FPセミナーを密着取材!
年金のことが全然わからないので、FPの年金セミナーに行ってみた
みなさん、自分がいくら年金をもらえるか知っていますか?
「老後2000万円問題」がニュースになってから、将来のお金に不安を覚えた人も多いと思います。
かくいう私もその一人。「年金はあてにならないし、投資や運用をして資金を増やす知識もないし…」と、ただ不安になるだけでした。
その不安を解消すべく「せめて年金をいくらもらえるかくらいは知っておこう!」という思いを胸に、今回は「FP相談ねっと」の認定FP(ファイナンシャル・プランナー)が開催するセミナーに参加してみました。
「FP相談ねっと」とは、年金や資産運用アドバイスに強いFPの全国ネットワーク。さまざまなテーマの分かりやすいセミナーや、個人相談も行っている頼れる専門家集団(控えめにいっても、みなさん知っておいた方がいいです!)。
FP相談ねっと認定FPによるセミナーは毎月全国各地で行われていて、こちらのページで直近のセミナー情報も確認できるので是非チェックしましょう!
新着FPセミナー
働くママの味方!人気のFPが開催するセミナー
今回参加したセミナーは、ご自身も二児の母で働くママたちに人気のFP、塚越 菜々子さんのセミナーです。
お会いした印象は「お金の疑問・不安、ドンとこい!」という感じの頼れる姉さん系。(愛称は菜々子さん)
情報満載のメルマガが人気で「将来のこと、自分でなんとかしていかなくちゃ!」と目覚めたママたちが足繁くセミナーに通っているようです。
私は初参加でしたが、会場で話を聞いてみるとほとんどリピーターの方でした。
人気の理由はほかにもあります。菜々子さんはFPとして保険・金融・投資商品を一切販売しないスタイル。武器は私たちの知らないお金にまつわる情報です。専門家ではない私たちにとって、情報が一番欲しいものかもしれません。中立的な立場や信頼性、30〜40代の働くママたちとの身近さ、相談のしやすい人柄が人気のFPです。
会場は準備万端のママたちでいっぱい
この日は東京駅付近の会場で開催されました。参加者の方は埼玉や神奈川、はるばる静岡から参加している方もいました。
席に着くとみなさん、おもむろに「ねんきん定期便」を机の上に…。
今回参加した「ねんきん定期便から見る老後資金と働き方がわかる実践セミナー」では、その名の通りねんきん定期便を使って老後資金と働き方を考えていきます。
実は「年金いくらもらえるの?」という疑問は、ねんきん定期便を見ればわかるらしいのです!つまり、答えは毎年自宅へ送られてきていたということ。
それなのになぜセミナーに足を運ぶのかというと、みなさん口を揃えて「見方がわからない」といいます。
私も見方がわからないので、届いてもすぐ捨ててしまっていました…。
今回は気合の入ったママたちと一緒に、いくらもらえるのかしっかり勉強してきます!
そもそも年金制度ってどんな制度?
