こんにちは。FP相談ねっと認定FPの大地恒一郎です。
投資信託の分野に絞ったFP3級過去問解説の6回目になります。
今回は、(その4)でも取り上げた「運用管理費用(信託報酬)」の問題で、まだご紹介できていなかった正誤問題を取り上げます。
2020年1月に実施された試験からの問題です。
2020年1月26日実施 第1問(13)
投資信託の運用管理費用(信託報酬)は、投資信託を購入する際に年間分を前払いで支払う必要がある。
(1) 〇
(2) ✕
第1問(13)解説
この問題は、投資信託の運用管理費用(信託報酬)を支払うタイミングを問う問題となっています。
ここで、投資信託にかかる主な費用に関して、もう一度おさらいをしておきましょう。
この表の中で、FP3級の問題によく出題される費用は、「運用管理費用(信託報酬)」と解約時の「信託財産留保額」に関するものです。この2つについては、しっかりマスターしておきましょう。
「運用管理費用(信託報酬)」は、運用や管理の対価として、日々、信託財産から差し引かれる費用です。投資家(受益者)に帰属する信託財産から差し引かれているということは、つまり、投資家(受益者)が間接的に負担している、ということになります。
また、解約時の「信託財産留保額」は、その他の費用と違って、運用会社、販売会社、信託銀行に支払われる費用ではないので、分かりづらいかもしれません。
では、どこに支払われるのか、というと、投資家(受益者)が投資信託を換金(解約)するときに、それまで投資家(受益者)の資金があった信託財産の口座に支払われる(残してくる)ものなのです。
少し変わった例えかもしれませんが、部屋を借りていた賃借人が賃貸借契約を解約し部屋を退去する際に、退去時清掃代を支払って解約することに似ているような気もします。
信託財産留保額のある投資信託(ファンド)で、投資家(受益者)がファンドを売却し換金しようとする(解約しようとする)際、ファンドではその解約資金を用意するために、組入れている債券や株式などの一部を売却し、現金を用意する必要があります。
債券や株式の中には、様々な理由から、その売却に係るコストが大きくなるものがあり、そういう場合、売却によるコスト分だけ信託財産に負担を与えてしまうことになります。
そこでそのコスト分は換金する投資家(受益者)が負担し、引続き運用を続ける投資家(受益者)の信託財産に残していってもらう(信託財産に留保する)ものが、信託財産留保額というコストです。いわば、投資家(受益者)間の公平を期すためのものと言えるでしょう。
信託財産留保額は、売却や買付の際に、通常の売買取引などの際にかかるコスト以上の高コストが想定される投資対象を組入れる投資信託(ファンド)に付いていることがありますが、全ての投資信託(ファンド)に付いているものではない、という点には注意が必要です。
第1問(13)解答
投資信託の運用管理費用(信託報酬)は、投資信託を購入する際に年間分を前払いで支払う必要がある。(1) 〇
(2) ✕
まとめ
投資信託の費用に関する問題は、上に述べたように、運用管理費用(信託報酬)と信託財産留保額に関する問題が多く出題されているようです。
もう一度、この二つについて、簡単にまとめておきましょう。
運用管理費用(信託報酬)は、運用や管理などの対価として、原則すべての投資信託において、毎日、信託財産から差し引かれるコストであり、投資家(受益者)が間接的に負担しているコストです。
一方、信託財産留保額は、一部の投資信託にあるコストであり、全ての投資信託に付いているわけではありません。また、信託財産留保額は、換金(解約)する投資家が、換金(解約)の際に直接負担するコストであり、投資家(受益者)間の公平を期すため、そのコストはその投資信託の信託財産に留保される(残してくる)ものです。
以上で、FP3級の「金融資産設計」の「投資信託」という分野に絞った過去問解説は終了となります。今回は、FP3級の過去問が公表されている、2017年5月以降の試験問題に絞って、解説させていただきました。
今後は、引続き「金融資産設計」の中から、出題頻度の高い分野の解説をさせていただこうと考えています。
9月13日の試験日まで2か月を切ってきましたが、まだ40日以上あると考えれば、十分チカラを付ける時間は残っています。投資信託の問題は1~3問程度の出題ですが、ここで取りこぼしのないように、しっかり確認していただければと思います。