40代夫婦。教育費と老後資金のどちらを優先すればいいですか?

ご相談者データ

石橋美咲さん(仮名)

【年齢】42歳
【職業】IT系企業の契約社員
【性別】女性
【家族構成】夫(43歳会社員)子ども(10歳、7歳、5歳)

相談しようと思ったきっかけ

3人の子どもがいて上の子の時は育児休業を取りましたが、2人目は所属部署や自分のキャパシティの問題で育児休業を取らず離職しました。その後、末の子供が2歳半の時に再就職。今は契約社員として働いています。

上の子どもが学習塾に行きたいと言い出し、毎月の学校以外の習い事の費用がかさみそうです。末の子は学資保険も契約はしておらず、学資もまだまだ十分とは言えません。教育費で手いっぱいで老後費用にはほとんど手付かずの状態
年金もあてにならないと言われているし、自分での対策が必要だとは思うのですが、何からしたらいいかわからなくなりました。

確定拠出年金のことを調べていたらファイナンシャルプランナーの塚越さんを見つけ、子どもさんがいらっしゃることと、「家計簿をつけていなくても相談できる」ということ、また公的保険アドバイザーで年金についてもセミナーをしていることを知りました。
セミナーは時間が合わず参加が難しいのですが、オンラインでの個別の相談も受けていることを知り相談してみることにしました。

ご相談内容

  • 子ども3人の教育費はいくら貯めたらいいか
  • 老後費用と教育費とどちらを優先して貯めていけばいいか
  • 老後費用をどうやって準備していけばいいか

大きく分けてこの3つのご相談です。

その他に石橋さんから頂いた家計のおおよその状態はこちらです。

【想定の退職金】ご主人様 1200万円程度 奥様 なし
【老後の収入】個人年金保険 60歳~10年確定 72万円/年
【定年年齢】ご主人様 60歳定年 65歳まで再雇用ありの見込み
【住宅ローン】ご主人様 68歳完済 

ご相談でお話しした内容

教育費と老後費用のお話ということで、特に老後資金に関してはたくさんの情報が必要になりますので、一つ一つ確認していきました。

教育費は増加の一途!どこまで「かける」の計画を

まずは子育て世帯にとって一番わかりやすい「教育費」から見ていきましょう。
子育て世帯の相談をたくさん受けていると、みなさん口をそろえて「教育費はいくらかかりますか?」と聞かれます。

ですが、いくらかかるかと言えばピンからキリまで。かけようと思えば青天井にかけることができるのが教育費です。だからこそ、考えなくてはいけないのは「いくらかかるか」ではなく「いくらかけるか」なのです。

オール公立、オール私立、高校から私立・・・それだといくらぐらいかかるかという数字も余りあてにはなりません。
なぜなら、その金額は日常の学用品や習い事費用も含まれての数字で、貯める目標額とは違うからです。
給食費や教材費、お稽古などを「かかる教育費」とは認識していないことがほとんどですね。

大事なことは「いつまでにいくら準備するか」を計画しておくこと。
どんな進路を選ぶかは今考えてもわからないことですから、親がどこまで(あるいはいくらまで)出すつもりでいるかを仮決めしましょう。

高校までの教育費

教育費は年々上がり続けている昨今ですので、原則として「高校までは家計から出せる金額」の教育を選択肢にするほうが安全です。

文部科学省の「子供の学習費調査」(※)によると、私立中学は3年間で約420万円。私立高校は3年間で約290万円かかっているというデータが出ています。
私立中学はひと月に11.6万円、私立高校は8万円かかるイメージです。もちろん兄弟で同じ進路を認める場合は兄弟の数だけかかります。
私立に対し、公立中学ですと月4万円、公立高校3.8万円。やはり私立にかかる学費は大きくなっています。私立を選択肢に入れていいかどうかは兄弟姉妹のことを考えた上で、金額が捻出できるかが一つの判断基準です。

家計にとって負担なら、その進路は慎重に選択する必要があります。
(※) https://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/chousa03/gakushuuhi/kekka/k_detail/mext_00102.html

 

大学費用

次は大学費用です。

進学する大学によって学費は差がありますが、計画段階ではあまり細かく考えすぎずに「国公立」「私立文系」「私立理系」のくくりで考えてみましょう。
4年間の学費を含めた費用負担は、国公立の場合は約540万円。私立文系で約730万円。私立理系で830万円ほどとなっています。(※)
この金額は学校に払う以外の費用も含まれているから、この額すべてが18歳時点で用意できないと進学できないということではありませんが、「大学費用は300万円」ぐらいというイメージでいると予想外に負担が大きくなるかもしれません。

またお住まいが地方などで、自宅から通学することがそもそも現実的でない場合は、年間で平均して約102万円の仕送りが発生しています。4年間でプラス400万円の上乗せを考えておく必要がありますね。生活のためのアルバイトをせずに学業に専念してほしいと思う場合はさらに増えてきます。

(※)日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査」
https://www.jfc.go.jp/n/findings/kyoiku_kekka_m_index.html

この数字を踏まえたうえで、どの進路まで応援するつもりでいるか(進路や金額)の上限を夫婦でよく話しあいましょう

気を付けてほしいのは「自宅から国公立まで」と言いながら、国公立に合格できず私立になったり、途中で進路を理系に変えたりしたときに、結局そちらの額を出してしまう場合です。
出してあげるのなら、初めから上限をあげて考えておかないと老後の計画が大きく狂ってしまいます。

ご相談いただいた石橋さんの場合はお子さんが3人いらっしゃるので、そのことも忘れてはいけませんね。

 

