こんにちは。FP相談ねっと認定FPの大地恒一郎です。
投資信託の分野に絞った、FP3級過去問解説の3回目は、過去を振り返ってみても、出題頻度が比較的多い「運用管理費用(信託報酬)」と「上場投資信託(ETF)」について、見ていくこととします。
例題は、2017年度試験から2問選びました。
早速問題をみていきましょう。最初は、「運用管理費用(信託報酬)」の三肢択一問題です、
2017年9月10日実施 第2問(41)
投資信託に係る運用管理費用(信託報酬)は、信託財産から差し引かれる費用であり、( )が間接的に負担する。
1) 販売会社
2) 投資信託委託会社
3) 受益者(投資家)
第2問(41)解説
さて、運用管理費用(信託報酬) とは、投資信託の運用・管理の対価として投資信託財産から支払われる費用のことです。(投資信託協会ホームページより)
最近は、運用管理費用(信託報酬)という表記をするようになりましたが、カッコ内の信託報酬が正式な用語となります。
「投資信託及び投資法人に関する法律」(投信法)では、第2条(定義)には登場しませんが、第4条(投資信託契約の締結)に「受託者及び委託者の受ける信託報酬」という表現が出てきます。
いずれにしろ、運用管理費用(信託報酬)は、投資信託という金融商品において、投資家(受益者)にとっての費用(コスト)であり、投資信託の運営者3者(委託会社、受託会社、販売会社)にとっての報酬(収益と)なっている、大事な項目となります。
その運用管理費用(信託報酬)は、どのように投資信託財産から支払われているか、というと、投資信託は毎日、基準価額の計算が行われますが、その際に、投資信託財産から差し引かれています。
従って、投資家(受益者)は、投資信託の保有期間中、毎日、運用管理費用(信託報酬)を間接的に負担していることになります。
では、その運用管理費用(信託報酬)はどのような構成になっているのでしょうか。
〇委託者報酬:投資信託委託会社が受け取る報酬
この中から販売会社に代行手数料を支払う
〇受託者報酬:信託銀行等が受け取る報酬
さきほど、投資信託の運営者3者と説明しましたが、ここでは2者しか登場しません。投資信託が作られるときに契約する投資信託契約は、委託会社と受託会社の契約です。
投信法でも第4条(投資信託契約の締結)では、「受託者及び委託者」が登場していますが、販売会社は登場しません。
上で説明しているように、委託会社は投資信託契約とは別に、販売会社とその投資信託に関する販売に関連する契約を締結し、そこで販売会社の代行手数料を支払う旨を定めているのです。
投資信託の取扱い説明書である、「交付目論見書」の費用のページには、分かりやすく、3者の「運営管理費用(信託報酬)」の内訳と役割が記載されています。
ということで、解答を見ていきましょう。
第2問(41)解答
投資信託に係る運用管理費用(信託報酬)は、信託財産から差し引かれる費用であり、( )が間接的に負担する。1) 販売会社 ✕2) 投資信託委託会社 ✕
3) 受益者(投資家) 〇
なお、類似問題が2018年9月9日実施第2問(41)として出題されています。
この問題は、問題文・選択肢がこの問題と全く同じで、違っているのは選択肢の並び順でした。
では次の問題を見てみましょう。
これはETFに関する問題です。ETFもよく出題されます。
2018年1月28日実施 第1問(12)
東京証券取引所に上場されているETF(上場投資信託)には、海外の株価指数などに連動する銘柄もある。
(1) 〇
(2) ✕
第1問(12)解説
さて、ETF(上場投資信託)の第1号は、2001年7月に上場されました。
ETFは、『証券取引所に上場し、株価指数などに代表される指標への連動を目指す投資信託で、「Exchange Traded Funds」の頭文字をとって、ETFと呼ばれています。
そして、ETFは、東京証券取引所上場規程に次の通り規定されています。
「投資信託財産等の一口あたりの純資産額の変動率を特定の指標の変動率に一致させるよう運用する旨」(第1104条1項(2)b(a))
これは何を言っているかというと、特定の指標、つまりインデックスの変動率に一致させるよう運用する投資信託、ということです。
つまり、現在の規定では、ETFはインデックスファンドに限定されているということになります。
現在、東京証券取引所には、国内外の株価指数連動型、国内外の債券指数連動型、国内外のREIT指数連動型、レバレッジ型など、全221銘柄(外国籍含む)が上場されています。(2020年7月1日現在)
国内外の株価指数連動型の例は以下の通りです。
(国内)東証株価指数(TOPIX)
日経平均株価
JPX日経400 など
(海外)S&P500指数
ダウ・ジョーンズ工業株30種平均株価
MSCI-KOKUSAIインデックス など
ETF(上場投資信託)は、証券取引所に上場され、市場において売買が行われています。ここが、一般的な投資信託と異なっているところです。
そのため市場が開いている間は、ETFの売買を上場株式と同じように行うことができます。
取引の仕方は上場株式と同様で、「指値注文」や「信用取引」を行うことができるのも、一般的な投資信託とは異なるETFならではの特徴です。(投資信託協会ホームページより)
また、ETFは、次のような理由で信託報酬が低く設定されているものが多くなっています。
■信託報酬のうち販売会社に支払う部分がない
■インデックス運用なので、企業調査などのコストが少ない
■現物拠出型の場合、株式などの売買を行う必要がないため、売買に係るコストが少ない
(投資信託協会ホームページより)
信託報酬のうち販売会社に支払う部分がない点や、現物出資型などの説明は割愛しますが、信託報酬の水準が低いという点は、押さえておきましょう。
説明が少しそれてしまいましたが、試験では、連動する指数の例を挙げて、正誤を問う問題と、証券取引所における取引の仕方について、問われる傾向が高いようです。
ETFの連動する指数としては、上記の他に、東証マザーズ指数、東証REIT指数、FTSE世界国債インデックス(除く日本)、金価格、WTI原油先物、シカゴ小麦、シカゴ大豆などがあります。
第1問(12)解答
東京証券取引所に上場されているETF(上場投資信託)には、海外の株価指数などに連動する銘柄もある。
(1) 〇(2) ✕
次回は、NISA口座関連の問題を見ていく予定です。