法人の経費として医療保険やがん保険の保険料を支払いながら、個人が保険金を受け取ることができる方法として、「福利厚生」として保険を契約する方法があります。

社員全員の医療保険、がん保険を法人名義で契約し、退職する際には社員に名義変更するというプランです。

これならば経営者さんの医療、がん保険も経費として払うことができます。(※社員の人数や属性により損金として否認される場合もある)

医療保険やがん保険の必要性自体はよく考える必要はありますが、中にはかなり割安な保険料で契約でき、社員さんへの福利厚生として、採用時の魅力の一つとしてPRすることもできますので福利厚生として社員さんのインセンティブにすることは大きなメリットとも言えます。

また、医療保険やがん保険の中には、健康相談サービスやセカンドオピニオンの紹介サービス、飲食店やホテル、テーマパークの割引を受けることができるサービスが付帯されてることもありますので、そういった特典を自社の福利厚生として活用してみると良いでしょう。

6.見舞金規程を作成する

また、会社で病気やケガで治療を受けた場合などに見舞金を支払う旨を定めた規程を作成することもできます。この場合であれば見舞金は法人の損金として個人に払うこともできますので、見舞金規程を作成しておいて、入院した場合などに受け取っても良いでしょう。

ただし、上限額も一般的には5万円~10万円程度が妥当と考えられていますので、さほど大きな金額にはなりません。

福利厚生としてPRすることもできますし、経営者さんがもし入院した場合にも少額ではありますが法人から支払うこともできますので、作成を検討しても良いでしょう。

・・・と、今回は森永卓郎さんの事例から、法人契約の医療、がん保険の注意点を述べさせていただきました。

目的が損失の補填だったり、何か対策があって結果的に法人で契約を続けていくのであれば決して悪いわけではありませんが、そういった出口戦略無く契約されていることも多いため、不安な方は是非ご自身の契約を見直していただければと思います。

また、森永卓郎さんの快復を心より願っております。