厚生年金になぜ共済が含まれているのですか?

ご相談者様DATA

(年齢)58歳  

(職業)国家公務員

(性別)男性

(家族構成)妻(58歳)長女(36歳)未婚同居 次女(34歳)既婚別居

      母(83歳)

相談しようと思ったきっかけ(アンケート抜粋)

実家の母は、一緒に暮らしていますが、最近は物忘れがひどくなり、身の回りの事もできなくなってきました。外にも出なくなり、一人でテレビを見ているだけの生活を送っています。

最近は歩くのもふらふらで危ない状況です。私自身は公務員としてずっと働いてきて60歳まではきちんと働きたいと考えています。その後も再雇用制度があり希望で働くこともできます。ですが、母の事を考えると60歳で仕事を辞めてそばにいてあげたいと思うようになりました。年金でやっていけるか気になって届いたねんきん定期便を見てみましたが

厚生年金の中に共済年金が入っていました。共済年金だったはずですが、何か変わったのでしょうか?60歳の退職以降は年金で生活していくことになりそうです。生活していけるのか知るためにもねんきん定期便の見方を教えていただこうと思いました。

ご相談内容

ご相談者の健也さん(仮称)は、国家公務員として大学卒業後ずっと働いてきました。60歳まではしっかり働き、60歳以降は最近介護が必要な状態になってきた母の面倒を見ながら生活していこうと退職を考えています。年金暮らしになって生活していけるのか不安を感じていらっしゃいました。ねんきん定期便で受け取れる金額を確認し、計画的にお金を使っていきたいと考えていらっしゃいます。ねんきん定期便を見て疑問に思ったことが気になっていました。なぜ共済年金が厚生年金のところに書かれていたのか教えて欲しいとのこと。そして、ねんきん定期便から将来の年金額を確認しておきたいというご相談でした。

奥様は結婚後専業主婦で、年金はほぼ国民年金のみになります。奥様はご自身のご両親の介護も行っているため、ご自分だけの年金で見積りたいとのことでした。

ご相談でお話した内容

厚生年金になぜ共済が含まれているのですか?

3つの内容についてお答えしました。

1.共済年金は厚生年金に統合されています

2.ねんきん定期便の見方について

3.60歳からの資産の状況について

1.共済年金は厚生年金に統合されています

共済年金の何が変わったの?

年金制度について見てみると、1階部分に国民年金、2階部分に厚生年金、そして、公務員にはさらに3階部分に職域加算がついていました。少子高齢化で人口減少が続く日本の年金事情を考えて公務員だけの特典だった職域加算も2017年10月から厚生年金に統合され無くなりました。健也さんはそのことをよく理解されていませんでした。

公務員には職域加算の代りになる共済組合の独自制度ができました。掛金を労使折半で負担する年金払い退職給付制度です。制度変更時健也さんは56歳でしたので、。過去分の加入歴については、きちんと職域加算として年金に加算されます。2017年10月以降の加入期間が年金払い退職給付金となります。

モデルケースでは、職域加算は年額約2万円です。年金払い退職給付は約1.8万円、半分が定期年金、そして半分が終身年金として受け取ることができるようになります。

健也さんの厚生年金期間は4年間分ですので、減額される部分は限定的です。今までの掛金の分が減らないことにほっとされました。退職後の収入がなくなることを考えると少しでも多く受け取りたいところです。

年金払い退職給付については下記の図をご参照ください。

「年金払い退職給付」について
http://www.soumu.go.jp/main_content/000229824.pdf

掛金は給与の金額に合わせて労使折半負担となります。厚生年金の掛け金に上乗せして積立していくことになります。

年金払い退職給付は退職給付なので、職域加算のように遺族年金の金額には含まれません。また、半分は期間を選べますが有期年金。半分は終身年金として生きている限り受け取ることができます。

2.ねんきん定期便の見方について

昭和35年1月生まれの健也さんは64歳から、部分年金を受け取れることをご存知でしたがねんきん定期便の見方が良く分かりませんでした。また65歳からもらえる年金で生活していけるのか確認しておきたかったのです。

最近のねんきん定期便には、次のように書かれていました。

※ねんきん定期便は計算事例に基づくものであり、個人の情報ではありません。

健也さんの疑問は、厚生年金保険計のところに記載があったことです。平成27年10月から一般厚生年金、国家公務員共済厚生年金および地方公務員厚生年金、そして私学共済厚生年金と3つの制度が1つになりました。お忙しくKKRの情報誌もほとんど見ていなかった健也さんにも厚生年金に変わったことをご理解いただけたようです。

では実際にどれくらいの年金が受け取れるかをご一緒に見ていただきました。64歳からは特別支給の老齢厚生年金が受け取れます。職域加算部分は21万円ほどで合計年額147万円ほどです。1カ月当たり約12万円です。そして、65歳からは国民年金も加わり、年額で224万円ほど毎月18万7千円ほど受け取れる見込みです。

