ご相談者DATA
【年齢】39歳
【職業】パート
【性別】女性
【家族構成】夫(42歳)、母(認知症)
相談しようと思ったきっかけ
半年前に結婚をしました。現在、夫の扶養に入っていますが、過去に年金未加入期間があり、このまま放置していいものか、気になっています。私たちはいわゆる晩婚なので、これからの貯蓄、特に老後のお金についてもしっかり考えていかなければと思っていますが、未だに何から始めて良いか分からずにいます。
iDeCoについても気になっていますが、メリットがよくわかりません。恥ずかしながら独身時代の貯蓄も少ないので、今後、家庭を築き上げていく上で少し不安を感じています。
iDeCoのことを調べていると、FP相談ねっとのサイトにたどり着きました。前田さんは、私のように結婚をきっかけとする相談を多く受けていらっしゃったようでしたので相談をお願いしました。
相談内容
私は35歳まで派遣で働いていましたが、母が認知症を発症したことをきっかけに仕事を辞め、現在は週3回のパートをしています。パート先では社会保険に加入しておらず、年金を納めていません。また、20代のころ、フリーターの経験があるのですが、その期間も年金を納めていません。
母の介護にかかるお金は母の年金から支払っていたので、年金はありがたいものだと認識しています。同時に私自身の年金はどうなるのか気になりつつも手続きをしていませんでした。私は、年金をもらえるのでしょうか?またiDeCoをした方が良いのでしょうか?
さらに、いずれはマイホームを購入したいと思っています。マイホームを購入できるのか、今後の家計を含めて相談したいです。
ご相談でお話しした内容
相談者様のご家庭は、母1人子1人の2人家族でした。お母様を介護するのは相談者様しかおらず、今までデイサービス等を利用しながら、介護とパートの両立を頑張られてきたとのこと。お一人で介護されてきたご苦労からか、とてもしっかりされている方でした。
さて、相談者様は、年金未加入期間があるため、将来年金をもらえるのか気にしていらっしゃいます。そこで、相談者様の年金加入状況をお伺いしたところ、下記のような状況でした。
相談者様は、短大卒後、一度就職したものの退職し、3年間ほどフリーターをしていました。そして25歳から35歳までは派遣社員として働き、以降39歳で結婚するまでの4年間はパート勤務です。このうち年金未加入期間は、フリーター期間と結婚するまでのパートの期間です。
老齢年金の受給要件
老後に年金をもらうためには、原則10年以上の加入期間が必要です。相談者様の場合、現時点で会社員と派遣社員期間、合計12年の加入期間があり、現在はご主人の扶養に入られているとの事ですから、受給要件は満たしています。
とはいえ、10年年金に加入しているから大丈夫。というわけではありません。問題は、もらえる年金の金額です。相談者様の場合、いくらもらえるのでしょうか。相談者様にはねんきん定期便を持参していただきました。
いくら年金がもらえるか
見るべき箇所は、加入実績に応じた年金額の欄、赤枠の①と②です。
日本年金機構HPより
この金額は、現時点で計算された年金額が記載されています。金額が少ないですが、将来もらう年金額が記載されているわけではありませんので、ご安心ください。
将来もらう年金の金額は今後の働き方によって、大きく異なります。相談者様に今後の働き方について伺ったところ、お母様のことも気になるし130万円の壁を意識して、ご主人の扶養に入り続けることを想定されているようです。
130万円の壁は、ご自身が社会保険料を支払うかどうかの境目の年収です。年収が130万円未満の場合、ご主人の扶養として保険料は免除されますが国民年金へ加入したこととして認められます。しかしお勤めではありませんので厚生年金には加入しません。
それを踏まえた上で、将来の年金受給額について、お伝えしました。
赤枠①老齢基礎年金
今後60歳まで年金に加入しますので、その分が記載された金額より増えます。これから60歳まで扶養に入ると仮定すると、もらえる年金額は約64万円になると思われます。
赤枠②老齢厚生年金
今後、厚生年金に加入することはありません。②に記載されている金額が将来もらえる厚生年金の金額です。記載された金額は19万8千円でした。
厚生年金と国民年金を合計すると、83万8千円です。相談者様は年金をもらえることがわかり安心したものの、その金額の少なさに驚き、「全然生活できないですね」とおっしゃっていました。
もらえる年金を増やす方法
しかし、年金を増やす方法はあります。
相談者様には、年金の未加入期間があります。相談者様自身も気になっていたようですが、未加入期間の年金を追加で収めると、もらえる年金は増えます。
そもそも、国民年金は納め忘れがあったとしても通常2年前まで遡って納めることができます。2年を過ぎると時効で納めることはできませんが、平成30年9月30日までであれば、5年前まで遡って保険料を納付できる「5年の後納制度」があります。(この制度は終了しました)
相談者様の場合、後納できるのは35歳(平成26年)以降の保険料です。22歳から25歳の間のフリーター時代の保険料は時効により、納めることができません。
平成30年9月30日までに納めることができる国民年金は、下記の通りです。
日本年金機構 後納制度リーフレットより
仮に35歳から39歳の4年間の未納保険料を納めたとすると、将来の年金額は年間7万8千円ほど増加します。一方、納める保険料は4年間分で77万円です。かなり高額ですが、もらえる年金が年間7万8千円増えるのであれば、77万円を支払っても、10年以上受給すれば元が取れる計算になります。
しかし、すぐに支払える金額ではありません。とはいえ、今まで介護をされてきた相談者様は、年金の必要性を強く実感されているようで、「特に女性は長生きですし、10年で元が取れるなら支払ったほうがいいですよね。全額支払えないかもしれないけれど、なるべく支払う方向で考えたいです。」とおっしゃっていました。
また、年金を増やす方法はもう一つあります。それは、厚生年金に加入する働き方をすることです。相談者様はお母様のことが気になるため、扶養の範囲内で働くと考えられているようです。
しかし、来月からお母様を施設に預けることになるそうです。そうなると、生活はずいぶん変わるため、様子を見ながら働く時間を増やしていくことは可能です。働く時間が増えれば、厚生年金に加入することになりますから、将来の年金も増えることになります。相談者様自身も、介護にかかる時間が減れば、積極的に働きたいという考えがあるようです。
厚生年金に加入するとお給料の約0.55%が将来の年金として受け取れる計算です。例えば給与25万円で10年だと65歳からの老齢厚生年金が約165,000円増やせます。(概算での計算例 250,000x0.55%x120ヶ月)。20年頑張れば330,000円です。今の頑張りで将来の自分の年金が増えるのですから、励みにもなりますね。
まとめ
相談者様は、今後、住宅購入も希望されています。未納の年金保険料も納める予定ですし、働いて世帯収入を上げられるに越した事はありません。これからもお母様に対する心配事はたくさん出てくるとは思いますが、結婚されたことですし、今後の人生は、自分のことをもっと大切にして幸せなご家庭を築き上げていただきたいと思います。
相談者様からは、「今まで、母のことばかり考えていて、自分のことは後回しにしてきました。でも、相談をして、やはり自分の将来のことも考えておかないと、生きていけなくなるかもしれない、ちゃんと対策を取らないと。という気持ちになりました。気になっていた年金のこともクリアになり、相談してよかったです」とご感想をいただきました。
なお、iDeCoと住宅購入についての相談は、後日させていただくことで今回の相談を終了しました。