在職中に企業型確定拠出年金に加入していて、フリーランスになった後、放置したらどうなる?

ご相談者様(Aさん) DATA

 

【年齢】 40代前半

【職業】 フリーランス

【性別】 女性

【家族構成】 夫と子供2人の4人家族

 

相談しようと思ったきっかけ

大手企業を退職後、フリーランスとして独立してから3年がたちました。

在職中企業型確定拠出年金(以下、企業型DC)をしており、

退職時に、フリーランスで働くのであれば、個人型確定拠出年金(以下、iDeCo)に移さなければいけないと説明がありました。

ですが、経済的に厳しい状況になりそうだったので、放置してしまいました。

 

最近ようやく余裕が出てきたのですが、あのお金が今どうなっているかわかりません。

一度専門家に相談しようと思いネットで探していたところ、黒木FPが地元でiDeCoのセミナーをされてたのでご相談に来ました。

 

ご相談内容

在職中、企業型DCをしていたご相談者様。

退職時に特に何も手続きをせず、3年間放置していました。

現状と今後の手続きについてアドバイスさせていただきます。

 

ご相談でお話しした内容

まずAさんの放置されていた企業型DCの現状からご説明いたします。

 

ご相談者様は勤務先を退職することによって企業型DCの加入者資格を失いました。

企業型DCの加入者資格を失なっても、原則60歳までお金を引き出すことはできません。

唯一の例外は脱退一時金ですが、掛金残高が1万5,000円以下であることなど一定の要件を満たす場合に限られています。

 

本来であれば、退職時に説明を受けたようにiDeCoにお金を移し換えなくてはいけませんでした。

このお金の移し換えを「移換」といいます。

加入資格喪失後6ヶ月以上放置していると自動的に国民年金基金連合会に移換される「自動移換」という残念な状況になります。

 

自動移換のデメリットは3つあります。

 

  • 自動移換される時企業型DCの残高はすべて現金化され、資産運用されません。

 投資信託で運用していれば増えていた可能性もありますので資産運用の機会損失といえます。

 

  • 移換に係る手数料、毎月の手数料が差し引かれ、ただ減る一方となります。

 

ご相談者様の場合、3年間放置していたことにより、かかった手数料は6,220円となります。

つまり企業型DCの残高から6,220円差し引かれてしまっているのです。

 

手数料の内訳は企業型DCから特定運営管理機関への移換手数料3,300円、

国民年金基金連合会への移換手数料1,048円、

自動移換されている期間は毎月の管理手数料月52円かかるため、

3年間で3,300円+1,048円+52円✕33ヶ月=6,220円となります。

 

※自動移換後の管理手数料は4ヶ月目から発生します(36ヶ月―3ヶ月=33ヶ月)。

 

  • 自動移換された期間は老齢給付金を受けるための加入者期間に算入されないため、

 年齢によっては受給開始の時期が遅くなる可能性もあります。

 

この点については、ご相談者様の年齢では受給開始の時期が遅くなることはありません

(通常通り60歳以降老齢給付金としてお金を引き出せます)。

 

 

ちなみに、自動移換された人は2020年1月時点で全国に87万人に達しています。

「国民年金基金:iDeCo(個人型確定拠出年金)加入等の概況」より

 

自動移換者の数が年々増えています。

ご自身の大切な老後資金ですから、手数料や時間を無駄にしないためにも、放置せず、お手続きしてください。

 

 

ご相談者様はフリーランスで働き始めたら、経済的に厳しい状況を予測していたため、放置したそうです。

放置ではなく、iDeCoの「運用指図者」いう方法があることを付け加えたいと思います。

 

運用指図者であれば、掛金を拠出せずとも企業型DCから移換した資産を運用することが可能だからです。

自動移換による手数料を差し引かれることもありませんでした。

 

次に今後のお手続きのご説明をいたします。

 

ご相談者様は現在フリーランスで働いており、国民年金の第1号被保険者ですから、iDeCoへ移換の手続きを行うことになります。

自動移換された国民年金基金連合会からiDeCoへの移換はご相談者様がお手続きをしなくてもiDeCoの口座を開設すれば、

自動的に資産と記録が移換されます。

DeCoの口座開設時には口座開設手数料2,829円と移換手数料1,100円が差し引かれます。

 

iDeCoの口座開設のお手続きはすべてご相談者様ご自身ですることになりますので、

iDeCoの運営管理機関を選ぶ際のポイントをお伝えします。

 

まず運営管理機関選びの一番のポイントはコストです。

 

企業型DCの時には会社が決めて、社員のみなさんは「言われた通り」加入手続きをされていたと思いますが、

iDeCoはご相談者様が選ぶようになります。

運営管理機関によって、口座管理手数料や投資信託など運用商品の手数料などコスト面で違いがあります。

できるだけ安い運営管理機関を選ぶことがポイントです。

 

また、商品ラインナップの数や種類、その他サービスも違います。

 

「iDeCoナビ」という運営管理機関を比較できるサイトもありますので、ぜひ比較検討してください。

 

相談を終えて

 

ご相談者様はフリーランスで働き始めて、ようやく余裕がある状況になっているとのこと。

この機会に、今後のことを改めて考えていきたいとのご要望をいただきました。

ご自身がお仕事でお忙しいので、運営管理機関選びから運用商品選びもサポートして欲しいとのことでしたので、

後日改めてお時間をいただくことになりました。

 

実はiDeCoの他にもフリーランスの方が利用できる老後資金作りとして「小規模企業共済」という制度もあります。

こちらもiDeCo同様税制優遇が受けられますので合わせてご紹介させていただきます。

 

フリーランスの方は公的保障が会社員と比べると手薄なのでご自身で備えていく必要があります。

お客様のこれからの人生、一生懸命伴走させていただきます。

この記事を書いた人
黒木 るみ

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