老後資金が最優先。いくらかかるか早めの想定

そして次は老後費用についてです。
老後にかかる費用は個々のご家庭でケースバイケースのため、大まかにでも早めにイメージを持っておくことが大事です。

老後に出ていく支出

老後2000万円問題などが一時騒がれましたが「2000万円」という数字はあくまで一般論です。
それより少なく済む人も、それより多くかかる人もいます。大事なのは「わが家はどのくらい必要になりそうか」を考えてみることです。

石橋さんは家計簿をつけていませんが、手取り収入はお分かりでしたので、年間の貯金を除いた部分が「何らかの支出」に回った部分です。

その金額から、老後は支払わなくてもよくなるもの(住宅ローンや現在の教育に関する費用)を計算していくと、老後に想定される年間支出が約「420万円」と分かりました。払い済みになる保険など細かく洗い出していけばもう少し変わるかもしれませんが、今回のご相談の段階ではおおよその全体像を把握することを優先しました。

年間で420万円の支出ということは月平均で「35万円」程度の老後の暮らしになることが想定されます。
いまボーナスで支払っている部分も毎月の負担として考えなければいけませんから、思ったより多いと感じるかもしれませんね。

老後に入ってくる収入

老後の収入の柱は公的年金です。いつごろからいくらの年金を受け取ることができるかは、毎年誕生月に送られてくる『ねんきん定期便』からおおよそ試算することができます。
これからの働きかたや年収を予測して計算したところ、ご夫婦二人でひと月約27万円の年金収入(手取り)が見込める試算となりました。

 

いまから毎月いくらの老後資金を貯めれば?

出ていくお金と入ってくるお金が老後に貯金を取り崩す金額です。
35万円の暮らしぶりに対して年金収入が27万円ですので、今の暮らしのレベル感で推移すると、老後はひと月に8万円赤字になる計算です。

65歳をリタイア年数と想定して、約30年この生活が続くと考えてみましょう。
長く生きることができるのは喜ばしいことですが、その分お金がかかってくるのは紛れもない事実です。

もちろん70歳より90歳の方が支出は減るかもしれませんが、計算段階で細かく考えすぎないようにまずは手を動かして計算してみることが大事ですね。

ひと月8万円=年間96万円の赤字が30年続くと2880万円が足りない計算になります。

そこに、

  • 住宅ローン3年分の繰り上げ返済
  • 老後の介護や医療にかかる金額
  • 住宅メンテナンス費用

などの老後の特別費としてプラス1500万円ほどを見こしておきます。
ずっと車の保有が必要な地域にお住まいだったり、親の世代の介護の支援が必要だったりする場合はもちろんその分も追加が必要です。

石橋さんの場合は老後の収入として1200万円の退職金と720万円の個人年金保険が受け取れると想定されています。

その分を差し引いて65歳時点の目標は約2460万円。
いまから65歳まで22年でこの目標に向け貯めていくことになります。

そうすると、一年間に必要な金額が約111万円。12で割ってみるとひと月当たり約9万円
この金額が老後へ向けての準備が必要だということが分かります。

 

同時並行で準備できる額だけが教育費の予算

教育費の不足については子ども自身が準備することもできます。

例えばその一つが「奨学金」です。他にも無償化の恩恵を受けたり、あるいは返済不要な給付型の奨学金で用立てることもできるかもしれません。教育を受けてその恩恵を受けるのは子どもです。すべて親が出してあげなければ親失格ということでもないはずです。

では老後費用の不足についてお金を借りることはできるでしょうか?

「老後ローン」というものはありません。不動産を担保に入れるリバースもゲージなどはありますが、一定の資産価値がある物件を保有しているなどの条件があり、まだハードルが低い方法とはまでは言えないでしょう。

そうなると子どもに援助をお願いしたり、公的な援助を受けるしかなくなってしまいます。
社会に出る前の子供の未来の収入からの援助を当てにするより、本人の教育費は本人にも頑張ってもらい、親自身が自立して暮らしていくことができる計画の方が健全のように思います。

その上で「教育費と老後費用どちらが優先か」と考えると、やはりまずは避けて通ることのできない老後費用だと考えます。

もちろん、今後収入が増えたり学費無償化などでゆとりができたら教育費を上乗せしてもいいですし、まずは奨学金を借りてもらい、老後に余力があれば残りの分を代わりに支払うということはできます。

石橋さんのご夫婦は末のお子さんが22歳を迎えるころには60歳間近のため、それから老後費用を貯めるのは現実的ではありません。
今回計算した老後費用はあくまでいま出ている情報からの概算ですが、この金額を貯めながら教育費にどの程度の予算を割けるかを一度考えてみる必要はあるでしょう。

 

どうせ貯めるなら老後資金は有利な方法で

定年延長など長く働ける土壌は育ってきていますが、それでも一般的には支出が収入を下回る時が決ます。
「老後資金が全くいらない」というご家庭はほとんどないはずです。

多かれ少なかれ老後資金を貯めていく必要があるのだったら、まずは税制優遇のあるiDeCoやつみたてNISAを活用することも検討してみてください。
20年近い時間を味方に着け、「長期・積立・分散」で資産を育てていくことができれば、老後資金もより有利に準備することができ、その分教育費に掛けられる金額も増えるかもしれません。

 

相談を終えて

今回のご相談では、家計の状況が大まかだったため、もう少し詳細な家計の財産や支出を調べることになりました。ご主人様のご意見も聞いて、iDeCoの掛金や開始タイミングをご相談することになっています。

一般論ではなく、自分の家計の数字を見ながら計算してみることでより納得できる準備やご夫婦での話し合いができますね。

この記事を書いた人
塚越 菜々子

不安な人を、選べる人に。 家計簿なしで貯まる仕組みで、 人と比べず、未来が選べるようになる。

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