実は50歳以上のねんきん定期便は、発行時点の給与等の条件が60歳まで変わらないことを前提とした見込額なので、その後給与等に大きな変更が生じると見込額も変動するのですが、健也さんは60歳までの間の年収変動は特にないだろうとのことでしたので、ねんきん定期便記載の見込額とほぼ同額の老齢年金と予測することができます。

奥様は同じ年齢のため加給年金(家族手当)はありません。1か月の年金額がわかったことで使える金額のイメージができてきました。59歳になるとさらに詳しいねんきん定期便が届きます。水色の封筒に入ってきますから再度加入履歴や年金額をご確認いただくようお話しました。

3.60歳からの資産状況について

老後に使える年金見込み額はどれくらいか、シミュレーションしてみました。

将来の年金額は59歳の時に送られてくる大きな封筒に入ったねんきん定期便を確認していただくとわかります。このねんきん定期便は50歳未満では、掛金の実績に応じた年金額が記載され、そして50歳からはそのまま今の状態が継続したものとして計算されます。59歳時に送られてくる書類はほぼ受け取り金額に近い数字になっています。健也さんの場合は来年送られてきますので、その時ご確認いただくことになります。

今回は今のお手元のねんきん定期便をもとに計算をしてみました。

さきほどの計算から、64歳から約12万円、65歳から約18万7千円の見込みです。その数字から計算をしていきます。

そうするとこんな計算になりました

64歳から65歳まで1年間と65歳から100歳までの35年間で計算

12万円×12月×1年=144万円 18.7万円×12月×35年=7,854万円

100歳までの年金見込み金額は7,998万円となります。

ちなみに80歳までの総額は3,366万円となります。

これは、職域加算部分は年金払い退職給付の減額部分や、少子高齢化の影響で将来の受け取り額の変更等は考慮していません。

総額でざっくり考えてみると100歳まで、年間約200万円の年金が使える計算になります。

老後に使える財産はどれくらい?

健也さんの家計の資産の状況

項目資産
普通預金200万円
定期預金1,300万円
保険・年金800万円
財形貯蓄1,000万円
退職金(見込み)2,000万円
合計5,300万円

保険は終身保険に300万円、500万円は60歳から65歳の5年間毎年100万円受け取れる定期年金で準備されています。

60歳からのリタイア後の支出

リタイア後の支出には ①生活費 ②イベント費 ③医療費などがあります。ここでもざっくりと生活費の中に含めて計算をしてみます。健也さんの家計の現在の支出は30万円ほどです。退職後は交際費や通勤の車関連費が減少するので25万円で生活をしていけると考えています。この数字を入れて計算してみました。

その他に健也さんの希望のイベントをプラスしています。 

項目金額(予算)内容
生活費25万円食費、医療費、光熱費など
趣味3万円ゴルフ、地域野球部の費用など(80歳から1万円で計算)
旅行2万円年間24万円使えるように計画

年間で360万円 40年間で1億3740万円です。生活費に加えて今までなかなか出来なかったゴルフや野球もしたいご希望です。その予算も入れて計算をしてみました。

60歳以降の収支

収入 年金と金融資産=1億3300万円 支出 生活費とイベント費=1億3740万円

健也さんは仕事を辞めても、今までの蓄えや退職金、そして年金を合わせていくと100歳までの長寿を考えても趣味を楽しみながら生活していけそうです。良かったですね

ただ、両親の介護は両親のお金で賄えるかどうかなど双方の親の介護にかかるお金の予測がまだ立たないことや相続の見込み、健也さんご自身の医療や介護にかかるお金の検証が終わっていないことなどあり、これからご自身で少しお金の整理をしてから再度お目にかかることになりました。また、余裕を作るための投資信託活用のご提案をさせていただきました。投資は行ったことのなかった健也さんですが、少額なら試してみたいとのことでしたので、リスクを軽減させながら資産を増やせる方法つみたてNISAのご案内をしました。次回詳しくお話させていただくことになりました。

まとめ

国家公務員なら退職金も年金も優遇されているイメージが強かったですが、公務員の特典は減らされてきています。変化に対応していくためには、公務員であっても将来の事を調べてご自分に当てはめていく事が必要な時代になっていますね。

ねんきん定期便から将来の生活をイメージして収支のシミュレーションをすることで、リタイア後の1年間に使ってもよい金額が把握でき、生活を楽しむことができるようになるのではないでしょうか?健也さんのほっとされている姿が印象的でした。お母様思いの優しい方です。また奥様もご実家のご両親が弱くなり、定期的に通う日々を送られています。お二人とも趣味やご旅行などを楽しむことも忘れず、これからの介護のストレスケアもなさりながら助け合ってセカンドライフを楽しんでいただきたいと思います。まずは今のお仕事をがんばってくださいね。

この記事を書いた人
木田 美智子

「今と未来を幸せに」の老後資金計画を実現!あなたらしくの初めの一歩をデザインします。

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