出版オーディションを密着取材!
出版機会への挑戦 5社の編集者によるオーディション
いつかは出版したいと思っているFP(ファイナンシャル・プランナー)も多いと思いますが、著名でない限りチャンスが舞い込むことはなかなかありません。きちんとした媒体での執筆もそう簡単に手にできる仕事ではないでしょう。山中塾では幅広い人脈を活かし、企業と積極的にコラボレーションすることで個人では手にしづらい仕事の獲得機会を生み出しています。
今回は、数多くの出版物を世に送り出してきた現役編集者が5社の出版社から集まり、目の前でプレゼンを行えるという贅沢なオーディション企画。パネルディスカッションでは売れる本の秘密など、目からウロコな情報も。出版オーディションの様子をお届けします。
出版社はいつでもネタを探している
出版はFPとして「信頼」という意味で大事なファクターだと山中塾代表の山中伸枝さんはいいます。一方で、出版社としてもこういった企画に注目していると特別審査員の鈴木雅光氏は語ります。
鈴木氏:
日々多くの書籍が出版されていますが、新しいものを回していかないと業界が縮小してしまいます。出版社には新しい著者を得るためのスキームを確保したいという狙いがあります。
山中さんとのつながりで実現された今回の企画。マネー系からビジネス書に強い出版社まで、集まった出版社は多種多様です。
売れる本の秘密
はじめに行われたパネルディスカッションでは、鈴木氏の司会のもと、出版社としてどのような企画ならば売れると感じるか、企画を採用するかなどが語られました。
<パネラー>ーーーーーーーーーーーー
特別審査員
鈴木雅光氏
審査員
同文館出版株式会社 戸井田歩氏
日本実業出版社 竹内健二氏
東洋経済新報社 水野一誠氏
セブン&アイ出版 村上誠氏
かんき出版 米田寛司氏
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出版社側から声がかかる典型的なパターンは、すでに売れている本を出している場合が多いようです。近年では、著者のキャリアが面白く読者が興味を示しやすい人物やSNSのフォロワーが多い人も声のかかる対象になっているといいます。
それでは出版社から声のかからない、知名度のないFPが企画を通すにはどうしていけばよいのでしょうか。
竹内氏:
弊社のような実用書出版という観点でいうと、本業ではなく副業で成功している人に着目していますが、マネー系の実用書に関していえば「○○が簡単にできる」といった夢のような話で、かつ説得力があり、誰でも実現できる画期的なネタであれば、取り組んでみたいと思いますね。
米田氏:
企画に説得力があるかは重要です。実績や数字、根拠となるエビデンスなどが書かれているかはチェックしています。また、一般的な知名度が高くなくてもその業界で名前が知られているとか、定番のテーマでもイラストなどでわかりやすくすることでよく売れたパターンもあります。やってみないとわからない企画もありますよね。
村上氏:
以前勤めていた出版社では、本を書きたい方がいたらweb媒体で書いていただいて、その反響を受けて出版したことがありました。webで拡散されて話題になると、ほかの出版社もみていますからね。本を出すためのお試しというわけではないですが、専門家として一つ記事を書いて反応をみるということもあります。お金を出して買いたい本の企画であるかが問題です。
持ち込みの場合、売れる企画かどうかがどの出版社でも最も重要視されている点でした。また、「売れる=買いたい」という解釈もある一方で、「売る」という行為ができる著者であるかも重要だという意見も上がりました。
水野氏:
書店で万単位で買い上げて、売上げランキングの上位を維持する人もいます。それだけ売れている著者ということでセミナーなどでうたえますから。そういったビジネスセンスがあることも重要だと思います。本が出たら名前が売れて仕事がくるという夢をみている人は向きません。本を出しておいて、本でセミナー事業を成功させてステップアップするような、戦略を打ち出すくらいでないと。
戸井田氏:
売れるかは、出版社と著者が二人三脚できるかどうかにかかっています。すごくいい内容でも、置くだけでは埋もれてしまって読者に届きません。出版社としては本屋さんの良い位置に置いてもらう。著者にはSNSやセミナーなど出版社のできない情報発信をしていただいてwebから書店、書店からwebという流れを作る必要があります。
本を出すまでがゴールになってしまっている人も多いですが、それではロングセラーにはつながりません。本を名刺代わりに、本を使って本業を良くしていくくらいの気概で、出版後も活用すればロングセラーなっていきます。
このほか、出版社ごとの特徴や編集者との相性など、普段語られない出版の情報について意見が交わされました。続くプレゼンテーションで、出版社の求める企画、姿勢を示すことができるでしょうか。
9人のFPがプレゼン
