大地 恒一郎

NISA制度の拡充に関する動き(私見)

こんにちは、FP相談ねっと、投資信託ナビゲーターの大地恒一郎です。

8月8日付の「ファンド情報」という投資信託の専門情報誌にNISA制度をめぐる来年度税制改正要望の動きが掲載されていました。金融庁の税制改正要望の取りまとめが大詰めを迎えている、とのことで、その内容がどういうものになるのかという推測も交えた記事でした。

記事では、NISAに関係する業界団体の日本証券業協会と投資信託協会の政策提言が紹介されていました。
そこで早速、各協会のウェブサイトで公表されている提言を確認してみました。

まず、日本証券業協会の提言には、次のような要望が記載されています。

①NISA法(仮称)を制定し、制度を恒久化すること
②制度を簡素化すること
(一般NISAとつみたてNISAの併用を可能にすること、非課税保有期間の無期限化/大幅延長)
③非課税投資枠の拡大
(一般NISAを120万円から240万円に、つみたてNISAを40万円から60万円に、合計300万円利用可能)
その他、職場つみたてNISAの奨励金非課税化などが盛り込まれていました。

一方、投資信託協会の提言には、次のような内容が書かれています。

①全世代における安定的な資産形成に向けた環境整備
(NISA、つみたてNISAの非課税口座開設期間の恒久化、年間投資非課税枠の拡大)
②少額投資非課税制度の利用者等拡大に向けた環境整備
(REIT指数連動ファンドなどを含めたつみたてNISA対象ファンドの拡大、スイッチング可能化、
 職場つみたてNISAの奨励金非課税化)

この2つの提言から見えてくるのは、両協会ともに取り上げている年間の非課税投資枠の拡大です。
現在、つみたてNISAの年間非課税投資枠は40万円ですが、12で割り切れない毎月積立には不便な数字です。両協会で要望している項目ですので、少なくとも48万円、もしくは60万円まで拡大する可能性が高い、と思っています。

一方、一般NISAの非課税投資枠の拡大は、金持ち優遇という批判が出ることに懸念を示す声もあるようです。しかし、本当の富裕層にとっては、120万円も240万円も大差ないのでは、という気がしています。

私は、一般NISAの枠拡大について議論するよりも、中間層以下の国民にとって、NISA制度をより魅力ある非課税制度にする議論をお願いしたいと思います。その方が、国民全体の底上げにつながるのではと思うからです。そこで、つみたてNISAの年間非課税投資枠を、一般NISAと同様に120万円に拡大してはどうか、と思うのです。

また、一般NISAとつみたてNISAの併用ですが、これが認められるとさらに利便性が向上するのも確かです。ただ、まだまだ投資に踏み出せない方々が多い現状では、中間層以下でどの程度の実効性があるか、やや疑問に思います。
その前に、大企業の社員に偏りがちな金融教育や投資教育の機会を、もっと多くの層で受けられるように環境整備を進めることが必要なのではないかと思います。

また非課税口座開設期間を長くすることには賛成です。
つみたてNISAの場合、20代30代の関心が高く、口座数の伸びも目立っています。
しかし、20代30代にとって、20年で非課税期間が終わってしまうのでは、使い勝手が悪いでしょう。
せめてiDeCoのように60歳前後まで運用ができるるような制度設計(30年か40年の非課税期間)が可能になれば、と思います。

加えて、つみたてNISAにおけるスイッチング可能化、これは是非実現してほしいポイントです。
積立投資を始めたあとでも、投資した商品を見直したくなることは、当然起こり得るでしょう。スイッチング不可の現状では使い勝手が悪いと思うのです。

投資信託は、年に1回、収益分配金を支払う仕組みの金融商品です。
現在、つみたてNISAでは、分配金の再投資も年間の非課税投資枠を消化してしまいます。
私は分配金については、非課税投資枠から除外すべきであると思うのです。現在も、数ファンドですが、きちんと分配を行っているつみたてNISA対象ファンドがあります。
ETFやREITは、原則年一回分配しなければなりません。
年間非課税投資枠が拡大し12で割り切れる金額になった場合、分配金再投資の分が年間の非課税投資枠からはみ出てしまうことは、想像できます。
これは両協会の提言にはありませんが、個人的には是非実現してほしいポイントです。

先日、ある政党の税制に関する要職に就いておられる方とお話をする機会がありました。
彼は、中小企業で働く人々をはじめ、これから資産形成を行う層を支援していきたいと話していました。
今年の金融庁の税制改正要望の目玉の一つは、間違いなくNISA制度の拡充に関するものでしょう。
資産形成層が有効活用できるNISA制度改正の動きには、引き続き注目していきたいと思います。