大地 恒一郎

NISA・つみたてNISAの利用状況調査(金融庁公表)をみて(一部修正)

こんにちは、FP相談ねっと、投資信託ナビゲーターの大地恒一郎です。

8月8日、金融庁の「NISA特設ウェブサイト」の「統計・データ集」にて、「NISA・ジュニアNISA利用状況調査」の「令和4年3月末時点」と「令和3年12月末時点(確報値)」が公表されました。

過去の発表時期を見ると、「12月末時点(確報値)」は例年6月頃、「3月末時点」は例年7月上旬頃に公表されていました。それに比べると、今年の発表はやや遅く、個人的には少しヤキモキさせられました。

ところで、今回発表されたデータですが、実はとても興味深い内容でした。

というのは、まず、「一般NISA」といわれる「NISA口座数」が、どの年齢層でも大きく減少していたということです。

そして、もうひとつは、「つみたてNISA口座数」の増加数が四半期ごとの集計で過去最高となる中、これまで口座数増加を牽引してきた20歳代の増加にややブレーキがかかり、20歳代の比率が久々に低下していました。一方で、30歳代、40歳代、50歳代の口座数が大きく伸びていて、40歳代と50歳代の比率が上昇していたのです。

まず「NISA口座数」を見てみましょう。
2018年3月以降の口座数の推移は以下の通りです。

「つみたてNISA」が始まった2018年当初、やや伸び悩みがあったものの、2018年6月以降は順調に口座数を増やしており、2021年12月末時点では1,250万口座に迫るほどのでした。

ところが、2022年3月末の口座数は、2021年12月末時点に比べ134万口座以上もの減少となり、2018年の頃の水準に戻ってしまいました。年齢別の内訳をみても、20歳代が2021年12月末に比べ-6.4%となっている以外、その他の年齢層の口座数は軒並み-10%以上減少していました。

これは何を意味しているのでしょうか。

2017年にNISAを始めた方は、2021年に5年間の非課税期間が終了しました。
金融庁の統計データによれば、2017年に実際に投資を行った口座数は、約410万口座でした。134万口座というのは、その約1/3に相当します。前年の2016年は、やはり約400万口座で投資が行われていましたが、昨年はこのような口座数の減少は見られませんでした。
実は口座を開いても、実際に投資を始めていない方が多いのも現実です。2017年は、実に約700万口座で投資が行われませんでした。

2024年に予定されている「NISA」改正については、令和元年(2019年)12月の令和2年度税制改正大綱で示されました。現在の、いわゆる「一般NISA」は、2024年に「新NISA」として新しくなりますが、内容は少し複雑になることから、敬遠する方がいることも想定されますが、それがこの時点で顕在化したとは、考えにくいのではないでしょうか。

全体で130万口座以上の口座数減少は、やはり少しインパクトのある数値であり、どういった理由で減少したのか、解明が望まれるところです。

一方、「つみたてNISA」の2022年3月末の口座数は、2021年12月末に比べ68万口座以上の増加となり、「つみたてNISA」制度が始まって以来、最も口座数の増えた四半期となりました。

ただし、これまで「つみたてNISA」の口座数の伸びを牽引してきた20歳代は、今回は+7万口座の増加にとどまりました。2021年は、毎四半期10万口座以上の増加を示してきていたので、ややスピードダウンといえるかもしれません。

一方で30歳代、40歳代、50歳代の口座数は大きく増えました。

この年代は、年齢層別比率も低下する一方だったのですが、今回は比率も上向きました。

昨年も、1月~3月の口座数は、30歳代、40歳代で大きく増えていましたが、例年この第一四半期という時期は、20歳代以外の年代で口座数が増える傾向にありました。

しかし、今年の増加は顕著で、以下のグラフのように、年齢層別構成比率の動きに変化が現われました。

このグラフでも、20歳代の比率が大きく下がっていることが分かります。

今回、このような動きになった背景に、「NISA口座」から「つみたてNISA口座」に変更した方が多かったのか、それとも別の理由があるのかは、よく分りません。

シンクタンクや調査機関など、詳しいデータを持っているところからの説明が待たれます。

「NISA」や「つみたてNISA」の口座数が、今後もこの傾向が続いていくかどうかは、分りません。
しかし、政府の「新しい資本主義のグランドデザイン」においては、「NISA」制度全体の改革が謳われていますので、今後はその影響も出てくることになるでしょう。引続き、「NISA制度改革の方向性、口座数の推移については、ウオッチしていきたいと思います。