はじめに年金制度のおさらいから。
私たちは年金制度のことを「年金、年金」と一緒くたに呼んでいますが、年金にはいくつかの呼び名と役割があります。
2つの財布
まずは納め先です。
簡単に説明すると、「年金」という財布は2つに分かれています。「国民年金(基礎年金)」と「厚生年金」です。それぞれ納めた財布から、年金は支払われます。
国民年金(基礎年金)は、20歳以上は全員加入なので、正しく納めていれば受給できる年金です。自営業、夫の扶養になっている主婦などの年金は、この財布から支払われます。
サラリーマンの場合は、国民年金(基礎年金)に加えて「厚生年金」も納めています。そのため、サラリーマンには2つの財布から年金が支払われます。
これがよく「日本の年金制度は2階建て」といわれる理由です。1階部分が全員に支払われる国民年金(基礎年金)、2階部分が加えて支払われる厚生年金です。(※)
(※)年金(老齢年金)は、国民年金(基礎年金)と厚生年金の加入期間の合計が原則10年(120か月)以上納めていないと受給できません。
3つの役割
次に年金の役割です。年金には3つの役割があります。
私たちが「年金」と呼んでいる老後に受け取るお金は「老齢年金」といいます。実はあと2つ年金には顔があります。「障害年金」と「遺族年金」です。(下記ではわかりやすく、被保険者を夫として記載します。)
老齢年金
加入期間が原則10年(120か月)以上ある場合、65歳から受給できる年金。2つの財布があり、国民年金(基礎年金)から支払われるものを「老齢基礎年金」といい、厚生年金から支払われるものを「老齢厚生年金」という。どちらも終身で受給できる。
障害年金
夫が障害(病気や怪我)によって仕事や生活が困難になった場合に、年齢問わず受給できる年金。老齢年金と同じように「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2つの財布があり、条件によって一方、または両方から支払われるかが決まる。
遺族年金
夫が亡くなった場合に受給できる年金。こちらも「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つの財布があり、条件によって一方、または両方から支払われるかが決まる。
例題でわかりやすく解説
セミナーでは各年金の受給できる条件や金額、受給のポイントを解説。具体例を出して細かく金額を計算していきます。自分の年齢や家族構成に当てはまりやすい例で計算していくので、わかりやすい解説でした。
わかったらシェアして知識を自分のものに
難しい話が続きましたが、そもそも「年金は老後にもらえるだけじゃない」ということに驚きました。むしろ、障害年金や遺族年金は、民間保険に近いものに感じます。そんなことも知らなかったなんて…。
でも、大丈夫!だって、参加したママたちも知らなかったから…!
セミナーではシェアタイムというのが設けられていて、学んだことをどう感じたのか、隣どうしで感想をシェアします。
扶養内で働いているママ、扶養を出て働いているママ、子どもの年齢、民間保険の掛け方など家計の様子はさまざま。それぞれの状況と感想をシェアすると、制度がより腹に落ちてきます。
「うちは夫ではなく、自分が稼ぎ頭。自分が亡くなった場合、夫が亡くなったときとは支払われる制度が違うと聞いて驚いた」という声や「これまで生命保険をかけないでいたけれど、遺族年金の支払われ方や金額を知って、家計を見直さなければ」など、いろいろな感想が聞かれました。
そして会場の全員が実感したことは「厚生年金を納めていないと受け取れないものが多い」ということです。
開いた口が塞がらない!私の年金これだけ…?
ここからはいよいよ実践セミナーらしく、ねんきん定期便を見ながら実際に計算していきます。
受け取れる年金は、これまで年金を納めて作ってきた金額と、将来収める金額に基づいて試算した金額の合計です。
難しいことは何もありません。小学生でもできる簡単な公式にそって計算していくだけです。
たったこれだけのことなら、ねんきん定期便に計算方法を書いておいてほしいと思いますね。知らないとは恐ろしい…。
私はねんきん定期便が届くたびに捨ててしまっていたので、探し出した古い定期便で試算してみました。フリーランスの私は、加入している年金は国民年金(基礎年金)だけです。国民年金は、将来受け取れる金額が毎年一定額増えるため、60歳までの残年数をかけて計算します。
私の場合は、およそ月8万円也。持ち家がないので、老後も賃貸に住んでいると思うと、家賃だけでなくなってしまうことが容易に想像できます。
会社勤めをしている場合は、厚生年金も納めているので、年収をもとに将来の金額を試算し、国民年金(基礎年金)と厚生年金から支払われる額も合算します。
以前会社勤めをしていたときの年収で継続勤務している想定で試算してみると、月13万円ほどに。厚生年金加入の有無で、月5万円近い差が出てしまいました。こ、これは大きい…!
