大地 恒一郎

範囲の狭すぎるFP3級過去問解説(最終回) マーケット環境の理解(その2)&「金融資産運用」分野のまとめ

こんにちは。FP相談ねっと認定FPの大地恒一郎です。

8月も今日で終わり、いよいよFP3級試験まで、約2週間となりました。
この「範囲の狭すぎるFP3級過去問解説」も、今回が最終回となります。
「金融資産運用」の分野の中から、今回は「マーケット環境の理解」の(その2)と、過去の傾向から、「金融資産運用」の分野で押さえておきたい部分について、解説してみたいと思います。

前回は日本銀行に関連する問題を取り上げました。
今回は、マクロ経済(景気・物価指標など)などの問題から2問、取り上げてみます。

まず、2018年1月28日実施の第1問(11)です。

2018年1月28日実施 第1問(11)

A国の市場金利が上昇し、B国の市場金利が低下することは、A国通貨とB国通貨の為替相場においては、一般に、A国通貨安、B国通貨高の要因となる。

(1)〇
(2)✕

2018年1月28日実施 第1問(11)解説

この問題は、「マーケットの変動要因」に関する問題です。

「マーケットの変動要因」においては、「金利の変動要因」、「景気動向が株式・為替に与える影響」、「金融政策とそれが市場に与える影響」、「財政政策とそれが市場に与える影響」などが取り上げられますが、その中でも「金利の変動要因」については、出題しやすい内容が含まれていますので、押さえておきましょう。

「金利の変動要因」は、景気と金利、物価と金利、為替と金利、に大別できます。
それぞれの関係は、よく図などで表されていることが多いので、しっかり確認しておきたいところです。

単純化して言うと、「景気上向き⇒金利上昇」、「景気後退⇒金利下落」という構図ですが、なぜそうなるかは、資金需要の面から説明できるようにしておきましょう。

また、物価と金利の関係で言えば、「物価上昇⇒金利上昇」、「物価下落⇒金利低下」という関係になりますが、購買意欲や資金需要の面から説明できるようにしておきましょう。

さて、この問題は、金利と為替の関係についての問題です。
一般的に、ある国の金利上昇は、その国の通貨高につながります。逆に、その国の金利低下は、その国の通貨安につながります。

問題を見ると、A国の市場金利が上昇、とあります。そうすると市場では、その高い金利を求めて、B国の通貨を売ってA国の通貨を買おうとします。そうすると、この需要と供給の関係から、市場の動きとしては、一般的に「A国通貨、B国通貨」という動きになります。

2018年1月28日実施 第1問(11)解答

A国の市場金利が上昇し、B国の市場金利が低下することは、A国通貨とB国通貨の為替相場においては、一般に、A国通貨安、B国通貨高の要因となる。

(1)〇
(2)

続いては、同じく2018年1月28日実施の第2問(41)です。

2018年1月28日実施 第2問(41)

景気動向指数において、有効求人倍率(除学卒)は、( )に分類される。

  1. 先行系列
  2. 一致系列
  3. 遅行系列

2018年1月28日実施 第2問(41)解説

この問題は、景気・物価指標の一つ、景気動向指数に関連する問題です。

景気動向指数は、「生産、雇用など様々な経済活動での重要かつ景気に敏感に反応する指標の動きを統合することによって、景気の現状把握及び将来予測に資するために作成された指標」(内閣府ホームページより)です。

そして、景気動向指数には、景気動向を量的に把握する指数コンポジット・インデックス(CI)と、景気変動の方向性を把握する指数ディフュージョン・インデックス(DI)の2種類があります。

そして、景気動向指数は、「従来、DIを中心とした公表形態だったが、近年、景気変動の大きさや量感を把握することがより重要になっていること」(内閣府ホームページより)から、2008年4月分以降は、CI中心の公表形態に移行しました、

また景気動向指数(CIとDI)には、それぞれ、景気に対し先行して動く先行指数、ほぼ一致して動く一致指数、遅れて動く遅行指数の3つの指数があります。

景気の現状把握には一致指数を利用し、先行指数は一般的に、一致指数に数か月先行することから、景気の動きを予測する目的で利用されています。また、遅行指数は一般的に、一致指数に数か月から半年程度遅行することから、事後的な確認に用いられています。

そして、このCIとDIは、それぞれ共通の指標を使って算出されていて、先行系列、一致系列、遅行系列の3つの系列に分かれています。先行系列は11、一致系列は10、遅行系列は9、合計30の指標が使われています。
2020年7月に改定され、一致系列に「輸出数量指数」が追加されました。直近の改定ですので、9月の試験では29の指標とされる可能性もあります。)

これらの代表的な指標は、この問題のように試験で出題されやすいので覚えておきましょう。

先行系列の11指標としては、消費者態度指数やマネーストック(M2)、東証株価指数などがあります。これらの指標から算出された指数が先行指数です。

また一致系列の10指標としては、鉱工業生産指数や有効求人倍率などがあり、これらの指標から一致指数が算出されています。

そして遅行系列の9指標としては、家計消費支出や有効求人倍率などがあり、これらを基に遅行指数が算出されています。

景気動向に関連した最近のトピックとして、内閣府が2020年7月に有識者による「景気動向指数研究会」を開催し、2018年10月が「景気の山」であり、その後景気後退局面に入ったことを暫定的に認定した、と発表されたことがあげられます。

