大地 恒一郎

範囲の狭すぎるFP3級過去問解説 投資信託(その5)

こんにちは。FP相談ねっと認定FPの大地恒一郎です。

今回は、2019年5月26日実施の試験問題から2問、ご紹介します。

この2問は、投資信託の種類投資信託の運用手法の問題で、ある意味、どちらも分類に関連する問題といえるかもしれません。

ではまず、2019年5月26日実施第1問(12)です。

2019年5月26日実施 第1問(12)

投資信託約款に株式を組み入れることができる旨の記載がある証券投資信託は、株式をいっさい組み入れていなくても株式投資信託に分類される。

(1) 〇
(2) ✕

第1問(12)解説

この問題は、投資信託を制度的な側面からみた場合の分類に関するものです。
その分類とは、「投資信託約款に株式に投資できるかどうか、の記載があるかないか」による分類となります。

「投資信託及び投資法人に関する法律施行規則」では、「第13条第二号イ」に公社債投資信託が規定されています。その「第13条第二号イ」には、公社債投資信託に組入れることができる有価証券が規定されていますが、そこに株式は含まれていないのです。そして株式投資信託は、公社債投資信託以外のものとされています。これは、所得税法でも同様の扱いとなっています。

以上から、

株式投資信託とは約款に株式に投資できる旨が記載されている投資信託であり、
公社債投資信託とは約款に株式には投資しない旨が記載されている投資信託、となります。

投資信託の種類は、制度的な側面からの分類として、他に、形態による分類(契約型と会社型)、購入可能期間の違いによる分類(追加型と単位型)、多数の投資家が購入できるかどうかによる分類(公募・私募)、払戻しができるかどうかによる分類(オープン・エンド型とクローズド・エンド型)の4つがあります。

制度面からの分類以外にも、投資対象による分類があり、投資信託協会の「商品分類に関する指針」にて定められています。

これには、先ほどの追加型と単位型の区分も入っていて、他には、投資対象地域による区分(国内、海外、内外)、投資対象資産による区分(株式、債券、不動産投信、その他資産、資産複合)、独立した区分(MMF、MRF、ETF)、補足(インデックス型、特殊型)があります。

この投資対象による「商品分類」は、投資信託説明書(交付目論見書)の表紙または裏表紙に、一覧できるように掲載されています。ここでは、ETFで国内最大規模の、野村アセットマネジメント「TOPIX連動型上場投資信託」の投資信託説明書(交付目論見書)を例として載せておきますので、確認してみましょう。

(実際の投資信託説明書には、この「商品分類」の横に「属性区分」の表も載っていますが、今回は説明を省略します。)

FP3級試験では、株式投資信託と公社債投資信託の違いについての問題が多く出題されています。
もう一度、株式を一切組入れることができないものが公社債投資信託であること、株式が全く組入れられていなくても株式投資信託の場合があること、を確認しておきましょう。

第1問(12)解答

投資信託約款に株式を組み入れることができる旨の記載がある証券投資信託は、株式をいっさい組み入れていなくても株式投資信託に分類される。

(1) 〇
(2) ✕

次の問題は、投資手法の問題です。

2019年5月26日実施 第2問(42)

投資信託における(  )運用は、企業の成長性が市場平均よりも高いと見込まれる銘柄に投資する運用手法である。

1)グロース
2)パッシブ
3)バリュー

第2問(42)解説

これは、投資信託の運用手法、運用スタイルに関する問題です。
1問目では、制度面での分類、投資対象による分類を見ましたが、この問題では運用スタイルによる分類が問われています。

投資信託には、運用スタイルの分け方がいくつかあります
一つは、運用目標への連動を目標とするか、それを上回ることを目標とするか、による分類で、それぞれパッシブ運用とアクティブ運用と呼ばれます。

パッシブ運用は、投資信託協会ホームページの用語集によると、「投資信託を運用する際、あらかじめ決められた目標であるTOPIXや日経平均株価といった各種指数と同じ運用成果をめざしてシステム的に保守的な運用を行うこと。インデックスファンドがその代表と言える。」とされています。

インデックスファンドは、「あらかじめ定めた指数(インデックス)の動きに連動することを目指す運用スタイル」で運用しているファンドのことを言います。

この場合、インデックスとは、日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)などの株価指標や、NOMURA ボンド・パフォーマンス・インデックスのような債券指標などが含まれます。

一方、アクティブ運用とは、同じく投資信託協会ホームページによると、「運用するに当たって、あらかじめ決められた指数を上回る運用成果をめざす運用スタイルのこと。ファンドマネジャーが積極的・戦略的に投資対象、組入れ比率、売買のタイミング等の投資判断を行い運用する。」とされています。

そして2つめは、アクティブ運用の方法論として、調査の方法による、トップダウン・アプローチとボトムアップ・アプローチという分類があります。
前者のトップダウン・アプローチは、金利や為替、景気動向などのマクロ的な視点から分析を開始し、その見通しに沿って国別配分比率や業種別配分比率などを決め、そこから個別銘柄の選定を行う運用手法です。
他方、ボトムアップ・アプローチは、個別銘柄の調査・分析に基づいて組入れる銘柄を選定する手法です。

またアクティブ運用は、組入れる銘柄の性質によって、グロース運用とバリュー運用に分けられます。これが3つめの分類になります。

グロース運用は、企業の成長性に着目し、その成長性が高いと判断される銘柄を中心に運用する手法です。
またバリュー運用は、企業の業績・配当・資産などと比較して株価が割安(バリュー)と思われる銘柄を中心に投資する運用手法となります。

この運用手法に関する問題では、1つ1つの運用手法について問われることもありますので、それぞれの運用手法の特徴を覚えておきたいところです。

第2問(42)解答

投資信託における(  )運用は、企業の成長性が市場平均よりも高いと見込まれる銘柄に投資する運用手法である。

1)グロース 〇
2)パッシブ ✕
3)バリュー ✕

今回は以上です。次回は、投資信託の費用に関する問題を取り上げます。