FPといえども経歴や活動はさまざま。出版編集者を前に、9人のFPがそれぞれの経験を活かした企画のプレゼンテーションを行いました。
節約せずにお金を貯める方法を研究してきたという野原さんは「キャッシュレス時代に楽しく貯める楽天ポイント活用術」と題し、0円から始める少額投資について提案しました。
銀行で投資信託を販売してきた実績のある青山さんは、ウォーレン・バフェットの投資手法を教える日本人講師として老後世代に向けた情報を盛り込みたいとアピールしました。
ご自身も2代目社長である伊藤さんは、ペルソナを2代目社長に絞り、経費や相続などペルソナの課題について、すべて実践済みの解決方法を盛り込んだ本を提案。また、出版後の本の活用についても触れました。
辛口フィードバック
持ち時間いっぱいまでアピールしたFPたちの企画は、編集者たちにどう受け止められたのでしょうか。
戸井田氏:
その本が本業とどう関わっているのか、タイトルと目次から読み取ることのできる企画が少なかったように感じます。例えば野原さんの企画は、楽天ポイントの徹底活用ノウハウが感じられない。もっと強みがあるはずなのに、もったいない。まだ棚卸しができると思います。
米田氏:
自分語りというか自分の書きたいことでまとまった企画が多かったように感じます。読者の何の役に立つか、どういう効果があるか。そういった視点で考えられるといいと思いますね。
村上氏:
自分のキーフレーズをもっと明確にすると目次構成も中身も良くなっていくと思います。読者目線をキーフレーズにして、タイトルにこだわって目次をつけてみてください。
竹内氏:
出版業界では1万部売れたら成功といわれています。初版を売り切れば損はしません。そのくらいコアな読者でもいいわけです。そう考えたとき、0円投資を学ぼうとしている人が1600円出すかどうかとか、ペルソナをよく考えてみてください。
初めての出版企画とあって、出版社の求める企画にはどのFPも届かなかったようです。プレゼンテーションを踏まえて、発表したFP以外からもペルソナの絞り方や読者のニーズと自分の経験を結びつけるヒントについて質問が挙がりました。
水野氏:
ペルソナを絞るというよりもお金を出す人が誰かというのがペルソナです。例えば各世代によってお金の考え方は全く違います。30代は残業代がでない不安を抱えていたりするのに対して、20代は副業で起業して本業のリスクヘッジをするといっていたりします。そういった世代に刺さるネタと我々50代の逃げ切り組では全くニーズが違うわけです。ご自身の経験を読ませたいのはわかりますが、本当にお金を出してくれる人がいるのかを考えてみてください。
成功事例は本屋に行けば売れている本のサブタイトルで、どのくらいインパクトがあれば惹かれるかなどがわかると思います。幸いにもマネー系は小型書店でも陳列位置がきっちり決まっていますから、探しやすいし目立ちやすい。その点ビジネス書はテーマによってどこに置かれるかわからないので、FPという肩書きをうまく使ったりマネー系の出版社と組んで買ってくれる人に届く本を考えてみてください。
厳しいフィードバックの後は、今後期待する著者についての話題に。「100歳を超えたFPなら面白いかも」「85歳くらいでFXをアグレッシブにやってる人がいたら教えて」など、FPたちも面白いと感じる企画の話題で出版オーディションは幕を閉じました。
出版オーディション後は場所を移して懇親会も実施され、発表したFP以外も編集者と名刺交換をする姿が見受けられました。興味深い活動を行っているFPには別の編集者の紹介がされるなど交流が盛んに行われ、各々の人脈も広がったようです。
「山中塾のFPは質が高い。経験をもとにした企画をもっとひねれば良いものが生まれるだろう。期待を持てる企画だった」と鈴木氏は今後もこういった企画を続けていく意欲をみせました。
ここまで真摯に丁寧に解説しアドバイスされる機会はそうあることではありません。山中塾への厚い信頼があるからこそできるコラボ企画の今後に注目です。
(編集後記)
「出版については素人。求められているものの高さと自分の企画力に大きな乖離を感じた」と多くのFPが語っていました。著名にならない限り出版社側から声がかかることはありませんが、ポテンシャルのあるFPは多くいると感じます。山中塾にいるからこそ、知り得ない情報を知ることができ、今回の経験やつないだ人脈によって活動の幅が広げるFPは多いことでしょう。個人ではつかめないチャンスを得たFPたちの活躍が楽しみです。
「山中塾」で一緒に活動しませんか!?
ライター紹介
田邉 優(たなべ・ゆう)
ライター。
証券会社のWebディレクターとしてサイト運営や企画を担当。より楽しい体験を求めて、取材も担当するwebメディアのディレクターとなり現場経験を積む。現在はフリーのライターとして取材・撮影・執筆をトータルで行っている。見た目とは裏腹に、日本酒には目がないアラサー女子。