2018年1月28日実施 第2問(41)解答

景気動向指数において、有効求人倍率(除学卒)は、( )に分類される。

1.先行系列 ×
2.一致系列 ○
3.遅行系列 ×

「金融資産運用」分野のまとめ

2020年度9月のFP3級試験まで、あと2週間となりました。

いよいよ最終仕上げという段階だと思いますが、最後に、「金融資産運用」の以下の各項目について、独断と偏見で傾向分析をしてみたいと思います。

あくまで、個人的な見解ですので、参考程度にとどめていただけたらと思います。

  1. マーケット環境の理解
  2. 預貯金・金融類似商品等
  3. 投資信託
  4. 債券投資
  5. 株式投資
  6. 外貨建商品
  7. 保険商品
  8. 金融派生商品
  9. ポートフォリオ運用
  10. 金融商品と税金
  11. セーフティネット
  12. 関連法規

「金融資産運用」の問題は、過去3年それぞれ10題づつ出題されています。

そうすると、各項目は多くても2題程度の出題となります。しかし例外もありました。今年の1月と2019年の5月には、「マーケット環境の理解」から3題出題されています。また、2017年の1月にも「投資信託」から3題出題されています。

最近は、この2項目以外で3題出題されている項目はありませんので、この2つの項目は最後の段階でもしっかり復習しておきたいところです。
各項目を見ていきましょう。

「マーケット環境の理解」では、「日本銀行」に関係する問題と、「景気・物価指標」に関する問題は、押さえておきましょう。2020年1月の試験では、CIが出題されていますが、今回は、景気動向指数関連(先行、一致、遅行の代表的な統計指標)以外にも、消費者物価指数、有効求人倍率、国内総生産というような過去に出題された項目も要注意かもしれません。

次に「預貯金・金融類似商品」ですが、1問出るか出ないかです。1月は出題されていないので、出題の可能性はあります。一応、「金利・利回りの計算」を復習しておきましょう。

「投資信託」は、2018年5月に出題がなかったことがありますが、最近は必ず出題されています。押さえておくポイントは、過去の出題から推測すると、「普通分配金と元本払戻金」、「ETF」、「投資信託のコスト(運用管理費用や信託財産留保額)」、「投資信託の運用スタイル」、「投資信託の種類」というところでしょう。

「債券投資」は必ず1題は出題されます。2020年1月は1題の出題でしたので、過去の傾向から考えると、今回は2題出題される可能性もあると思います。
「単利最終利回り」、「単利所有期間利回り」、「信用格付」などは押さえておきましょう。

「株式投資」も必ず出題される項目です。「マーケット環境の理解」、「投資信託」、「債券投資」、そして「株式投資」、この4項目で10問中5問~7問程度は出題されていますので、重要な項目と言えるでしょう。
「株式投資」では、「株式投資に関する評価指標(PER,PBRなど)」、「代表的な株価指標」、「株式取引のルール(価格優先、時間優先の原則など)」をもう一度確認しておきましょう。

「外貨建て商品」は、出題されないこともあります。出題される場合は、「為替レート」に関する問題が多いので、TTS、TTM、TTBは覚えておきましょう。
「保険商品」ですが、FP3級試験では2017年以降出題されていません。保険が「リスク管理」の分野に含まれていることが関係しているのでしょう。FP3級の「金融資産運用」においては、この項目は後回しにして、出題の多い他の項目に時間を充てていいのではないかと思います。

次の「金融派生商品」も出題頻度は多くありません。今年1月に出題されていますので、今回は出題されない可能性もありますが、「ヘッジ取引」の意味、「オプション取引」の概要は、押さえておきましょう。

「ポートフォリオ運用」については、2018年以降、必ず1題出題されています。そして、「相関係数」に関連する問題が圧倒的に多く出題されています。「相関係数」の他に、「アセットアロケーション」と「期待収益率」についても一応確認しておけば安心でしょう。

「金融商品と税金」の項目では、「投資信託」でも出てくる「元本払戻金」の問題が出題されたことがあります。一応押さえておきましょう。その他には、「NISA(少額投資非課税制度)」を確認しておくことをお勧めします。

「セーフティネット」については、「預金保険制度」と「日本投資者保護基金」を確認しておきましょう。出題されるとすると、この2項目からではないかと思います。

最後に「関連法規」の項目です。この項目では、「適合性の原則」がポイントになります。また、「顧客に説明すべき事項(重要事項)」、「金融ADR制度」も過去に出題されたことがありますので、確認しておきしょう。

最後の「金融商品と税金」、「セーフティネット」、「関連法規」の3項目ですが、私が見た限り、2020年1月の試験では出題されていません。それまでは、この3項目から1題か2題出題されていました。断定はできませんが、9月の試験では、この3項目から1題出題される可能性は高いのではないかと考えています。

以上のように見てくると、まだまだ押さえておくところがたくさんあるように見えますが、残り時間が限られていますので、ポイントを絞って、確実に得点できる分野に集中し、1点でも上積みを狙っていただきたいと思います。

決して満点を取る必要はなく、6割の正解で合格となるのですから、「金融資産運用」の分野でも、まずは6問正解を目指しましょう。

受験される方々のご健闘をお祈りしています。