ご相談様データ
中野 佑太様(仮名)
【年齢】42歳
【職業】会社員
【性別】男性
【家族構成】妻(41歳)・娘(9歳)
【世帯年収】およそ840万円(妻は専業主婦)
【資産合計】およそ2,100万円(確定拠出年金を含む)
【住宅ローンの残債額】およそ1,100万円(2年後に住宅ローン控除が終わる時点)
相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)
住宅ローン控除がなくなるのを機にローン残額を全額返済したいと考えています。
県外に住む知り合いがFP相談を利用した話を聞き、利用を考えました。
インターネットで検索し、予約しました。
ご相談内容
2年後に住宅ローン控除が終わるので、一括返済したい。
一括返済しても家計は問題ないか。見て欲しい。
ご相談でお話した内容
ご依頼ありがとうございます。
住宅ローンの一括返済を考えていらっしゃるのですね。
毎年貯蓄もしっかりとされていらっしゃいますし、まとまった資産もお持ちです。
資産額は住宅ローンの残債額を上回っていますから、一括返済も可能であることが期待されますが、あくまで今だけの家計をみたものです。
今後お子様の成長とともに家計は変化しますので、全額一括返済しても問題ないかまずはライフプランシミュレーションを行って、家計への影響を測っていきましょう。
一括返済できそう。ただし急ぐ必要はなし
家計を見させていただきました。
さまざまな資料もご用意いただき大変だったかと思います。
ありがとうございました。
ライフプランシミュレーションをさせていただきました。
結論から申し上げますと、住宅ローン控除が終わった時点で、残りの住宅ローンを全額返済することも可能と思われます。
中野様の場合、住宅ローン控除が終わるのは2年後です。
頭金をしっかりとご用意された上で購入されており、物件価格に対し当初借り入れる金額は1,500万円と、低く抑えられていました。
2年後に住宅ローン控除が終わる時点で残る住宅ローンはおよそ1,100万円です。
収入が下がっていることが見込まれる60歳時点で退職金を除いても2,400万円程度の資産が見込まれますから、一括返済も可能と思われます。
ですが中野様の場合は、必ずしも住宅ローンの繰り上げ返済を急ぐ必要はないのではないかと思われます。
住宅ローンの繰り上げ返済の緊急度を下げるポイントが見つかったためです。
これからライフプランシミュレーションによりわかった、住宅ローンの繰り上げ返済の緊急度を下げるポイントを3つ、お話しさせていただきますね。
住宅ローンの繰り上げ返済の緊急度を下げるポイント①全期間固定金利で返済プランに安心感
もし仮に中野様が契約されている住宅ローンの種類が変動金利型や10年固定金利選択型だった場合なら、最近の金利上昇の圧力がかかっている状況と照らし合わせると、将来的に大きく金利が上がる可能性も考えられます。
そのため住宅ローン控除が終わる段階で一括までとは言わないまでも繰り上げ返済をされた方が、家計は安定するのではと思われます。
しかし、現在中野様がご契約されている住宅ローンは段階金利型の住宅ローンです。
変動金利型でも10年固定金利選択型でもありません。
11年目以降は金利が上がるものの、全期間を通じて金利はあらかじめ固定されており、返済額は見通すことができるようになっています。
住宅ローンの繰り上げ返済の緊急度を下げるポイント②安定した家計管理
中野様の家計は現在奥様が管理していらっしゃいますね。
今回、家計を見させていただきましたが、大きな使途不明金も特にありませんでした。
ご夫婦のパートナーシップと日頃からしっかりとした家計管理をされていることが想像されました。素敵ですね。
お子様の中学校進学が近づいてきています。
今後ご希望にもありましたおけいこ費用の増額を組み込みました。
奥様が今後も安定した家計管理をされていくだろうとの期待を踏まえると、住宅ローン返済の負担を今よりも重く感じるようには進まないのではないかと推測されます。
住宅ローンの繰り上げ返済の緊急度を下げるポイント③繰り上げ返済で万が一の保障減
中野様は住宅ローン契約時に団体信用生命保険の契約をされていらっしゃいますね。
団体信用生命保険(以下、団信)とは、住宅ローン契約をする際は、基本的に加入しなければならない保険です。
中野様は銀行の住宅ローンを利用されています。
団信は、住宅ローン返済中に住宅ローンの借り手である祐介様が死亡もしくは高度障害状態になってしまった際に住宅ローンの返済がチャラになる、というものです。
ちなみにフラット35で加入する団信の保障内容は少し異なる点もあります。
万が一の際には生命保険会社が住宅ローンの返済を肩代わりしてくれるので、残されたご家族に負債が残されずに済みます。
今回ライフプランシミュレーションをさせていただき、万が一の保障は不足していることがわかりました。
団信の保障を含めても、です。
現在祐介様がお持ちの死亡保障額はおよそ2,000万円です。
残念ながら、必要と思われる保障額には足りていません。
全額一括返済すると団信の保障はなくなり、手元の資金も大きく減ります。
不足する保障額は一層増えることが見込まれます。
万が一の際には、残されたご家族の暮らしは大きく変えなければいけないだろうことが想像されます。
保険の見直しと資産形成の方が優先順位高
中野様のご家庭の場合、現在祐介様が大黒柱となりご家族の稼ぎを担っていらっしゃいますね。
その場合、家計管理も役割分担しやすいですから、家計のこれからも比較的見通しやすいと言えます。
ただし、ご家族の稼ぎ手がおひとりということは、世帯主の万が一のリスクは相対的に高く家計に大きな影響を与える可能性も考えられます。
ライフプランシミュレーションにより、必要保障額と老後資金の不足があきらかになりました。
今後は繰り上げ返済よりも万が一の備えと老後資金の準備を優先して考えていく必要がありそうです。
ちなみに、万が一の保障を増やすというと、生命保険が候補にあがりますが、すべての不足する分を必ずしも生命保険の加入によって補填しなければいけないわけではありません。
万が一の保障額を保険で大きく増やそうとすると多くの場合、保険料の負担は当然ながら増えます。
だからこそ、その他に考えられる方法があるなら、そちらもあわせて総合的に考えていくことが無理のない家計づくりには大切です。
ご相談を終えて
中野様のお子様は小学3年生。これからおけいこを中心に教育費も増やしていきたいと思われていました。
加えて、生命保険や企業型確定拠出年金のことも気になっていたといいます。
一方で住宅ローンの返済は35年間。
佑太様が70歳の時点でやっと終わるといったところです。
ずっとお忙しくされてきた佑太様でしたが、このコロナ禍で在宅ワークが導入されるなど、生活に変化があり、これから長く続く返済を改めて考え、不安をお持ちになったそうです。
リタイア後の暮らしを含めた生活設計の視点で見れば、住宅ローンはもちろん退職前に完済しておきたいところです。
しかし、最近の住宅ローン金利は低く、固定金利で借入ができているのであれば、住宅ローンの繰り上げ返済を焦らなくてもいい場合も目立ちます。
中野様の場合もそうでした。
むしろ万が一の保障の不足という課題の方が優先すべきことであることがわかったのです。
その後、中野様とお話を進めさせていただく中で、以下のような対応を一緒に進めていきました。
団体保険も含めた生命保険の見直し
自動車保険の見直し
火災保険の見直し
企業型確定拠出年金とiDeCoの併用
生活費の見直し
奥様の就業も想定したライフプランシミュレーション
進めていく過程は大変そうでしたが、「これからのお金のもやもやがなくなった」と笑顔でおっしゃっていただいたことが印象的でした。