大地 恒一郎

範囲の狭すぎるFP3級過去問解説(番外編) 9月13日試験「金融資産運用」分野の解説

こんにちは。FP相談ねっと認定FPの大地恒一郎です。

9月13日のFP3級試験を受験された皆様、お疲れ様でした。既に「日本FP協会」と「きんざい」から、それぞれ模範解答が発表されていますので、答え合わせは済んでいる方が多いと思います。

次回1月24日の試験では、FP2級へ進まれる方も多いと思いますが、復習も兼ねて、そして新たにFP3級試験の門を叩く方もいらっしゃると思いますので、試験から1週間も過ぎ、少し鮮度は落ちてしまいましたが、私なりに、「投資信託」以外の問題も含め、今回の出題を振り返ってみたいと思います。

今回も「金融資産運用」の問題数は、「第1問」で5問、「第2問」で5問の計10問でした。そして、「金融資産運用」の分野のうち、今回は8分野について出題されていて、「株式投資」と「債券投資」がそれぞれ2問ずつ出題されました。

1月は6分野の出題でしたので、比較的満遍なく出題された印象を持ちました。それまでは7分野の出題が続いていたので、やはり少し範囲を広く取った印象です。

「金融資産運用」の正誤問題5問

では、1問ずつ確認していきましょう。

第1問の正誤問題から見ていきます。

(11)米国の市場金利が上昇し、同時に日本の市場金利が低下することは、米ドルと円の為替相場においては、一般に、米ドル安、円高の要因となる。

これは、「マーケット環境の理解」の「金利と為替相場の関係」についての問題です。
試験直前のコラムでも取り上げた、2018年1月28日実施の(11)の問題の、A国を米国に、B国を日本に置き換えたものと同じになります。

一般的に、ある国の金利上昇は、その国の通貨高につながります。逆に、その国の金利低下は、その国の通貨安につながります。
ですので、正解は✕です。

この分野は、「日本銀行に関する問題」や「景気・物価に関係する問題」が本命かと思っていましたので、ヤマを外してしまいましたが、本コラムで過去問を解いていればピンと来た方もいらっしゃたのではないでしょうか。

次の問題を見てみましょう。

(12)1,000,000円を年利1%(1年複利)で3年間運用した場合の3年後の元利合計額は、税金や手数料等を考慮しない場合、1,030,301円となる。

こちらは、「預貯金・金融類似商品等」の分野になります。
1月には出題されておらず、「金利・利回りの計算」は押さえておきたいところでしたので、直前に確認できていれば正解に辿り着けたのではないでしょうか。

n年後の元利合計額=元金×(1+年利率)n となりますので、
1,000,000円×(1+0.01)³=1,000,000円×1.01×1.01×1.01=1,030,301となり、
正解は〇となります。

続いては、

(13)追加型の国内公募株式投資信託の受益者が受け取る収益分配金のうち、元本払戻金(特別分配金)は非課税である。

これは「投資信託」の分野とも、「金融商品と税金」の分野ともいえる問題です。
ここでは、両分野の問題として説明します。

「投資信託」の分野では大本命の「元本払戻金(特別分配金)」の問題ですし、「金融商品と税金」の分野でも、代表的な問題の1つと言えます。

投資信託の収益期分配金について、振り返っておきましょう。

投資信託の収益分配金には、普通分配金と元本払戻金(特別分配金)があります。
普通分配金とは、各投資家(受益者)の個別元本を上回る部分の分配金です。普通分配金は源泉徴収の対象とされ、一定の税率が課税されます。分配落ち後基準価額が個別元本よりも高い場合は、分配金全額が普通分配金になります。
元本払戻金(特別分配金)とは、個別元本の払戻しに相当する部分の分配金です。分配落ち後基準価額が個別元本を下回っている場合、収益分配金の一部もしくは全部が元本払戻金(特別分配金)と考えられます。
元本払戻金(特別分配金)は自分が支払った元本の一部なので、非課税扱いとなります。

従って、正解は〇です。

(14)東証株価指数(TOPIX)とは、東京証券取引所市場第一部に上場している内国普通株式の全銘柄を対象とする株価指数である。

この問題は「株式投資」の分野です。そして、特に押さえておくべき「代表的な株価指数」の一つについての出題です。「株式投資」の分野からは、第2問の三択問題でも1問出題されています。

「東証株価指数(TOPIX)」の説明は、この問題文の通りですので、正解は〇となります。
今後のために、「日経平均株価」など他の株価指数も確認しておきましょう。

そして「第1問」の最後です。

(15)金融商品取引法に定める適合性の原則により、金融商品取引業者等は、金融商品取引行為について、顧客の知識、経験、財産の状況および金融商品取引契約を締結する目的に照らして、不適当な勧誘を行ってはならないとされている。

この「適合性の原則」は、「関連法規」の分野で最も押さえておくべきポイントでした。
この問題文自体が、まさに「適合性の原則」の説明となっていますので、正解は〇です。

「適合性の原則」の正誤問題について過去問を見てみると、概ね説明文が正しく、正解は〇となるケースが多いようです。次回以降の準備としては、「第2問」の三択問題として出題された場合の過去問をチェックしておきたいところです。

「金融資産運用」の三択問題5問

続いて「第2問」の三択問題に移ります。

(41)個人向け国債の適用利率の下限は、年率(  )である。

1)0.05%
2)0.08%
3)0.10%

この(41)と次の(42)は、「債券投資」の分野ですが、予想通り、2題の出題となりました。

まず(41)は、「個人国債」の問題です。この「個人国債」の問題は、前回の2020年1月、そして昨年5月に続いての出題となりました。

前回と同じように、適用利率の下限を問うものですが、連続出題は想定していませんでしたので、予想は大外れというところでしょうか。

正解は1)0.05%となります。
次の(42)は「単利最終利回り」の問題ですが、こちらは予想通りの出題となりました。

(42)表面利率(クーポンレート)2%、残存期間3年の固定利付債を額面100円当たり102円で購入した場合の最終利回り(年率・単利)は、(  )である。なお、税金や手数料等は考慮しないものとし、答は表示単位の小数点以下第3位を四捨五入している。