参加したママたちは、夫のねんきん定期便も持参して試算。…必死です。
「試算した金額は額面で、税金が引かれるため手取りの金額ではない」という菜々子さんの声に、開いた口が塞がらないという表情を浮かべる方も。。
「これでは生活できない、しっかり働いて備えなくては…!」という声がある一方で「期待してなかったから予想よりも多くて驚いた」という声もありました。
数字にすると、現実がはっきり見えてきます。それぞれの家計で考えてみても、厚生年金の重要さが浮き彫りになりました。扶養に入って目先の金額を考えるよりも、長い目で見て働けるうちに働き、自分の年金を作っておく必要がありそうです。
後半は年金制度の将来について
先日、現在の年金制度の持続性を検証する「財政検証」が行われ、ニュースなどで話題となりました。少子高齢化が進む中、先が暗いことは誰が見てもわかることです。そのため政府は、いくつかの対策を講じています。
セミナーでは対策の内容とそれを上手に活用する方法、そして年金制度を維持させ続けるために私たちがすべき行動について解説しました。
着目すれば将来が見通せる政府の対策
「厚生年金の適用拡大」は、扶養の対象が年収130万円以下から年収106万円以下となった、いわゆる「106万円の壁」にあたるもので、厚生年金の加入者を増やす対策です。
前半の講義にあったように、厚生年金の加入の有無は、将来受給できる老齢年金に大きな差を生み出します。セミナー内では具体的な数字を出して試算。扶養内でいるか、扶養を出るべきか悩むママたちにとっては関心の高い話題でした。
また、ママたちの反応が大きかったのが「受給開始年齢の繰り下げ」です。
私も全く知りませんでしたが、年金は65歳から受け取る必要はなく、受け取る年齢を遅らせることができます。65歳で全員が受給し始めるより、タイミングをずらした方が政府としては一度に支払う金額が少なくて済むという対策です。
この対策、受給者からすると例えば5年遅らせて70歳で受け取ると、142%も金額がアップします。さらに、老齢年金は終身なので、70歳以降アップした金額を受給し続けることができます。
夫婦で受給できる金額が月25万円ほどなら、月35万円を終身で受給できます。どのくらい長生きするかわからない将来、受給を遅らせる年数分の対策をするのも一つの手段だという発見がありました。
目減りする年金の対策は資産運用
本来、日本の年金制度は物価が上がれば連動して上がる仕組み(物価スライド)です。しかし、それでは財源が足りません。そのため政府は、連動率を調整しています(マクロ経済スライド)。例えば、物価が1%上がっても年金額の上昇は1%以下です。これは受給者からみると、年金が目減りしている状態になります。
この対策として国が掲げているスローガンが「貯蓄から資産形成へ」のシフトです。具体的には、銀行にお金を預けているだけではなく、世界経済の成長に投資をして自分のお金を作ることが大切といいます。
そういわれても、貯蓄と投資と年金が頭でつながらない…。
菜々子さんは「銀行にお金を預けているだけでは、物価の上昇に対抗するだけのお金を作れない」といいます。なぜならば、銀行が利息を私たちに返すために企業にその利息分と金利を上乗せして貸し出し、企業が利息分と金利分を稼ぎ出すために物価を上げるからです。つまり、私たちの預金の利息は、物価を上回ることがないのです。(間接金融)
そこで活用したいのがiDeCo(イデコ)やNISA(ニーサ)という新たな資産運用です。投資であれば物価の上昇に連動していくことができます。
自分も年金制度の一員である自覚を
最後に改めて、菜々子さんは年金制度に対する他人事な考え方に警鐘を鳴らしました。
- 菜々子
さん - みんなの年金はみんなで維持していかなくてはいけません。年金は保険です。福祉ではないですし、資産を増やすものでもありません。障害年金、遺族年金、老齢年金の3つをまかなえる民間の保険商品はありません。国でなければ運用できないからです。だから維持していかなくちゃいけない。少なくてもみんなが受け取れる年金を維持する、足りない分は自分で作る。制度を知ったうえで、これからは両方が必要だという意識をもっていただければと思います。
年金を維持していくこと、自分で作っていくことの重要性が伝わり、ママたちからは「こういうことを子どもに伝えてあげたい」という声が多く上がりました。
ただ受給できる年金額を知るだけ、活用できる制度を知るだけに止まらない、自分とこれからの年金制度を考えるきっかけとなるかたちでセミナーは締めくくられました。
不安が晴れた!知ることができてよかった!
参加者それぞれの家計があり、持ち帰る課題は多いセミナーでしたが、みなさん不安が晴れた様子です。セミナー終了後に感想を聞いてみました。
今日のセミナーはいかがでしたか?
