大地 恒一郎

範囲の狭すぎるFP3級過去問解説 投資信託(その1)  

こんにちは。FP相談ねっと認定FPの大地恒一郎です。

FP資格のうちの一つ、FP技能検定の3級試験は、現在、年に3回行われています。
しかし、今年の5月24日の第2回試験は、新型コロナの感染拡大により中止となりました。

次回の試験は9月13日と発表されており、いよいよ7月6日から受検申請期間がスタートします。
3級試験の内容は、以下の通りです。(日本FP協会のホームページより)

そこで、試験科目の中でも苦手の方が多いと思われる「金融資産設計」(CFP試験でも合格率が低い科目)の、特に取っ付きづらそうな「投資信託」という極めて狭い分野にフォーカスして、過去問の解説をさせていただこうと思います。

まだ試験の実施が確定したわけではありませんが、準備は早い方がいいでしょう。
参考にしていただけますと幸いです。

では、第一回の今回は、2017年5月の問題を見ていきましょう。

2017年5月28日実施 第2問(42)

追加型株式投資信託を基準価額1万1,000円で1万口購入した後、最初の決算時に1万口当たり500円の収益分配金が支払われ、分配落ち後の基準価額が1万800円となった場合、その収益分配金のうち、普通分配金は(①)であり、元本払戻金(特別分配金)は(②)である。

1)①300円 ②200円
2)①200円 ②300円
3)①0円       ②500円

解説

この問題は、学科試験問題の一つです。
投資信託の収益分配金に関する問題は、このパターンで出題されることが多いので、押さえておきましょう!!

過去3年間(2017~2019年度)、各年度に1問は、このパターンで出題されています。
(2017年度5月、2018年度1月、2019年度1月)

そのパターンとは、収益分配金の金額を普通分配金と元本払戻金(特別分配金)に分ける問題です。

それではまず、投資信託の課税方法について、押さえておきましょう。
追加型株式投資信託は、個別元本方式により課税されます(2000年4月から)。

個別元本方式とは、投資家(受益者)毎に購入時の基準価額を課税上の購入価額とすること、です。
このとき、個別元本には購入時手数料や消費税は含まれません。

そして、同じ投資信託を複数回購入した場合は、購入の都度、受益権口数で加重平均されます。
下の図では、点線の右側が、複数回購入した場合の個別元本の求め方になります。


そして、投資信託の収益分配金は、普通分配金と元本払戻金(特別分配金)に分けられます

普通分配金とは、個別元本(購入価格)を上回る部分 の分配金のことです。
この普通分配金は、源泉徴収の対象とされ、一定の税率が課税されます。

そしてポイントは、分配後基準価額(分配金を支払った後の基準価額)が個別元本よりも高い場合は、支払われた全ての分配金は普通分配金となる、ということです。

下図は、「ひふみプラス」という投資信託の交付目論見書から抜粋したものですが、分かりやすく書かれています。


次に元本払戻金(特別分配金)の説明です。
元本払戻金(特別分配金)とは、個別元本(購入価格)の払戻しに相当する部分のことです。

元本払戻金(特別分配金)は、自分が支払った元本の一部なので、非課税扱いとなります

そして第二のポイントは、分配後基準価額が個別元本よりも低い場合は、支払われた分配金の一部もしくは全部が元本払戻金(特別分配金)になる、ということです。

先ほどと同じ、「ひふみプラス」の交付目論見書からの抜粋です。


以上を踏まえて、この問題を見ていくと、

◆購入価額は基準価額1万1,000円
◆収益分配金は1万口当たり500円
◆分配落ち後基準価額は1万800円

ということは、個別元本は、購入時基準価額=11,000円となります。
そして、分配落ち後基準価額(分配金を支払ったあとの基準価額)=10,800円とあります。

分配落ち後の基準価額が個別元本より低いので、
個別元本を下回る部分は、元本払戻金(特別分配金)となります。

つまり、11,000円ー10,800円= 200円が、元本払戻金(特別分配金)になります。
すると普通分配金は、収益分配金から元本払戻金(特別分配金)を差し引いた残りの金額、
収益分配金500円ー元本払戻金200円= 300円ということになります。

解答

以上から、正解は、1)となります。

追加型株式投資信託を基準価額1万1,000円で1万口購入した後、最初の決算時に1万口当たり500円の収益分配金が支払われ、分配落ち後の基準価額が1万800円となった場合、その収益分配金のうち、普通分配金は(①)であり、元本払戻金(特別分配金)は(②)である。

1)①300円 ②200円
2)①200円 ②300円
3)①0円       ②500円

解き方まとめ

それでは、もう一度、解き方の順序を確認をしておきます。

(1)購入時基準価額(=個別元本)を確認する
(2)収益分配金を確認する
(3)分配落ち後基準価額を確認する
(4)元本払戻金(特別分配金)を先に求める
(5)収益分配金から元本払戻金(特別分配金)を差し引く
   この値がプラスの場合は、その額が普通分配金となります。
   この値が0かマイナスの場合は、普通分配金はゼロです。

この問題に当てはめてみると、次のようになります。

① 購入時基準価額  = 11,000円…個別元本
② 収益分配金    =      500円
③ 分配落ち後基準価額= 10,800円
④ ①ー③      =    200円…元本払戻金(特別分配金)
⑤ ②ー④      =      300円…普通分配金 

④が、ゼロかマイナスの場合は、元本払戻金(特別分配金)は0円で、全額普通分配金となります

(おまけ)類似した過去問

今回は、2017年5月の問題をピックアップしましたが、おまけとして類似問題を2つ、ご紹介します。正解も一緒に載せておきますので、解き方を当てはめて、ご自身で解いてみてください。

2019年1月27日実施 第2問(44)

追加型株式投資信託を基準価額1万2,000円で1万口購入した後、最初の決算時に1万口当たり400円の収益分配金が支払われ、分配落ち後の基準価額が1万1,700円となった場合、その収益分配金のうち、普通分配金は(①)であり、元本払戻金(特別分配金)は(②)である。

1)①100円 ②300円
2)①300円 ②100円
3)①400円   ②300円

2020年1月26日実施 第2問(42)

追加型株式投資信託を基準価額1万800円で1万口購入した後、最初の決算時に1万口当たり300円の収益分配金が支払われ、分配落ち後の基準価額が1万600円となった場合、その収益分配金のうち、普通分配金は(①)であり、元本払戻金(特別分配金)は(②)である。

1)①100円 ②200円
2)①200円 ②100円
3)①300円   ②0円

今回は以上になります。次回は2017年9月の問題を見ていく予定です。