1)1.31%
2)1.33%
3)1.35%

これは、「単利最終利回り」を求める典型的な問題ですので、確認しておきましょう。

最終利回り=〔表面利率+(償還価額-購入価額)÷残存年数〕÷購入価額×100 (%)
これに当てはめていくと、(2+(100-102)÷3)÷102×100=1.307189%≒1.31%

ということで、正解は1)1.31%となります。

(43)会社が自己資本をいかに効率よく活用して利益を上げているかを判断する指標として用いられる(  )は、当期純利益を自己資本で除して求められる。

1)PBR
2)ROE
3)PER

これは「株式投資」の分野の「株式投資に関する評価指標(PER,PBRなど)」からの出題です。

「株式投資」も前回に続いて2問出題されました。昨年度は出題1問が2回続きましたが、それ以前の傾向も勘案すると、今後も2問出題の可能性は高いと考えた方が良いでしょう。

この問題は、当期純利益÷自己資本で求められる指標は何かを問うものです。各選択肢が元々、何の頭文字かを確認しながら、その意味も確認していきましょう。

PERはPrice Earnings Ratio、株価収益率を表します。株価が「1株当たりの当期純利益(1株あたり利益)」の何倍になっているかを示す指標で、利益から見た株価の割安性を判断する指標です。

ROEはReturn On Equity、自己資本利益率のことです。会社の自己資本に対する当期純利益の割合で、自己資本をどれだけ有効に活用して利益を上げているかを示す指標です。自己資本に対する「経営の効率性」を判断する指標になります。

最後にPBRはPrice Book-value Ratio、株価純資産倍率となります。株価が直前の本決算期末の「1株当たり純資産」の何倍になっているかを示す指標で、会社の資産と現在の株価とを比較し、株価が割安か割高かを判断するために使われます。

以上から、正解は2)ROEとなります

(44)異なる2資産からなるポートフォリオにおいて、2資産間の相関係数が(  )である場合、ポートフォリオを組成することによる分散投資の効果(リスクの低減効果)は、理論上最大となる。

1)-1
2)0
3)+1

この問題は、「ポートフォリオ運用」の分野からの出題です。

2018年以降、必ず1題出題されていて、「相関係数」に関連する問題が圧倒的に多く出題されていましたが、今回も「相関係数」の問題が出題されました。
野村證券のホームページにある証券用語解説集では、次のように説明されています。

「相関係数は銘柄間やファンド間、指数などとの値動きの連動性を表す指標。1からー1までの範囲で表され、相関係数が1に近い場合には、一方の上昇率(下落率)が大きくなると、他方の上昇率(下落率)も大きくなる傾向が強く、相関係数が0に近い場合には、双方の騰落率の動きには関連性がないと考えられる。相関係数がマイナス1に近い場合は、一方の上昇率(下落率)が大きくなると他方が下落(上昇)するなど逆の動きをする傾向が強いと考えられる。」

このように、分散投資の効果(リスク軽減効果)が理論上最大となるのは、相関係数がマイナス1に近い場合、2資産間の値動きが全く逆になり、相互に打ち消しあうこととなります。つまり、相関係数がー1のときに分散投資の効果が最大となるのです。

従って、正解は1)-1です。

最後に(45)です。

(45)日本投資者保護基金は、会員である金融商品取引業者が破綻し、分別管理の義務に違反したことによって、一般顧客から預託を受けていた有価証券・金銭を返還することができない場合、一定の範囲の取引を対象に一般顧客1人につき(  )を上限に金銭による補償を行う。

1)500万円
2)1,000万円
3)2,000万円

この問題は「セーフティネット」の分野からの出題です。
「日本投資者保護基金」の問題は、2018年9月以来の出題となりました。

日本投資者保護基金のホームページによると、

「当基金は、証券会社が破綻やそれ以外の財政的な困難のために、分別管理の義務に違反したことによって、お客さまの金銭や有価証券を返還することができない場合、お客さまそれぞれに対し上限1,000万円までの補償の支払いにより、投資者保護を実行」するものとされています。
従って、正解は2)1,000万円となります。

前回の1月試験では、「金融商品と税金」、「セーフティネット」、「関連法規」の3分野から出題がありませんでした。今回、この3分野からは、「金融商品と税金」と「関連法規」が正誤問題で、「セーフティネット」が三択問題で出題されました。今回の「金融商品と税金」は、「投資信託」とも重なる部分でしたが、次回は「NISA」などからの出題の可能性もありそうです。また、「セーフティネット」については、「預金保険制度」や「金融ADR制度」なども押さえておきたいところになります。

さいごに

さて、いかがだったでしょうか。この3級の金融資産運用の分野は、FPになったあとも役立つ知識が豊富に含まれています。

そして、基本に立ち返るということは何事においても大切なことです。
皆さんも是非、3級合格後も機会を見つけて3級のテキストを復習してみてください。

特に「金融資産運用」の分野は、金融業界に在籍している方や投資をされている方以外は、普段なじみのない言葉が多く、取っ付きづらい分野のようです。
そういう意味で、3級の問題とその解説本は、基礎知識の再確認にはもってこいの教材となるのではないでしょうか。実は、解説を書かせていただいた私が、一番勉強になったと感じています。

次回の3級試験は、2021年1月24日(日)が予定されています。この試験を目指す方のご健勝とご健闘をお祈りいたします。