こんにちは。神奈川(湘南、茅ヶ崎)でFPと社会保険労務士の二刀流で活動している三藤桂子です。
夫婦とお金研究会では、子育てをするひとり親家庭について、自身の経験を踏まえてお伝えしています。
最近、よく耳にする「働き方改革」。正式には「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が、いよいよ4月1日から段階的に施行されます。実際私たちの生活にどのように関わってくるのでしょうか?
一億総活躍社会の実現とは?
日本の人口は2050年には1億人を割り、高齢化率が40%に近づくといわれています。一方、労働力人口(15歳以上の人口のうち、「就業者」と「完全失業者」を合わせたもの)は少子化もあり、減少の一途をたどっています。
そこで国はみんなが活躍できる社会の実現にむけての取り組みを打ち出しました。
首相官邸HPより
働き方改革は、一億総活躍社会の実現に向けた最大のチャレンジだそうです。
働き方改革とは?
『働く方々がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する働き方を総合的に推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置を講じます(厚生労働省HP)。』
日本の人口は2008年をピークに減少に転じています。さらに少子高齢化によって労働人口も減り、労働力不足となります。この状態を解消させるためには、多様で柔軟な働き方を選択できるようにすることで、労働生産性を向上させることが必要なのです。そのために働き方改革は次の3つが柱になっています。
✔長時間労働の是正
✔多様なワーク・ライフ・バランスの実現
✔正社員と非正規社員の不合理な待遇差の解消
「働き方改革」を女性、シングルマザーの立場から考えてみます!
長時間労働の是正
長時間労働は時には過労死につながる恐れがあります。健康を確保する上でも長時間労働を是正することが必要であり、長時間労働=生産性の向上になるとは必ずしも限らないのです。長時間労働を改善すると、仕事と家庭生活の両立の実現につながり、男性の育児や家事への参加にもつながります。出産・育児と仕事の両立が難しく離職を考える女性には朗報です。
多様なワーク・ライフ・バランスの実現
個々の事情に応じて、多様な働き方を選択できる社会を実現することは、これからの労働力人口を増やす戦力として、女性、特に子育てをしている働く女性や高齢者が期待されます。フレックスタイム制やテレワークの活用拡大、年次有給休暇の取得が見直されることにより、フルタイム勤務を諦めていた女性の社会進出を促すこともできます。特に在宅ワークが広く可能になると、安心して子育てとの両立が実現できます。また保育園の待機問題も緩和されそうです。
正社員と非正規社員の不合理な待遇差の解消
家事・育児・介護等によって非正規社員(パートタイム労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)として働かざるを得なかったにも関わらず、同じ会社の正社員との間で、不合理な待遇差をなくすための規定を整備します。育児や介護等で正社員より非正規社員を選んだ女性の働く意欲の向上にもつながります。今まで正社員と同じ業務内容、責任ある仕事をしていたにも関わらず、待遇の差があったパートの方にとっては、納得できる規定です。
ワーク・ライフ・バランス
日本の女性はかつては結婚すると仕事を辞めて家庭に入るといった家族モデルが主流でしたが、これからは少子高齢化により、労働力人口の減少などを考えると、女性の社会進出は必須になってくるのではないでしょうか?2017年、総務省の就業構造基本調査によると、25~39歳の女性のうち働く人の割合が75.7%と過去最高を更新しました(15歳~64歳の女性の仕事をしている人の割合は68.5%、)。
女性の労働力率を年齢階級別にグラフを見ると結婚、出産、育児で退職する年齢階級(30歳~39歳)に労働力が落ち込む、M字カーブが近年解消されつつ、台形に近づいてきています。「結婚=退職」「寿退社」という考え方が改められつつあり、結婚しても、出産しても仕事を続けられる社会整備が続けられています。
一方、女性の働き方は様々であり、正社員として働き続ける人、非正規社員として自分の都合のよい時間に働きたいと自発的に選ぶ人も増えています。その反面、非正規社員の女性のうち約3割は税優遇を考え、非正規社員を選び就業調整する女性が多いのも事実です。
それぞれの生活環境によって働き方は変わってくると思いますが、個人の能力が発揮でき、生きがいを感じられる働き方ができるようになることを望みます。
シングルマザー(母子世帯)の実態
2015年度、厚生労働省の「ひとり親家庭等の現状について」によると、この25年間で母子世帯は1.5倍に増えたそうです。2016年度、厚生労働省の全国ひとり親世帯等調査結果によると母子世帯の母の就業状況をみると、81.8%が就業しています。調査時点の雇用形態は、「正規の職員・従業員」が44.2%と、前回2011年の調査結果39.4%に比べて、正規職員の割合が増加しています。
母子家庭は一人で子育てと仕事を両立することになるので、配偶者のいる女性の就業体制よりさらに時間的な制約が厳しく、不本意ながらも、正社員ではなくパートやアルバイト等を選ぶ方も多くいます。
さらにひとり親の母子世帯の平均年間就労収入は正社員で270万円、非正規社員は125万円となっています(厚生労働省ひとり親家庭等の現状より)。前段で女性の社会進出が進んできているということをお伝えしましたが、まだまだ母子家庭の処遇の改善は遅れているようにも感じられます。
また、ひとり親家庭の約5割が貧困だというデータもあります(厚生労働省平成28年国民生活基礎調査より)。親としての責務としての養育費の取り決めをはじめ、児童扶養手当の支給や医療費の助成、児童育成手当など、地方自治体から支給される手当は、ひとり親にとっては重要な収入源となっています。国が掲げている「一億総活躍社会の実現」にはさらなる支援が必要ではないでしょうか?
ワーク・ライフ・バランスの実現のために
働き方改革で多様な働き方を選択できるようになると、女性、特にシングルマザーの働き方に変化が出てくるのでしょうか?
✔年次有給休暇の取得申請がしやすくなる(1人1年あたり5日間、企業に義務づけ)
✔テレワーク、フレックスタイム制度の拡充は、子育てしながらでも働きやすくなる
✔正社員と非正規社員の不合理な処遇の改善により、どのような雇用形態を選択しても、待遇に納得して働き続けられる
さらに企業が積極的にひとり親を雇用できるように、企業に対して現在どんな助成金があるのか調べてみました。
✔キャリアアップ助成金(正社員雇用等転換コース、短時間正社員コース)
まとめ
女性の働く環境は改善されてきてはいるものの、第一子出産を機に約5割の女性が離職するなど出産・育児を理由に離職する女性は依然として多いという現状もあります(厚生労働省「働く女性の実情」より)。
今後、女性の活躍の推進の重要性が不可欠といわれる中、シングルマザーにとっても働き方改革は確実に追い風になってくると思います。
シングルマザーを支援する手当をはじめ、働き方改革によって企業と行政のさらなる後押しがシングルマザーの処遇の改善、意識改革につながり、輝く社会になるように切に願います。