- 下田さん
- 菜々子さんがいっていたように「知ってて選ぶの」と「知らないで選ぶの」は全く違うと実感しました。つい先日まで、いわゆる「働き損」といわれるゾーンで働いていたんです。これなら扶養に戻った方がいいかも…と思って扶養内に戻ったばっかりで。
- 石田さん
- 厚生年金の有無は大きかったですよね。
- 下田さん
- 戻らなきゃよかった!って感じですよ。厚生年金の加入でそんなにずっと安心感が続くものだったなんて知りませんでした。時期が来たら扶養を出るつもりですが、次に働くときは「働き損」なんて思いませんね。自分の将来のために働くと思うとモチベーションが全然違います。
- 広瀬さん
- 「働き損」って言葉がおかしいですよね。損はしてない。将来への積立ですよね。
- 望月さん
- 目の前のことだけをみてるから「働き損」っていうんだよね。自分が年をとって働けなくなったときのことを考えれば、全然気持ちが違いますね。
- 下田さん
- いままで何で知らなかったんだろう…
年金の信用度と働き方に対するモチベーションがとても変わりましたね。
- 下田さん
- そうですね。本当に知って良かったと思います!
また、セミナー参加者の中には、以前に個別相談も受けたことがある方もいました。確定申告の相談や家計のことなど相談内容はそれぞれですが、みなさん「相談して本当によかった」といいます。
ある方は魅力の一つに「商品販売をしないスタンスも信頼できるし、知らない情報をわかりやすく示して、選択の幅を広げてくれる」ことを挙げていました。
なぜ何度もセミナーに足を運ぶのかうかがうと「わかりやすいし、楽しい。何より菜々子さんだから話を聞きたい、相談したい」と語ります。
今回のセミナーも「制度にきちんと向き合えば、安心は得られると感じた」とにこやかに会場を後にしました。
制度を広く伝えながら、個人に寄り添えるFPであるように
このセミナーを通して「自分が制度の内側にいること、他人事ではないことを知ってほしい。制度を理解したうえで、次は民間保険の見直しやiDeCO(イデコ)やなどで年金を作っていくアクションにつなげてほしい」と語る菜々子さん。
そんな菜々子さんに、目指すFPの姿を聞いてみました。
- 菜々子
さん - いつも生活者側にいるということが大切だと思っています。勉強すればするほど「自分で年金を作っていくのにiDeCo(イデコ)をやるのが正しい」とか、そういった考えに凝り固まっていきがちです。でも、その掛け金はどう捻出したらいいのかとか、生活者の疑問や不安、日常の息づかいと乖離してしまう。制度を広く伝えるという部分と、個人に寄り添うというバランスを取れるFPでありたいと思います。時間もかかりますし大変ですが、しがみついてやっていきたいです。
年金は誰かがくれるものじゃない 自分で作っていかなくちゃ!
「いくらもらえるの?」という観点で参加していましたが、どこかの誰かからもらえるものではなく、自分が年金制度という大きな仕組みの一員なのだと認識を改め、これまでの考え方を反省しました。
年金を当てにするのでもなく、民間保険で無理するわけでもなく、自分にできることでコツコツと、計画性を持って老後に備えていきたいと思うセミナーでした。
FP相談ねっとでは、年金セミナーのほかにも私たちが知らなければいけない生活に役に立つセミナーが随時開催されています。また、より個別のアドバイスが欲しい方には個別相談も。認定FPは全国にいますし、オンラインサービスも充実。ぜひみなさんもFP相談ねっとのウェブサイトをチェックしてみて下さい。
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「山中塾」で一緒に活動しませんか!?
ライター紹介
田邉 優(たなべ・ゆう)
ライター。
証券会社のWebディレクターとしてサイト運営や企画を担当。より楽しい体験を求めて、取材も担当するwebメディアのディレクターとなり現場経験を積む。現在はフリーのライターとして取材・撮影・執筆をトータルで行っている。見た目とは裏腹に、日本酒には目がないアラサー女子。